IT用語集

アプライアンスとは? IT用語としての意味や種類など

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企業のシステムやネットワークを設計・構築する際、特定の用途に特化した「アプライアンス」は、短期間で要件を満たすための強力な選択肢になります。一方で、「アプライアンスとは何を指すのか」「どの種類があり、どこまでできて、何ができないのか」を曖昧なまま導入すると、運用や拡張の局面でつまずきやすくなります。

この記事では、アプライアンスの定義を整理したうえで、代表的な種類、メリット・デメリット、選定時の考え方を解説します。

アプライアンスとは

アプライアンス(appliance)は本来「器具・装置」を意味する単語で、IT分野では特定の用途や機能に特化した専用の機器(または専用構成)を指します。多くの場合、必要なソフトウェアや設定画面、運用機能があらかじめ用意されており、目的に沿って初期設定を行えば、比較的短期間で利用を開始できます。

アプライアンスは、ネットワーク機器やサーバー機器として提供されることが多く、用途ごとに機能が絞り込まれています。そのため、ゼロからサーバーOSやミドルウェアを組み上げる方式に比べて、構築の手間や設計のブレを抑えやすい点が特徴です。

なお近年は「専用ハードウェア」だけでなく、仮想アプライアンス(VM上で動く製品)や、クラウド上で提供されるクラウド型アプライアンス相当の形態も一般的になっています。形は違っても、「用途に最適化された構成を、短期間で導入・運用できる」という考え方は共通です。

アプライアンスの種類

アプライアンスのうち、サーバー機能を提供する機器は「アプライアンスサーバー」と呼ばれます。例えば、Webサイトの構築などに利用するWebサーバーアプライアンスや、メール処理に特化したメールサーバーアプライアンスなどが挙げられます。

ここでは特に導入機会が多い、セキュリティアプライアンスとネットワークアプライアンスを中心に整理します。

セキュリティアプライアンス

セキュリティアプライアンスは、セキュリティ機能に特化したアプライアンスです。代表的には次のような機能を備えます。

  • ファイアウォール
  • VPN(Virtual Private Network)
  • IDS/IPS(Intrusion Detection System / Intrusion Prevention System)
  • アンチスパム
  • アンチウイルス
  • DDoS対策

ネットワークの通信経路上に設置し、通過する通信を検査して不正な通信を遮断することで、不正アクセスや情報漏えい、サイバー攻撃に対する対策として利用されます。

機能ごとに専用のアプライアンスが存在する一方で、複数機能をまとめて提供するUTM(Unified Threat Management)も、セキュリティアプライアンスの代表的な形態です。製品やベンダーによっては、UTMという名称を用いず「次世代ファイアウォール(NGFW)」として提供されることもありますが、いずれも「必要な防御機能をまとめて運用しやすくする」という目的は共通しています。

ネットワークアプライアンス

ネットワークアプライアンスは、ネットワークの機能に特化したアプライアンスです。厳密には、ネットワークに接続して利用するアプライアンス全般を指すため、Webサーバーやメールサーバー、ファイアウォールなども含められますが、ここでは「通信を安定・高速化し、運用を最適化する機能」に寄せて説明します。

業務でのネットワーク利用が前提となるほど、安定性と使い勝手を両立したネットワーク構築が欠かせません。ネットワークアプライアンスでは、例えば次のような機能を提供します。

  • SSL/TLS関連(終端・中継など)
  • 負荷分散(ロードバランシング)
  • キャッシュ
  • 帯域幅管理
  • WANアクセラレーション

ネットワーク機器の一つとしてネットワークアプライアンスを導入し、拠点間通信や社内サービスの応答性を改善したり、運用を効率化したりする例も多く見られます。

アプライアンスのメリット・デメリット

アプライアンスは多くのメリットをもたらしますが、向き不向きもあります。導入後に「想定と違った」を避けるために、代表的なメリットとデメリットを整理します。

メリット

アプライアンスを導入するメリットとしては、次のような点が挙げられます。

  • 運用管理の負担を軽減しやすい
  • セキュリティを高めやすい
  • 導入までの時間とコストを抑えやすい

アプライアンスは用途が明確で、不要な機能が最初から省かれていることが多いため、要件に沿った初期設定を行えば短期間で導入できます。また運用や管理の工程まで考慮して設計されており、Web画面で状態確認やレポート出力ができるなど、運用を支える機能が最初から用意されているケースも珍しくありません。

さらに、用途に必要な構成に絞られることで、一から汎用OS上にソフトウェアを組み合わせる場合に比べ、不要なソフトウェアを抱え込みにくくなります。その結果として、管理対象が増え過ぎることを抑え、セキュリティ運用の整理がしやすくなる場合があります。

コスト面でも、アプライアンス自体の費用は発生しますが、設計・構築・検証の工数を抑えられることで、トータルでは導入や運用の負担を最適化できる可能性があります。

デメリット

アプライアンスの代表的なデメリットは、拡張性や自由度が限られやすい点です。特定用途に最適化されている反面、それ以外の用途へ転用したり、任意のソフトウェアを追加したりすることは基本的に想定されていません。

例えばLinuxサーバーなどを一から構築する場合、後から機能を追加したり構成を変更したりできます。しかし、アプライアンスは中身を直接変更することが前提ではないため、要件が変化した際に「製品の対応範囲外」になる可能性があります。

この点は欠点である一方で、「やるべきことが明確で、余計な変更を入れにくい」という運用品質の担保にもつながります。導入前に、用途・将来計画・運用体制を踏まえて選定することが重要です。

この記事のまとめ

アプライアンス機器を導入するか、汎用ハードウェアとソフトウェアを組み合わせて構築するかは、メリットとデメリットを理解したうえで判断することが重要です。

特定用途に特化したアプライアンスは、短期間で導入でき、運用管理の負担も抑えやすいという強みがあります。一方で、種類は多岐にわたり、できること・できないことの境界も製品ごとに異なるため、自社の要件を整理したうえで選定する必要があります。

導入が容易で運用しやすい反面、自由度や拡張性は高くないケースがあります。導入前に、用途と将来計画を明確にし、最適な方式を検討しましょう。

FAQ

アプライアンスとは何ですか

アプライアンスとは、IT分野では特定の用途や機能に特化した専用の機器(または専用構成)を指します。必要なソフトウェアや運用機能が用意されており、初期設定を行えば比較的短期間で利用を開始できます。

なぜアプライアンスが企業で利用されるのですか

用途が明確で導入までの手順が整理されているため、設計や構築の負担を抑えやすいからです。運用画面やレポート機能などが用意されていることも多く、運用管理の効率化にもつながります。

アプライアンスにはどのような種類がありますか

用途に応じてさまざまな種類があり、Webサーバーやメールサーバーなどのアプライアンスサーバーのほか、セキュリティ機能に特化したセキュリティアプライアンス、通信を最適化するネットワークアプライアンスなどが代表例です。

セキュリティアプライアンスはどのような役割を担いますか

通信経路上で通信を検査し、不正な通信を遮断することで、不正アクセスや情報漏えい、サイバー攻撃への対策として利用されます。ファイアウォールやVPN、IDS/IPSなどの機能を提供します。

UTMとは何ですか

UTM(Unified Threat Management)は、複数のセキュリティ機能をまとめて提供する形態のセキュリティアプライアンスです。製品によっては次世代ファイアウォール(NGFW)として提供されることもあります。

ネットワークアプライアンスは何を改善できますか

負荷分散やキャッシュ、帯域幅管理、WANアクセラレーションなどの機能により、通信の安定性や応答性の改善、運用の最適化に役立ちます。用途に応じて、ネットワーク全体の強化を目的に導入されます。

アプライアンスのメリットは何ですか

運用管理の負担を軽減しやすいこと、セキュリティを高めやすいこと、導入までの時間とコストを抑えやすいことが挙げられます。用途に必要な構成がまとまっており、短期間で利用開始できる点が強みです。

アプライアンスのデメリットは何ですか

特定用途に最適化されている反面、自由度や拡張性が限られやすい点です。後から任意の機能を追加したり構成を大きく変更したりすることは想定されないため、要件変更時に対応範囲外になる可能性があります。

アプライアンスと一から構築する方式の判断ポイントは何ですか

用途が明確で短期間導入と運用効率を重視するならアプライアンスが有力です。一方で、将来の変更や拡張が頻繁に起こり得る場合は、自由度を確保できる構築方式も含めて比較することが重要です。

仮想アプライアンスやクラウド型はアプライアンスに含まれますか

専用ハードウェアだけでなく、VM上で動作する仮想アプライアンスや、クラウド上で提供される形態も一般的です。形は違っても、用途に最適化された構成を短期間で導入・運用できるという考え方は共通しています。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム