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建設業の働き方を変える「遠隔臨場」について解説

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昨今、多くの企業でテレワークが導入され、オフィスに出社しない働き方が浸透してきています。そんななか、テレワークが難しいとされる建設業において「遠隔臨場」が注目されていることはご存知でしょうか。遠隔臨場は国土交通省もが推進しており、建設業界における働き方を変えるものとして期待されています。

今回は、遠隔臨場の概要から仕組み、導入におけるメリットや注意点について解説します。

建設業の遠隔臨場とは

遠隔臨場とは監督官が現場に赴かず、ウェアラブルカメラなどから送られてくる映像と音声によって臨場を実現するものです。国土交通省が公表する資料では次のように定義されています。

「動画撮影用のカメラ(ウェアラブルカメラ等)により撮影した映像と音声をWeb会議システム等を利用して『段階確認』、『材料確認』と『立会』を行なうもの」

本来、監督員が直接現場で行っていた段階確認・材料確認・立会をリモートで実施するための手段であり、公共工事への導入をはじめとして多くの現場で取り入れられ始めています。

国土交通省が遠隔臨場を推進

遠隔臨場は国土交通省が推進しており、2020年5月には「令和2年度における遠隔臨場の施行方針」を発表しました。令和4年1月には「関東地方整備局における建設現場の遠隔臨場の施行方針」を発表しています。

同資料のなかでは遠隔臨場の件数についても公表されており、令和2年度の166件に対して令和3年度は428件にまで増え、約2.6倍にまで増えていることがわかります。

国土交通省が遠隔臨場を推進する理由としては、建設業界のDX推進、働き方改革による生産性の向上が期待できる点が挙げられるでしょう。

遠隔臨場の仕組み

遠隔臨場は現場の施工者がウェアラブルカメラなどを装着して作業を行い、その様子を配信します。監督員はパソコンやタブレットなどで配信される内容を確認し、通話によって指示を行えるためリモートワークが実現できます。

撮影・配信・通話が行えるデバイスとしてスマートフォンが利用されるケースもありますが、スマートフォンを利用する場合は、施工者の両手がふさがってしまいます。そのため、体に装着するウェアラブルカメラや眼鏡の形をしたカメラであるスマートグラスが好まれます。

ウェアラブルカメラやスマートグラスであれば、両手を自由にできます。特にスマートグラスは施工者の目線がそのまま配信されるため、監督員はより的確に指示できます。

リアルタイム配信だけでなく、録画しておき後でチェックすることも可能です。

建設業が遠隔臨場を導入することで得られるメリット

遠隔臨場を導入することで得られるメリットとしては次のようなものが挙げられます。

  • 人手不足の解消
  • 感染症の防止
  • コストの削減
  • 安全性の向上

日本社会は少子高齢化が進んでおり、建設業界でも働き手の不足は深刻な課題となっています。遠隔臨場によって現場に赴くための日程調整も容易になり、現場管理が効率化されるため、現場に必要な人員を削減できることから人手不足の解消が期待できます。

現場にいなければならない人員の削減は、コロナ禍においては感染症対策としても有効です。また在宅勤務であれば現場までの交通費やオフィスにかかるコストも削減できます。

通常の臨場では現場に赴ける日程が限られていることから、少ない時間で作業を行わなければなりません。限られた時間で対応していると人的ミスや確認漏れが発生する可能性が高まります。遠隔臨場では余裕を持って対応できるため安全性が向上します。

遠隔臨場を導入する際の注意点

便利で業務を効率的にする遠隔臨場ですが、導入の際にはいくつか注意すべき点があります。

  • 初期導入費用がかかる
  • 通信環境の整備が必要
  • セキュリティ対策が必要

遠隔臨場を実現するためにウェアラブルカメラなどの機器や、ネットワーク接続を実現するためのモバイルルーターが必要になります。そのため、初期導入費用がかかる点は考慮しなければなりません。

また、遠隔臨場を実施する上で課題として挙げられることが多いものが通信環境です。山の中などの電波が届きにくい場所が現場になることも多いため、映像に遅延が発生したり、音声がとぎれとぎれになって作業を行いづらかったり、という声も聞かれます。

そのため、高品質な通信環境をしっかりと整備して業務の遂行に影響が出ないようにする必要があります。

加えて、インターネットを通じて配信することからセキュリティ対策も欠かせません。第三者が不正アクセスできないようにしっかりと対策することが重要です。併せて、ネットワークが接続できないと業務の遂行に支障を来すため、ネットワークの信頼性・安全性についてもしっかりと検討する必要があるでしょう。

遠隔臨場のまとめ

遠隔臨場とは直接現場に赴かず、ウェアラブルカメラなどを利用して映像と音声によって臨場を実現するものです。国土交通省が推進しており、公共工事を始めとしてさまざまな現場で取り入れられ始めています。

遠隔臨場は人手不足の解消やコストの削減、テレワークの実現など多くのメリットをもたらします。効率的な現場作業の実現に向けて、遠隔臨場の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム