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BPOとは? わかりやすく10分で解説

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目次

はじめに

BPOとは?

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の基本的な概念について解説します。BPOは、その名前が示す通り、企業活動の中の特定の業務プロセスを専門的な受託者に外部委託することを指します。BPOの主な目的は、コスト削減と業務の効率化です。

BPOは一般的に、企画・設計から実施までの一連のプロセスを含むもので、外部委託先は一定の自由度を享受できることが特徴的です。この自由度の高さこそが、高度な専門知識を持つプロフェッショナルによる優れた業績という結果を生み出す一方で、委託先の選択と管理もまた重要な課題となります。

ここで重要なのは、BPOを活用することで、企業はコア業務に集中し、固定費を変動費化することが可能となり、結果として大幅なコスト削減が実現可能となるという点です。これがBPOの基本的な定義と概念です。

BPOが注目されている背景

BPOが注目を浴びるようになった背景には、グローバル化とIT技術の進化が挙げられます。グローバル化が進む現代社会では、物資や人の移動が容易になり、世界中のどこでも業務を遂行することが可能となりました。

その一方で、IT技術の進化により、既存の業務プロセスがデジタル化され、低コストで高品質な業務を提供することが可能となりました。これらの要素が組み合わさることで、一部の業務を外部に委託することが実現可能となり、BPOが注目を集めるようになった訳です。

加えて、企業が競争力を維持するためには、自社のコアコンピタンスに集中し、それ以外の業務は専門家に任せることが求められます。そのため、このようなビジネスニーズを満たすための一つの手段として、BPOが広く活用されていると言えます。

BPOの種類と特徴

BPOにはさまざまな種類が存在し、それぞれに特徴と利点があります。まずはBPOの一般的な種類について紹介します。これには、「オンショアBPO」、「ニアショアBPO」、「オフショアBPO」の3つがあります。

「オンショアBPO」は、企業が自国内の専門業者に業務を委託する形です。「ニアショアBPO」は、地理的に近い国または日本の場合は国内の別の地方都市に業務を委託する形です。「オフショアBPO」は、コストが安い海外の業者に業務を委託する形です。それぞれに特性と利点、そして課題があります。

特に、「オフショアBPO」は、労働力コストの低い国々、例えば中国・フィリピン・インドなどに業務を委託することで大幅なコスト削減が見込める利点があります。しかしこれには、言語の問題や時間差、文化の違いなど、克服しなければならない課題も存在します。

BPOのメリットとデメリット

BPOには多くのメリットがありますが、その一方でデメリットも存在します。まず、メリットとしては、コスト削減、固定費の変動費化、高品質な業務の実現があります。また、自社のコア業務に専念できるという大きな利点もあります。

その一方、デメリットとしては、業務の選定や受託業者の選定、以降の管理に手間と時間がかかるという点が挙げられます。また、委託した業務が企業の重要な情報を含む場合、情報漏えいのリスクも考慮しなければなりません。

総じて、BPOは事業の成長を支えるための一つの戦略として有効ですが、その導入と運用には慎重な判断が求められます。

BPOの導入プロセス

BPOの主な流れとして、導入前の準備、提供業者の選定、契約と業務移行、そしてパフォーマンス管理と改善があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

導入前の準備

まず最初に行わなければならないのは、自社の業務を深く理解することです。外部委託を検討する段階で、不明確な業務フローや仕組みはクリアにしておく必要があります。また、委託する業務を選定します。一般的にはコアでない業務、例えば人事労務や経理などのバックオフィス業務が外部委託されやすいです。

次に、業務を外部委託するための組織的、金銭的なコストを計算します。直接的なコストだけでなく、教育訓練や業務移行に伴う間接的なコストも考える必要があります。

最後に、リスク評価を行います。情報漏洩や業務停止等のリスクをどう管理するか、評価基準を明確にすることは重要です。

提供業者の選定

BPO提供業者の選定基準は大別すると三つになります。一つ目は、経済性です。提供業者のサービスがどの程度コスト効果的なのかを評価します。

二つ目は、品質です。提供業者が約束したサービスを一貫性を持って提供できるか、また提供業者のスキルや専門知識が十分であるかを見ます。

最後に、信頼性です。提供業者が法令を遵守しているか、また提供業者とのコミュニケーションが難なくできるかを確認します。

サービス契約と業務移行

提供業者選定後は、業者との契約と業務移行がスタートします。

契約の際は、サービスレベル、コミュニケーション手段、費用や契約期間など、詳細な条件を明記したBPO契約書を作成します。

業務移行については、業務知識を提供業者に正しく伝達し、実際の業務フローを業者が理解できるようにするための教育訓練が行われます。

パフォーマンス管理と改善

業務が提供業者に移行した後も、パフォーマンス管理と改善は重要な要素となります。

契約書で定義したサービスレベルや品質基準を持続的に監視し、提供業者の業務遂行能力を評価します。改善点が見つかった場合はフィードバックを提供し、提供業者と共に問題解決に取り組みます。これら一連の流れをうまくマネジメントすることで、BPOを成功させることができます。

外部委託すべき業務と自社で行うべき業務

ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)は非常に有効な手段ですが、BPOを活用するにあたり重要なのは、どの業務を自社内で行い、どの業務を外部に委託するかを正しく判断することです。そこでこの章では、外部委託すべき業務と自社で行うべき業務の選定方法を解説します。

BPOの対象となる業務

BPOの対象となる業務は一般的に非コア業務と呼ばれます。これは企業の主要な競争力を発揮する業務ではなく、しかし無くてはならないサポート的存在の業務を指します。これには、人事や会計、ITサポートなどが該当します。

これらの業務は一般的には、特別な専門知識を必要としないか、または高度なスキルを必要とするが頻繁には発生しないため、コスト面や人的資源の観点から外部の専門業者に委託することが有効と考えられるのです。

このため、BPOの対象業務は一般的に、企業の主要な経営資源を集中すべきではない、しかし欠かすことのできないサポート業務と言えます。

コア業務と非コア業務の識別

次に重要なのが、自社のコア業務と非コア業務の区別です。コア業務とは、企業が競争優位性を発揮し、価値を創出するための主要な活動や能力のことを指します。

一方、非コア業務とは、主要な業績を直接向上させるわけではないですが、企業活動をサポートする役割を果たす業務を指します。例えば、人事部門や経理部門がその典型的な例です。

効率的にBPOを活用するためには、これらコア業務と非コア業務を明確に識別し、非コア業務を適切にアウトソーシングすることが求められます。

オフショアBPOとオンショアBPO

BPOを実行するにあたって、業務をオンショア(国内)またはオフショア(海外)のどちらへ委託するかも重要な判断基準となります。オフショアBPOは、費用面での利点が大きい一方で、言語や文化の違いからくるコミュニケーションの問題などが生じる可能性があります。

一方、オンショアBPOは言語や文化の問題を大幅に軽減することができますが、一般的にはオフショアよりもコストが高い傾向があります。したがって、これらの要素を全て考慮したうえで、適切なBPOパートナーを見つけることが重要となります。

全てのBPOが同じ効果をもたらすわけではないため、企業が最も必要とするサービスを提供できるパートナーを選ぶことが重要となります。

業務委託の成果を最大化するためのポイント

最後に、BPOを成功させるためのポイントをいくつか紹介します。第一に、明確な契約、具体的な期待値の設定、そして定期的なパフォーマンスの確認が必要です。契約は業務の範囲を明確に定義し、期待値はパートナーが追い求める業績目標を明示的に示します。

第二に、BPOパートナーとの良好なコミュニケーションを維持することも重要です。常に透明性を保ち、問題が発生した場合は速やかに解決するための仕組みを設けることも必要です。

最後に、BPOパートナーに過度な依存をしないことも重要です。ある程度の制御を保持することで、必要な時に業務を内部化する選択肢を持てることが求められます。

BPOのリスク管理

BPOには企業が業務を外部委託することで発生する様々なリスクが存在します。それらのリスクを正しく認識し、適切な管理を行うことが重要です。

BPOにおける主なリスク

最も一般的なBPOのリスクは、サービス品質の低下や情報漏洩、契約上の問題などです。

サービス品質の低下は、BPO業者が十分な能力を持たず業務を遂行できない場合や、コミュニケーション不足で要件が誤解される場合などに発生します。これを防ぐためには、業者選定時の厳格な審査や定期的な業績確認、明確な業務指示が必要です。

情報漏洩は、企業の機密情報がBPO業者に委託されることでリスクが増えます。これを避けるためには、情報保護に関する契約条項の設定や、業者のセキュリティ体制の確認が必要となります。

オフショアBPOに特有のリスク

オフショアBPOでは、言語や文化の違いからくるミスコミュニケーション、タイムゾーンの違いによる作業時間管理の問題、地政学的リスクなどの特有のリスクがあります。

これらのリスクを管理するためには、事前に地域の習慣や文化を理解する努力、適切なコミュニケーションツールの利用、リスク軽減を目指したマネジメント体制の確立などが必要です。

地政学的リスクについては、政治状況や法規制の変動、自然災害などの影響を受けやすいため、複数地域でのBPO展開やバックアップ体制の構築も有効な手段となります。

リスク軽減のための契約条項の設定

BPOのリスクを軽減するためには、契約時にリスク管理に関連する条項を明確に設定することが重要となります。

具体的には、契約違反時の罰則や紛争解決手段の記載、具体的な業務遂行基準や品質基準の策定、随時の改善活動やレビュー体制の明示などが必要となります。

このことにより、BPO業者に対する品質確保やリスク管理への期待値を明示し、企業の利益を守ることが可能となります。

クライアント企業のリスク管理体制

また、外部業者のみならず、クライアント企業自身もリスク管理体制を構築する必要があります。具体的には、情報管理体制の強化、効果的なコミュニケーション、業者との良好な関係維持が重要です。

これらの体制を構築することにより、一定のリスクを自社で対処し、業者との協働を通じてより良い利益を得られることが期待されます。

それぞれのリスク対策は一定のコストや手間を要求しますが、その結果として長期的なパートナーシップの確立や業界での競争力強化につながると考えられます。

BPOを活用することで得られる競争優位性

BPOを活用することで、企業はその業務運営のさまざまな面で競争優位性を享受できます。これらはコストリーダーシップ、業務の品質改善、企業リソースの最適化、そしてグローバル市場での競争力強化といった要素を含みます。

これらの利点が実現可能となるのは、企業が自身のコア業務に集中し、その他の仕事を専門家に委託することで、全体的なビジネスのパフォーマンスが向上するからです。

以下で詳しく解説します。

コストリーダーシップの獲得

BPOを実行する最大の利点の一つは、企業が迅速にコストリーダーシップを獲得できることです。 これは企業が自社の非コア業務を専門的な外部サービスプロバイダーに委託することにより、固定費を大幅に削減することができるからです。

さらに、BPOはスタッフトレーニング、設備投資、リクルートメントなどの人事コストを削減するのにも役立ちます。これにより、企業はより大きな対価競争力を獲得できます。BPOは企業が財政運営の効率を向上させ、コストリーダーシップを達成するのに役立つのです。

業務の品質改善とエラーの削減

外部のプロが業務を行うというBPOの概念は、またもう一つの重要な競争優位性をもたらします。

これは特定のプロセスについて豊富な知識と経験を持つ専門的なサービスプロバイダーが、その業務を効率的で対策のとれた方法で行うからです。これにより、企業は利益マージンを増加させ、顧客満足度を向上させることができます。その結果、BPOは顧客サービス、サポート、製品の品質管理など、企業のレピュテーションとブランドイメージを高める重要な要素を強化するのに役立つのです。

企業リソースの最適化

また、BPOは企業リソースの最適化にも寄与します。これは、BPOが企業にとってより効率的なリソース配分を可能にするためです。

企業は業務プロセスの外部委託を通じて、その従業員をより重要な業務に集中させることができます。これにより、内部スタッフは彼らの専門性を十分に発揮できる業務に参加することができます。BPOは企業がコア業務のパフォーマンスを向上させ、全社的な生産性と効率性を高めるのに役立つのです。

グローバル市場での競争力強化

BPOはまた、特にオフショアBPOの場合に、企業がグローバル市場での競争力を強化するのに役立ちます。

これは外部サービスプロバイダーが世界各地に存在し、異なる業務時間帯でサービスを提供できるためです。このほか、言語や文化の違いをカバーする能力も持っています。BPOを活用することで、企業は地理的な制約を克服し、時差を利用したビジネスモデルを実現することができ、これにより世界的な競争力を大幅に強化することができます。

BPO導入の今後

AIとロボットによるBPOの進化

ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)は、これまで大量の人手を必要としていた業務プロセスを高度に自動化し、効率化する方向へと変化してきています。特に、人工知能(AI)とロボットの技術が進化することで、多くの企業がこれらの技術を取り入れ、BPOをより効率的に行うための解決策を模索しています。これにより、企業は更なるコスト削減と生産性の向上を達成できることでしょう。

このAIとロボットによる高度化は、特に単調な重労働や、一定のルールや判断基準に基づいた作業をAIが代行することで実現されます。例えば、データ入力や帳票処理などの定型業務、顧客サポートやコールセンターでの応対など、人間の労働力を多く必要とする業務をAIが担当することで、人間はより付加価値の高い仕事に専念することが可能になります。

その結果、BPOは企業の業界における競争力を向上させるための一つの戦略となる可能性があります。そのため、各企業は新たなBPOの戦略を練るために、どのようにして自社のビジネスプロセスをAIやロボットに適応させるか、という問題について真剣に考える必要があります。

クラウド化とスマートコントラクト

BPOの未来を考えるうえで避けて通れないトピックがクラウド化とスマートコントラクトです。データのクラウド化は、一つのデータセンターに集約するのではなく、ネットワーク上に仮想的に存在するデータセンターに分散させることで、データの安全性と利便性を向上させます。その結果、企業は自らのデータセンターをもつ必要が無くなり、それによるコスト削減につながります。

また、クラウド化によりデータがネットワーク上に広がると、ビジネスプロセスの一部を外部のパートナー企業やアウトソーシングに頼ることがより柔軟になります。こうした状況の中で登場するのが、スマートコントラクトです。スマートコントラクトは、ビジネスの取引条件をプログラムに組み込むことで、条件が満たされたときに自動的に契約が実行されるというものです。

これらのテクノロジーの導入によって、BPOはさらなる進化を遂げ、企業間の取引や契約をスピーディーかつ透明にする可能性があります。また、スマートコントラクトの導入によって、従来人間が関与していた取引や契約のプロセスが自動化され、企業の労力を大幅に削減することも可能となるでしょう。

法制度の変化がBPOにもたらす影響

社会の動向や法制度の変化は、ビジネスの形態や取引方法に大きな影響を与えます。その影響はBPOにも及び、新しい形のBPOを生み出す可能性があります。例えば、近年では規制緩和により新しいビジネスモデルが生まれています。その一方で、データ保護の強化や取引の透明性を求める動きもあります。

こうした社会や法制度の変化に対応するために、BPOプロジェクトはその内容を大きく変える必要があります。例えば、データ保護に関する法制度が強化されれば、個人情報を扱うBPOはその取り扱いをより厳重に行う必要が生じます。その結果、BPOは新たな法制度に対応したサービスを提供することが求められます。

このように、BPOは社会の動向や法制度の変化に順応して進化を続けることが求められます。そのため、BPOの未来を予測するためには、社会の動向や法改正の予測だけでなく、それに応じたBPOの対策も重要であると言えるでしょう。

新興国と先進国におけるBPOの適用範囲

BPOは、新興国と先進国でさまざまな形で適用されています。新興国では、コスト削減と能率化を目指してBPOが積極的に導入されています。一方で、先進国では、特定の業務を専門化するためのBPOや、新たなビジネスモデルを生み出すためのBPOなど、新興国とは異なる形でBPOが適用されています。

新興国におけるBPOの成功事例を見ると、その多くが、安価な労働力と技術力を活かした業務処理のアウトソーシングです。これに対して、先進国では、より高度なスキルや専門知識を持った人材を活用したBPOが主流となっています。それにより、BPOの成功事例は先進国と新興国で大きく異なっている場合があります。

このような状況の中で、将来的にはより多くの国がBPOのメリットに注目し、その導入を進めていくことが予想されます。そのため、企業は自分たちのビジネスモデルや戦略に最も適したBPOを選び、それを効果的に活用することが求められます。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム