フレックスタイム制やリモートワークが広がるほど、「いつ相談できるか」「いつ決めるか」が曖昧になり、業務が止まりやすくなります。そこで役立つのがコアタイムです。この記事では、コアタイムの定義から、導入メリット・注意点、制度設計と運用のコツまでを整理し、自社にとって妥当な設計を判断できるように解説します。
コアタイムとは、主にフレックスタイム制などで設定される「その時間帯は勤務していることが求められる」必須の時間帯を指します。出退勤時刻を一定範囲で柔軟にできる制度の中でも、連絡・相談・意思決定を行いやすいように“稼働が重なる時間”を確保するための仕組みです。
なお、コアタイムは「全員が出社する時間帯」と混同されがちですが、制度上は勤務していることが重要であり、出社の有無は働き方(出社/在宅/ハイブリッド)や社内ルールによって異なります。近年は、同じ場所に集めるよりも、同じ時間に連携できる状態をつくる目的で運用されるケースが増えています。
柔軟な働き方は、通勤負担の軽減や私生活との両立に寄与する一方で、チームの動きが「各自バラバラ」になりやすい側面があります。たとえば、確認が必要なタスクが出たときに担当者が不在で、返答待ちのまま作業が止まる、といった状況です。
コアタイムは、こうした「止まりやすい瞬間」を減らすために、同期コミュニケーション(その場で話して決める)の最低限の枠を設ける考え方だと捉えると理解しやすくなります。
コアタイムの主な目的は、連携に必要な時間帯を確保し、業務の停滞を減らすことです。特に、複数人で進める仕事や承認が絡む業務では、共通の稼働時間があるだけで進み方が変わります。
重要なのは、コアタイム自体が目的ではなく、連携が必要な仕事を前に進めるための設計要素だという点です。コアタイムを設けても、会議が増えて集中時間が失われれば逆効果になります。
コアタイムは、どの勤務制度でも同じ意味で使われるわけではありません。制度の前提を押さえると、運用設計が崩れにくくなります。
フレックスタイム制では、一般に「始業・終業時刻の裁量」と「一定期間内での総労働時間の管理」を組み合わせます。その中でコアタイムは、その時間帯に勤務していることを求めるルールとして位置づけられます。コアタイムを短めにすると柔軟性は増えますが、連携が取りにくくなる可能性もあるため、業務特性に合わせた調整が必要です。
リモートワークでは「同じ場所にいない」ことが前提になるため、コアタイムは特に連絡がつく時間の明確化として効いてきます。たとえば、障害対応や顧客対応など“即時性”が求められる業務では、コアタイムの存在がチーム運用の安定に直結しやすくなります。
シフト制やコールセンターのような業務では、全員の稼働を同じ時間に重ねるのが難しい場合があります。その場合は、全社一律のコアタイムよりも、チーム別の重なり時間や、役割ごとの連携枠(引き継ぎ時間、一次対応の窓口時間など)を設けるほうが現実的です。
IT部門は、問い合わせ対応、権限付与、障害対応、変更管理など、他部門との接点が多く、連携遅延が業務停止に直結しやすい領域です。そのためコアタイムは、「働き方のためのルール」というより、ITサービス提供を安定させる運用設計として意味を持ちます。
コアタイムを設けることで、これらの局面で「誰にもつながらない時間」を減らし、初動や判断を早めやすくなります。
コアタイムがあると、会議がその時間帯に集中しやすくなります。すると、本来得たいはずの生産性が落ちる場合があります。IT部門では、特に次のような運用ルールをセットで検討すると効果が出やすくなります。
コアタイム導入で重要なのは、「何時間にするか」よりも、何のために重なり時間が必要なのかを明確にすることです。目的が曖昧なまま導入すると、運用が形骸化したり、不公平感だけが残ったりします。
コアタイムは長いほど安心に見えますが、長くするとフレックスの価値が下がり、会議が増え、結果として集中時間が削られやすくなります。まずは短いコアタイムで運用して、以下のような指標を見ながら調整するほうが安全です。
コアタイムは、導入するだけでは効果が出ません。運用の癖によっては、むしろ働きづらさの原因になります。よくある落とし穴を先に押さえておくことが重要です。
コアタイムが会議で埋まると、同期時間は確保できても、実作業が進みにくくなります。会議の必要性を見直し、議事メモやタスク管理で代替できるものは非同期化することが効果的です。
家庭事情や通院など、一定時間に稼働を合わせにくい人がいる場合、例外が認められない設計は不公平感につながります。例外を「特別扱い」として扱うのではなく、制度として前提化し、手続きを明確にしておくと運用が荒れにくくなります。
コアタイムに勤務していても、会議中、集中作業中、顧客対応中などで即時に返答できないことはあります。コアタイムは万能ではないため、連絡手段と期待値を揃えることが大切です。たとえば、緊急連絡は電話、通常はチャットで一定時間内に返信、などのルールです。
コアタイムの運用は勤怠管理と直結します。実務では、フレックスの清算期間、休憩時間、時間外労働の扱いなど、制度全体と整合した設計が必要です。特に、運用が曖昧なままだと、過剰な時間外労働や健康管理上の問題につながる恐れがあります。
導入や変更の際は、就業規則や社内規程に照らし、運用ルール(例外扱い、申請、記録、連絡手段)を明文化しておくことが重要です。
コアタイムは、主にフレックスタイム制などで設定される「その時間帯は勤務していることが求められる」必須の時間帯です。柔軟な働き方の中でも連携が必要な仕事を止めないために、最低限の同期コミュニケーションの枠として機能します。
一方で、長すぎるコアタイムや会議偏重の運用は、柔軟性を損ね、集中時間を削る原因になります。目的を明確にし、短く始めて調整しながら、非同期の情報共有(記録・タスク管理)とセットで設計することで、働き方改革と生産性の両立につながります。
いいえ。コアタイムは「勤務していること」を揃える考え方で、出社を必須とするかは企業の運用次第です。
あります。必須の時間帯を設けない運用も可能ですが、連携が必要な業務では別の仕組みが必要になります。
いいえ。長すぎると柔軟性が下がり、会議が増えて集中時間が失われやすくなります。
増える可能性があります。会議の上限や議事メモ運用を併用して、会議偏重を防ぐのが有効です。
よいです。業務特性が異なるならチーム別に最適化し、部門間の重なり時間も設計します。
使えます。全員一律ではなく、引き継ぎ時間や窓口時間など役割別の重なりを設ける方法が現実的です。
問題になり得ます。緊急連絡手段や返信期待値など、連絡ルールを明確にしておく必要があります。
連携が必要な業務を特定し、重なり時間が必要な頻度と即時性から最小限のコアタイムを設計することです。
例外を制度として前提化し、条件と手続きを明文化して不公平感を抑えるのが有効です。
承認待ちや返答待ちの頻度、会議時間の総量、残業の偏り、問い合わせの滞留などで判断できます。