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振る舞い検知とは? 10分でわかりやすく解説

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企業のシステムを守るために、未知の脅威にも対応できるセキュリティ対策が求められています。そこで注目されているのが、ユーザやプログラムの行動パターンから異常を見抜く「振る舞い検知」です。本記事では、振る舞い検知の仕組みや特徴、導入によるメリット、適用領域、運用上の課題と対策について、わかりやすく解説します。振る舞い検知を活用することで、未知の脅威への対応力を高め、セキュリティ運用を効率化できるでしょう。自社のシステムをより強固に守るために、ぜひ参考にしてください。

振る舞い検知とは?

振る舞い検知とは、システムやネットワーク上で発生する様々な事象を分析し、通常とは異なる不審な動きを見つけ出す技術です。従来のシグネチャベースの検知方法とは異なり、  行動パターンに着目することで、未知の脅威にも対応できる のが特徴です。

振る舞い検知の定義

振る舞い検知は、システム上の事象を分析し、通常の動作から逸脱した不審な動きを検出する技術と定義できます。具体的には、以下のような特徴があります。

  • ユーザやプログラムの行動パターンを学習し、異常な動きを検知
  • 未知の脅威や、シグネチャでは検知できない攻撃にも対応可能
  • 機械学習やAIを活用し、高度な分析を実現

振る舞い検知の特徴

振る舞い検知には、以下のような特徴があります。

特徴説明
パターンベース事前に定義されたルールではなく、  システムの通常の動作パターンを学習し、それとの差分から異常を検知 
適応性システムの利用状況に合わせて、動的に検知モデルを更新できる
包括性既知・未知問わず、様々な脅威に対応可能

振る舞い検知の仕組み

振る舞い検知は、以下のようなプロセスで動作します。

  1. システムやネットワークのログデータを収集
  2. 収集したデータを分析し、通常の行動パターンを学習
  3. リアルタイムで発生する事象を監視し、学習済みパターンと比較
  4. 通常とは異なる動きを検知した場合、アラートを発報

この一連の流れを、  機械学習やAIを活用して自動化することで、高度かつ効率的な異常検知を実現 しています。

従来の検知方法との違い

従来のシグネチャベースの検知方法は、既知の脅威に対するパターンマッチングが中心でした。一方、振る舞い検知は以下のような違いがあります。

  • 未知の脅威にも対応可能
  • 誤検知が少ない
  • シグネチャの更新が不要
  • システムに合わせたチューニングが可能

このように、  振る舞い検知は従来手法の欠点を克服し、より高度で柔軟なセキュリティ対策を実現 する技術といえるでしょう。

振る舞い検知の導入メリット

振る舞い検知を導入することで、企業のセキュリティ対策を大幅に強化できます。ここでは、振る舞い検知がもたらす主要なメリットについて解説します。

未知の脅威への対応力向上

従来のシグネチャベースの検知方法では、既知の攻撃パターンしか検出できませんでした。しかし、振る舞い検知は  通常とは異なるシステムの動きを検知するため、未知の脅威にも対応可能です。 新たなタイプのマルウェアや、ゼロデイ脆弱性を突く攻撃なども見逃しません。

インシデントレスポンスの迅速化

振る舞い検知は、不審な動きを検知した時点で即座にアラートを発報します。これにより、  セキュリティ担当者は素早く脅威を把握し、対応に着手できます。 被害が拡大する前に、適切な対処を講じられるのです。早期検知・早期対応が可能になることで、インシデントによる影響を最小限に抑えられます。

セキュリティ運用の効率化

振る舞い検知は、機械学習やAIの力を活用して異常を自動検知します。  膨大なログデータを人力で分析する必要がなくなるため、セキュリティ担当者の負担が大幅に軽減されます。 限られたリソースを、より戦略的なタスクに振り向けられるようになります。また、誤検知の少ない振る舞い検知を活用すれば、アラートの中から本当の脅威を見つけ出す作業も効率化できます。

コンプライアンス対策の強化

昨今、個人情報保護法やGDPRをはじめとする各種規制が強化され、企業には高度なセキュリティ対策が求められています。振る舞い検知は、  システム上の異常な動きを幅広くカバーすることで、法規制へのコンプライアンスを強力にサポート します。監査への対応も容易になり、企業の信頼性向上にもつながるでしょう。

以上のように、振る舞い検知の導入は、セキュリティ強化とともに、運用効率やコンプライアンス対策の面でも大きなメリットをもたらします。高度化するサイバー脅威に立ち向かうには、従来の手法に加え、振る舞い検知のような新しいアプローチを取り入れていくことが肝要です。自社のセキュリティ体制に振る舞い検知を組み込み、多層防御の実現を目指してはいかがでしょうか。

振る舞い検知の適用領域

振る舞い検知は、様々なセキュリティ分野で活用されています。ここでは、主要な適用領域について解説します。

エンドポイントセキュリティ

エンドポイントセキュリティとは、PCやスマートフォンなどのエンドポイントデバイスを保護する対策です。振る舞い検知を適用することで、  デバイス上の不審なプロセスや通信を検知し、マルウェア感染や不正アクセスを防げます。 特に、未知の脅威に対する防御力が高まるため、ゼロデイ攻撃などにも効果を発揮します。

ネットワークセキュリティ

ネットワークセキュリティは、社内ネットワークを外部からの脅威から守るための対策です。振る舞い検知を導入すれば、  通常とは異なるネットワークトラフィックを検知し、侵入attempts(侵入試行)や情報漏えいを未然に防げます。 例えば、大量のデータ送信やコマンド実行など、不審な通信パターンをリアルタイムで特定できるようになります。

クラウドセキュリティ

クラウドサービスの普及に伴い、クラウド上のデータやアプリケーションを守るセキュリティ対策の重要性が増しています。振る舞い検知を活用すれば、  クラウド基盤上の異常を検知し、アカウントの不正利用やデータ改ざんなどを防げます。 クラウド特有の脅威にも柔軟に対応できるため、安全にクラウドを活用できるようになります。

IoTセキュリティ

IoT機器の急速な普及に伴い、IoTデバイスを狙った攻撃も増加しています。振る舞い検知を適用することで、  IoTデバイスの予期せぬ動作を検知し、ボットネット化や不正操作を防げます。  機器ごとの正常な動作を学習し、それとは異なる挙動を見抜くことで、IoT特有のリスクに立ち向かえるのです。

このように、振る舞い検知はエンドポイントからクラウド、IoTに至るまで、幅広い領域のセキュリティ課題を解決に導きます。各領域に共通するのは、従来の対策では防ぎきれない未知の脅威への対抗手段として、振る舞い検知が大きな効果を発揮する点です。自社のセキュリティ体制を見直す際には、振る舞い検知の適用を検討してみてはいかがでしょうか。ゼロトラストセキュリティを実現する有力なアプローチとして、大いに役立つはずです。

振る舞い検知導入の課題と対策

振る舞い検知は高度なセキュリティ対策を実現する有望な技術ですが、導入にあたってはいくつかの課題をクリアする必要があります。ここでは、振る舞い検知を効果的に活用するための対策について解説します。

誤検知への対処

振る舞い検知は、通常とは異なるシステムの動きを検知するため、状況によっては誤検知が発生する可能性があります。例えば、システムの仕様変更やユーザの行動変化などが誤検知の原因となることがあります。  誤検知が多発すると、セキュリティ担当者の作業効率が低下するだけでなく、重要なアラートを見落とすリスクもあります。 

この課題に対処するには、以下のような施策が有効です。

  • 検知ルールの継続的なチューニング
  • システム変更時の事前テストとルール調整
  • 誤検知の傾向分析と対策の実施
  • 機械学習モデルの定期的な再学習

運用負荷の軽減

振る舞い検知は、大量のログデータを常時分析する必要があるため、運用負荷が高くなる傾向があります。  特に、大規模なシステムやネットワークに適用する場合、処理リソースやストレージの確保が課題となります。 また、アラートの分析や対応にも一定の工数がかかるため、セキュリティ担当者の業務負荷増加にもつながります。

運用負荷を軽減するためには、以下のような対策が考えられます。

  • クラウドや高性能ハードウェアの活用による処理の効率化
  • アラート調査の自動化・省力化
  • セキュリティオーケストレーションとの連携による対応の自動化
  • セキュリティ監視業務のアウトソーシング

ログ管理の最適化

振る舞い検知では、システムやネットワークのログを幅広く収集・分析する必要があります。しかし、  ログの取得設定が不適切だと、十分なデータが得られずに検知精度が低下するおそれがあります。 逆に、必要以上に詳細なログを取得すると、ストレージコストの増大や分析処理の遅延につながります。

最適なログ管理を実現するためには、以下のようなポイントに留意しましょう。

  • 監視対象システムに応じた適切なログ取得設定
  • ログの保存期間とローテーション設定の最適化
  • ログ圧縮や重複排除によるデータ量の削減
  • ログ分析ツールとの連携による効率的な分析

セキュリティ担当者のスキル向上

振る舞い検知を効果的に運用するには、セキュリティ担当者の十分なスキルが不可欠です。機械学習やデータ分析など、振る舞い検知に関する専門知識を身につける必要があります。  また、検知された脅威を適切に判断し、迅速に対処するためのノウハウも求められます。 

セキュリティ担当者のスキル向上策としては、以下のような取り組みが有効でしょう。

  • 振る舞い検知に特化したトレーニングの実施
  • 他社事例や脅威情報の積極的な収集と分析
  • セキュリティコミュニティへの参加による情報交換
  • 机上演習や実機演習による実践的な対応力の強化

振る舞い検知の導入は一朝一夕にはいきませんが、適切な対策を講じることで、より安全で効率的なセキュリティ運用を実現できるはずです。課題を一つひとつクリアしながら、振る舞い検知の真価を引き出していきましょう。

まとめ

振る舞い検知は、ユーザやシステムの行動パターンから異常を見抜く先進のセキュリティ技術です。未知の脅威にも対応でき、機械学習やAIを活用した高度な分析を実現します。導入により、インシデント対応の迅速化やセキュリティ運用の効率化、コンプライアンス対策の強化などのメリットが期待できます。エンドポイントからクラウド、IoTまで幅広い領域に適用可能です。一方で、誤検知への対処や運用負荷の軽減、ログ管理の最適化、人材育成など、克服すべき課題もあります。課題にしっかり対応しながら、振る舞い検知を上手に活用していくことが肝要でしょう。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム