カスタマージャーニーは、顧客が商品やサービスを知り、比較し、購入し、利用し続けるまでの「体験の流れ」を整理する考え方です。広告やSNS、店舗、Webサイト、サポートなどタッチポイントが増えた今、どこで迷い、どこで納得し、どこで離脱するのかを見える化しないと、施策が点になりがちです。この記事では、カスタマージャーニーの基本から5つのフェーズ、ニーズ把握、UXとの関係、施策への落とし込み方、そして今後の動向までを整理し、自社で何から着手すべきか判断できるようにします。
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを知る前から購入後までにたどる一連の体験(行動・思考・感情)を、時間の流れに沿って捉えるマーケティングの概念です。単に「認知→購入」といった購買ファネルだけでなく、比較検討の過程での不安や、購入後の利用・問い合わせ・継続の意思決定までを含めて扱う点が特徴です。
顧客の購買行動を分析する際に注目される概念であり、企業にとって重要です。顧客の立場からビジネスを捉え直すことで、施策の優先順位(どこを改善すべきか)や、顧客が価値を感じるポイント(何が決め手になるのか)を具体的に把握しやすくなります。

カスタマージャーニーは、一般的に認知→関心→検討→購入(意思決定)→購入後(利用・満足・継続)のように段階化して整理されます。ただし、実際の顧客行動は直線的ではありません。たとえば「比較サイトを見て候補を絞ったが、SNSの口コミで不安になり再検討する」「店舗で触ってからECで購入する」といった往復や分岐が起こり得ます。
そのため、カスタマージャーニーを作るときは「フェーズを決めて終わり」ではなく、顧客がどのタッチポイントで何を感じ、何を判断材料にしているかを具体化することが大切です。BtoBであれば、利用者だけでなく、情シス・購買・決裁者など複数の関係者が登場するため、「誰のジャーニーなのか(役割)」も明確にする必要があります。
従来のマーケティングは、企業から顧客へ一方向に情報を届ける発想が中心でした。しかし、検索、SNS、レビュー、比較サイト、動画などが普及すると、顧客は自分で情報を集め、比較し、納得したうえで意思決定するようになります。結果として、企業が用意した導線だけでは顧客行動を説明しにくくなりました。
デジタル技術の発展により、顧客が情報を得て商品やサービスを選択するプロセスは複雑化・多様化しています。これに対応するため、タッチポイント横断で「体験の一貫性」や「離脱の理由」を捉える枠組みとして、カスタマージャーニーの考え方が広く定着していきました。
近年は、アクセス解析、CRM、MA、アプリログ、問い合わせ履歴などのデータを統合し、行動だけでなく「迷い」や「不満」の兆候を早めに捉える取り組みも増えています。ただし、データが増えるほど「見たいものだけを見てしまう」リスクもあるため、定性的な調査(インタビュー等)と併用して解釈の精度を上げる姿勢が欠かせません。
カスタマージャーニーは、顧客満足度や継続率(リピート)に関わる重要な要素です。顧客が製品やサービスを知ってから購入に至るまでの道のりを理解することで、企業は「どこで迷いが生じるのか」「どの情報が不足しているのか」「どこで信頼が高まるのか」を整理できます。
また、カスタマージャーニーを深く理解すると、顧客のニーズや課題、不満点を把握し、それに基づいた改善策を立てやすくなります。たとえば、検討段階で離脱が多いなら「料金・比較・導入イメージ」の不足が原因かもしれませんし、購入後の解約が多いなら「初期設定のつまずき」や「期待値のズレ」が原因かもしれません。原因の仮説が立つと、打ち手も具体化します。
手法としては、アンケート調査、ユーザーインタビュー、ユーザビリティテスト、Web解析、カスタマーサポートの問い合わせ分析などを用い、得られた情報をもとにカスタマージャーニーを可視化します。重要なのは、図を作ること自体ではなく、施策の優先順位と検証方法(KPI)まで落とし込むことです。
カスタマージャーニーを活用している企業として、たとえばアマゾンは購買履歴や閲覧履歴などを活用し、顧客に合わせた商品提案や再購入の導線を整えています。ここでのポイントは「提案」だけでなく、検索・比較・配送・返品など複数の体験を一続きとして磨き込んでいる点にあります。
Appleも体験設計の一貫性で知られています。製品の認知から購入、利用開始、サポートに至るまで、顧客が迷いにくい導線を揃えることで、ブランドへの信頼が積み上がりやすくなります。特に店舗体験とオンライン体験を切り離さず、同じ価値観で設計している点が参考になります。
ただし、成功企業のやり方をそのまま真似るのは現実的ではない場合もあります。自社で取り組む際は、まず「離脱が多いフェーズ」や「問い合わせが集中する場面」など、痛みが出ているポイントから優先して可視化し、改善サイクルを回すのが現実的です。
カスタマージャーニーは、顧客の体験を段階に分けて整理することで、必要な情報提供や支援が見えやすくなります。ここでは代表的な5つのフェーズを取り上げ、顧客の行動・心理、企業側の狙い、施策の例をセットで確認していきましょう。
なお、フェーズはあくまで整理の枠組みです。現実には、顧客は行ったり来たりします。だからこそ「各フェーズで顧客が何をもって次へ進むのか(納得材料)」を言語化しておくことが、施策の精度を上げる近道になります。
認知は、顧客が商品やサービスの存在を知る段階です。広告、検索結果、SNS、口コミ、イベント、展示、比較記事など、入口は多様です。顧客側の心理としては「なんとなく気になる」「課題がある気がする」程度で、まだ具体的な要件は固まっていないことも珍しくありません。
この段階での企業の目標は、まず知ってもらうことですが、単なる露出だけでは次につながりません。顧客が抱える課題と結びつく形で「自分ごと化」してもらうことが重要です。たとえば、BtoBなら「よくある失敗」「担当者が最初に気にするポイント」、BtoCなら「選び方」「失敗しないコツ」など、入口の不安をほどく情報が効果的です。
施策例としては、SEO記事、SNS投稿、広告配信、業界メディアへの寄稿、ウェビナー、PRなどが挙げられます。運用の視点では、認知施策は短期のCVだけで評価しづらいため、指名検索、再訪率、動画視聴完了率など、フェーズに合った指標を併用すると判断しやすくなります。
関心は、顧客が「もう少し詳しく知りたい」と感じ始める段階です。Webサイトで特長を読み、事例を探し、料金感を把握しようとするなど、情報収集が具体化します。一方で、ここで顧客は「自分の条件に合うのか」「何がメリットなのか」を探すため、情報が抽象的だと離脱しやすくなります。
このフェーズの目的は、関心を維持し、次の検討へ進むための材料を揃えることです。ポイントは、メリットを並べるだけでなく、誰に向くか/向かないか、導入や利用の前提、よくある疑問を先回りして示すことです。顧客は「自分に関係ある話かどうか」を短時間で判断します。
施策例としては、ホワイトペーパー、入門資料、比較ガイド、FAQ、導入事例、オンデマンド動画、説明会・イベントなどがあります。運用の視点では、資料DL後のナーチャリングは押し付けになりやすいため、メール配信も「課題別」「業種別」など文脈に合わせ、過度な頻度にしない配慮が必要です。
検討は、顧客が具体的に選定を始める段階です。比較表、レビュー、競合比較、社内稟議資料、見積り、トライアルなどが動きます。BtoBでは「導入・運用負荷」「既存環境との相性」「セキュリティやコンプライアンス」「サポート体制」など、条件が増えるほど意思決定は慎重になります。
このフェーズのゴールは、顧客が「これなら進められる」と判断できる状態をつくることです。刺激的なプロモーションだけではなく、不安を潰す情報が決め手になります。たとえば「導入までの手順」「必要な社内調整」「想定スケジュール」「運用時のよくあるつまずき」「比較時のチェック観点」など、現場の目線で具体化すると効果があります。
施策例としては、個別相談、デモ、無料トライアル、導入事例(業種・規模別)、比較資料、ROIの考え方、稟議テンプレートなどがあります。運用の視点では、検討段階の問い合わせは温度感が高い一方、過剰な追いかけは逆効果になり得ます。顧客の検討ペースに合わせ、次のアクションを選べる形(相談・資料・トライアル)で提示するのが現実的です。
購入(意思決定)は、顧客が最終判断を下し、申し込みや契約、購入手続きに進む段階です。この局面では、顧客は「本当にこれでいいのか」「失敗したくない」という心理が強くなります。つまり、ここで必要なのは、勢いよりも安心材料です。
企業側の目的は、購入の障壁を減らし、スムーズに手続きを終えられる体験を提供することです。ECならチェックアウトの分かりやすさ、決済手段、配送・返品条件が重要です。BtoBなら契約条件、見積・請求、セキュリティ審査、導入支援の範囲、窓口体制など、最終確認事項を明確にしておく必要があります。
施策例としては、導入までのロードマップ提示、契約・導入FAQ、比較最終版資料、社内説明用の要約資料、初期設定サポートの案内などがあります。運用の視点では、この段階で「説明が担当者によって揺れる」と不安を生むため、説明資料や提案の型を整え、情報の一貫性を保つことが効きます。
購入後は、顧客が実際に使い始め、価値を実感できるかどうかが問われる段階です。多くの離脱は「買った直後」ではなく、使い始めでつまずいたときに起こります。ここでのキーファクターは、満足度だけでなく、定着(継続利用)と再購入・追加購入、そして紹介(リファラル)です。
このフェーズの目的は、顧客が成果を出せる状態に導き、長期的な関係を築くことです。たとえば、オンボーディング(初期導入支援)、活用Tips、チュートリアル、定期フォロー、コミュニティ、問い合わせの解決速度などが体験を左右します。BtoBでは「担当者が変わっても運用できる」状態づくり(ドキュメント整備、運用ルール化)も重要です。
施策例としては、CS(カスタマーサクセス)支援、利用状況レポート、定期レビュー、ヘルプセンター、FAQ、動画マニュアル、ロイヤルティプログラム、アップセル/クロスセルの提案などがあります。運用の視点では、購入後施策は「売り込み」に見えると反発を招くため、まずは成果に直結する支援(使い方・活用事例・障害対応)を優先し、信頼の上に提案を重ねる順序が大切です。
ビジネスの成果は、顧客のニーズをどれだけ正確に理解し、それに沿って商品やサービス、コミュニケーションを設計できるかに左右されます。ただし、顧客自身がニーズを言語化できていないことも多く、表面的な要望だけを拾うと的外れになりがちです。
ここでは、ニーズの種類、把握のメリット、具体的な把握方法、そして事業成長との関係を整理します。カスタマージャーニーとセットで考えることで、「どのフェーズでどのニーズが強くなるのか」まで踏み込めるようになります。
顧客のニーズは、大まかに機能的ニーズ、社会的ニーズ、意味的ニーズの3つに分けて整理されることがあります。
機能的ニーズは、商品やサービスが果たす役割や性能に関する要望です(例:作業時間を短縮したい、エラーを減らしたい、設定が簡単であってほしい)。社会的ニーズは、周囲からどう見られるか、所属集団での評価に関わる要望です(例:信頼できるブランドを選びたい、社内で説明が通るものにしたい)。意味的ニーズは、価値観やライフスタイル、理念との一致に関わる要望です(例:自分の仕事の流儀に合う、企業姿勢に共感できる)。
実務では、これらが混ざり合って意思決定が起こります。たとえばBtoBのツール選定でも、機能だけでなく「導入して大丈夫だと社内で説明できるか(社会的)」が大きく影響します。ニーズを切り分けると、訴求やコンテンツの作り方が具体化します。
顧客のニーズを把握できると、マーケティング施策の精度が上がるだけでなく、顧客満足度やロイヤリティの向上にもつながります。顧客が求める価値が見えると、商品・サービスの改善点が明確になり、コミュニケーションも押し付けになりにくくなります。
また、ニーズの把握は新たなビジネスチャンスの発見にもつながります。たとえば、既存機能の改善よりも「導入支援」や「運用テンプレート」の提供が価値になるケースもあります。顧客が本当に困っているのが製品そのものではなく、運用や社内調整である場合、提供価値の再設計が必要です。
顧客のニーズを把握する方法は多数あります。代表例として、アンケート調査やインタビュー調査は、直接顧客から情報を得る基本手法です。一方で、アンケートは「分かりやすい不満」しか拾えないこともあるため、インタビューで背景(なぜそう感じたか)まで掘ると解像度が上がります。
さらに、ユーザビリティテストやWeb解析(アクセス解析、ヒートマップ、ファネル分析など)を用いると、実際の行動からつまずきや離脱の兆候を捉えられます。加えて、問い合わせログ、チャット履歴、レビューコメント、SNS投稿などは、顧客の言葉が生に近い形で残るため、改善のヒントになりやすい情報源です。
運用上のコツは、定量(数字)と定性(声)を往復することです。数字で「どこで起きているか」を特定し、声で「なぜ起きているか」を推測し、改善後に再び数字で効果を確認します。これを繰り返すと、カスタマージャーニーの精度も上がります。
顧客のニーズを把握することは、商品やサービスの最適化にとどまらず、事業全体の成長に直結します。特に、カスタマージャーニーの各フェーズでニーズの種類や強さは変わります。認知段階では「そもそも課題があるのか」を理解したいニーズが強く、検討段階では「比較・不安解消」が中心になり、購入後は「成果が出るか」「困ったときに助けてもらえるか」が重要になります。
つまり、ニーズ把握は単発の調査ではなく、フェーズごとに必要な情報を揃える設計として捉えると効果的です。継続的にニーズを捉え直すことで、顧客との関係が長期化し、結果として売上や利益の安定にもつながります。
UX(ユーザーエクスペリエンス)は、顧客が商品やサービスを知り、使い、評価するまでに得る体験全体を指します。カスタマージャーニーが「顧客体験の流れ」を扱うのに対し、UXはその流れの中の各接点で起こる体験の質を扱う、と整理すると理解しやすくなります。
ここでは、UXの基本、UX改善がジャーニーに与える影響、満足度との関係、そして設計の考え方をカスタマージャーニーの視点で確認します。
UXは、顧客が商品やサービスを使用する過程全体の経験を指します。機能や性能だけでなく、操作性、分かりやすさ、安心感、楽しさ、利用後の満足度まで含む広い概念です。たとえば同じ機能を持つサービスでも、「どこを押せばよいか迷わない」「困ったときにすぐ解決できる」といった体験があるだけで、評価は大きく変わります。
UXは主観的な要素を含みますが、だからこそ設計で改善できます。画面設計や導線だけでなく、説明文、初期設定の手順、サポートの案内、エラー時の表示など、顧客が体験するすべてがUXの一部です。UXを軽視すると、顧客満足度の低下だけでなく、問い合わせ増や解約増といったコスト面にも跳ね返ります。
UXが改善されると、購入後の満足度が上がりやすく、継続利用やリピートに結びつきます。さらに、満足した顧客は口コミやレビュー、SNS投稿などを通じて周囲へ情報を伝えることがあり、認知・関心フェーズにも間接的に良い影響が生まれます。
ただし、UX改善の対象は「プロダクトの画面」だけではありません。たとえば、検討段階での比較資料が分かりやすい、購入手続きが迷いにくい、問い合わせのたらい回しがない、といった体験もUXです。ジャーニー全体の中で、どこがボトルネックになっているかを見たうえで改善対象を選ぶと、効果が出やすくなります。
UXは顧客満足度に直接影響します。顧客は「期待していた価値が得られたか」を体験として判断するためです。特に、購入直後のオンボーディング(使い始めの数日〜数週間)は満足度の分かれ目になりやすく、ここでのつまずきは解約や低評価につながりやすい傾向があります。
そのため、UXを向上させることは「顧客満足度の向上」「リピート購入の促進」「ロイヤリティの形成」など、ビジネス上の成果の土台になります。合わせて、口コミやシェアによるブランドイメージ向上などの間接的効果も期待できます。
プロダクトデザインは、顧客の気持ちや体験を理解し、商品やサービスの形に落とし込む活動です。カスタマージャーニーの視点を取り入れると、「どのフェーズで、どの情報が足りず、どの体験が不安を生むのか」を具体的に設計へ反映できます。
たとえば、検討段階で「違いが分からない」という不安が強いなら、比較観点を明確にするデザイン(情報設計)が必要です。購入後に「最初の設定が難しい」なら、初期設定のガイドやチュートリアルを体験として設計する必要があります。ジャーニーとUXを接続すると、改善の優先順位が「思いつき」ではなく「顧客の体験の流れ」から決まるようになります。
カスタマージャーニーをマーケティング戦略に取り入れると、施策を点ではなく線として設計できます。顧客がどの段階でどの情報を求め、どんな不安を抱え、何を決め手に前へ進むのかが見えるため、コンテンツ、広告、営業対応、サポートなどの役割分担も整理しやすくなります。
ここでは、マーケティング戦略との関係、活用ステップ、データ分析による改善の考え方、重要性を具体的に説明します。
マーケティング戦略の目的は、顧客に価値を伝え、選ばれる状態をつくることです。そのためには、商品やサービスが提供する価値と、顧客が期待する価値のズレを減らす必要があります。カスタマージャーニーは、そのズレがどこで生まれているかを見つけるための枠組みとして機能します。
たとえば、認知段階では「課題が整理できていない顧客」に向けた情報が必要ですし、検討段階では「比較材料」や「導入の現実感」が必要です。購入後は「成果が出るまでの道筋」が必要になります。ジャーニーがないと、これらが混ざり、顧客にとって分かりにくい発信になりがちです。
運用上は、マーケティング部門だけで完結させず、営業・CS・開発・サポートなど、顧客接点を持つ部門と共通言語にすることが重要です。ジャーニーは「図」ではなく「合意形成の道具」として扱うと、施策が現場に落ちやすくなります。
カスタマージャーニーの活用は、次のような手順で進めると現実的です。
1)対象顧客(ペルソナ/役割)を決める
BtoBなら決裁者・運用担当・利用者など、誰の視点を描くかを明確にします。顧客像が曖昧だと、ジャーニーも曖昧になります。
2)フェーズとタッチポイントを書き出す
検索、SNS、比較記事、資料請求、商談、導入、問い合わせなど、実際に顧客が通る接点を並べます。社内の思い込みではなく、データや現場の声で補正します。
3)各接点での行動・思考・感情・障壁を整理する
「何を見て」「何を不安に感じ」「何が分かれば次へ進むか」を具体化します。ここで抽象論のまま止めないことが重要です。
4)改善仮説と施策を紐づけ、KPIを設定する
「どこを改善すれば効果が出そうか」を決め、検証できる指標(例:資料DL後の商談化率、初期設定完了率、問い合わせ削減率など)を置きます。
5)運用し、定期的に更新する
顧客行動や市場環境は変わるため、ジャーニーは作りっぱなしにしないのが前提です。四半期や半期など、更新のリズムを決めると運用が安定します。
データ分析により、顧客がどの段階で何を求めているのか、どこで満足し、どこで不満が生じているのかを把握しやすくなります。たとえば、Web解析では離脱ページや導線の詰まりを把握でき、MAやCRMでは「どの行動が商談化につながるか」を見つけやすくなります。
改善のアプローチ例としては、UXの改善、ユーザーインタビュー、ユーザーテスト、ヒートマップ分析、A/Bテストなどがあります。ただし、分析は「数値が動いた理由」を説明できて初めて価値があります。数値だけを追うと誤解が起こりやすいので、定性的な観察とセットで解釈するのが安全です。
また、データ活用ではプライバシーや同意の取り扱いが重要です。追跡やパーソナライズを強めるほど、顧客に不快感を与えるリスクも増えます。施策の効果だけでなく、顧客体験としての納得感(透明性、選択肢の提示)も合わせて設計する必要があります。
カスタマージャーニーは、顧客の立場からビジネスを捉えるための枠組みであり、課題や不満点を把握して施策に落とし込むうえで有効です。各段階に合わせた情報提供と体験設計ができると、顧客は迷いにくくなり、結果として満足度やロイヤリティの向上につながります。
重要なのは「ジャーニーを知っている」だけで終わらせず、どの部門が、どのフェーズで、何を改善するのかまで決めることです。戦略と運用がつながったとき、ジャーニーは継続的に成果を生む道具になります。
市場や技術の変化により、カスタマージャーニーの捉え方も更新され続けています。ここでは、AI活用、データドリブンの深化、そして新たな課題を整理し、今後の設計で意識すべき点をまとめます。
AIは、カスタマージャーニーの分析や改善で活用が進んでいます。たとえば、行動ログや問い合わせ内容の分類、次に提示すべき情報の推薦(いわゆる「次に最適な提案」)、チャットによる一次対応、需要予測などは、現場の負荷を下げつつ顧客体験を整える用途として現実的です。
一方で、「AIがあれば自動的に最適化できる」と考えるのは危険です。学習に使うデータが偏っていれば提案も偏りますし、説明責任が求められる場面(価格、審査、優先度付けなど)では、根拠が曖昧な自動判断はトラブルの原因になります。AIを導入する場合は、適用範囲、判断のルール、例外処理、人が確認するポイントをあらかじめ設計しておくことが重要です。
データドリブンマーケティングは、ジャーニーの各段階での意思決定を支えます。行動データや属性データを集めて解析し、顧客の状況に合った情報や体験を提供できると、無駄な接触を減らしつつ成果につなげやすくなります。
ただし、データ活用は「多ければよい」ではありません。データの質(欠損、重複、定義の揺れ)や、組織内での定義統一(何をもって「関心」とするか、どこから「検討」とするか)が整っていないと、分析結果が意思決定に使えません。ジャーニーをデータで運用するなら、まずは指標の定義と計測方法を揃えるところから始めるのが堅実です。
デジタル化が進む中、カスタマージャーニーには新たな課題が生まれています。代表的なのがパーソナライゼーションです。顧客の状況に合わせた体験が求められる一方、過度な最適化は「監視されているように感じる」「しつこい」といった反発を招くことがあります。顧客に選択肢を用意し、透明性を確保することが大切です。
また、エクスペリエンスの提供も課題です。機能や価格の差が小さくなるほど、比較の決め手は体験(分かりやすさ、安心感、導入支援、サポート品質など)に移ります。ここで差がつかないと、価格競争に巻き込まれやすくなります。
さらに、オムニチャネル(オンラインとオフラインの横断)が進むほど、部門間の分断が体験の分断になります。顧客目線では、部署の都合は関係ありません。ジャーニーを使って「体験のつながり」を整えることが、競争力の土台になります。
カスタマージャーニーは、技術の進歩に伴って進化し続けます。ただし、中心にあるのは常に「顧客が何を見て、何を不安に感じ、どう納得するか」という人の意思決定です。データやAIを使うほど、その前提を見失わないことが重要になります。
今後は、顧客理解を深めたうえで、最適なコミュニケーション手法を選び、必要なタイミングで必要な支援を届ける設計が求められます。そのためには、データ活用の基盤整備、部門横断の合意形成、そして顧客体験を継続的に改善する運用体制が欠かせません。
顧客の経験を理解し、分析し、改善することは、企業にとって持続的な成長を支える取り組みです。同時に、顧客にとっても「迷いにくく、納得しやすい体験」が増えるため、長期的に良好な関係を築きやすくなります。
購買ファネルが主に購入までの段階整理なのに対し、カスタマージャーニーは購入後の利用・満足・継続まで含めて体験全体を扱います。
有効です。BtoBは関係者が複数登場するため、役割ごとのジャーニーを整理すると施策のズレを減らせます。
終わりではありません。顧客行動や市場環境が変わるため、定期的に見直して更新する運用が前提です。
顧客像、フェーズ、タッチポイント、行動・思考・感情、障壁、次へ進むための納得材料が最低限必要です。
機能的ニーズ、社会的ニーズ、意味的ニーズに分けると、訴求と改善点を切り分けやすくなります。
十分ではありません。アンケートは表層を拾いやすいため、インタビューや行動データ分析と組み合わせる必要があります。
フェーズに合わせて設定します。例として、再訪率、資料DL後の商談化率、初期設定完了率、継続率などが有効です。
全フェーズに効きます。特に購入後のオンボーディングとサポート体験は満足度と継続に直結します。
行動分析、問い合わせ分類、推薦、一次対応などに活用できますが、適用範囲と確認ポイントの設計が必要です。
過度な最適化は不快感を生むため、透明性と選択肢を用意し、プライバシーに配慮した運用が必要です。