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DESとは? わかりやすく10分で解説

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目次

はじめに

DESとは?

DES(Data Encryption Standard)は、かつて広く使われた共通鍵(対称鍵)暗号の標準規格です。1つの秘密鍵を送信側・受信側で共有し、同じ鍵で暗号化と復号を行います。

DESは長らく「業界標準」として多くの製品やプロトコルに組み込まれましたが、現在では鍵長(56ビット)が短いことから、強固な暗号としては推奨されません。いまDESを理解する意義は、歴史的な位置づけだけでなく、レガシー環境に残る暗号設定をどう扱うか(置き換え・段階移行・リスク評価)を判断する基礎になる点にあります。

DESの定義

DES(Data Encryption Standard)は、米国の連邦標準(FIPS)として公表されたブロック暗号の一つです。DESは64ビット単位のデータ(ブロック)を暗号化し、鍵として56ビット長の共通鍵を用います。

アルゴリズムの構造はFeistel(ファイステル)構造で、平文ブロックを左右に分け、16回のラウンド処理で暗号文を得ます。各ラウンドでは、同一のマスター鍵から生成されたラウンド鍵(サブキー)を使って処理が進みます。

鍵の総当たり候補は256(約7.2×1016)通りあります。歴史的には大きな値でしたが、計算資源が増えた現代では、56ビットは安全性の観点で十分とは言えません

DESの歴史

DESは、標準暗号として長期間使われ、金融・行政・企業システムなど幅広い領域に普及しました。一方で、計算機性能の向上により総当たり攻撃の現実性が高まり、より強い暗号方式への移行が進みました。

現在の実務では、DESそのものを新規採用するのではなく、既存環境に残るDES設定をどう排除・移行するかが主な論点になります。

DESの基本

DESは「暗号化」と「復号」の2つのプロセスを持ちます。暗号化は64ビットの平文を入力し、16回のラウンドを経て64ビットの暗号文を生成します。復号は、ラウンド鍵の適用順序が逆になるだけで、基本的に同じ構造で平文を取り戻します(Feistel構造の性質)。

処理の流れとしては、入力に初期置換(IP)を適用し、左右32ビットずつに分割してラウンド処理を行い、最後に最終置換(FP)を適用して出力します。IP/FPは歴史的背景のある処理で、暗号強度の本質は主にラウンド関数側で作られます。

DESの特徴

DESの強みは、当時の設計として置換(substitution)拡散(diffusion)を組み合わせ、少しの入力差が出力全体へ広がる(いわゆるアバランシェ効果)を狙った点にあります。各ラウンドでサブキーを使い、ビット列を複雑に混合することで、暗号文から平文を推測しにくくします。

ただし、DESは鍵長が56ビットであるため、総当たり攻撃に対する耐性が現代では不足します。その結果、現在はAES(Advanced Encryption Standard)が共通鍵暗号の主流として使われています。

DESの暗号化プロセス

DESの暗号化は、大きく「前処理(置換)→ラウンド処理→後処理(置換)」で捉えると理解しやすくなります。ここでは主要ポイントに絞って、流れと各要素の役割を整理します。

暗号化の基本フロー

DESは、64ビットの平文ブロックに初期置換(IP)を適用し、左右32ビット(L0/R0)に分割します。その後、16ラウンドの反復処理を行い、最後に左右を入れ替えた上で最終置換(FP)を適用して64ビットの暗号文を得ます。

この「一定サイズのブロックを処理する」性質から、実際のファイルや通信データを暗号化するには、ブロック暗号の動作モード(CBC、CTR、GCMなど)と組み合わせて用いるのが一般的です(DES単体の話と、運用形態の話を分けて考えるのがポイントです)。

ラウンドと鍵の役割

DESの核は16回のラウンド処理です。各ラウンドで、右側32ビットにラウンド関数 fを適用し、その結果を左側とXORして左右を入れ替える、という流れで進みます。

鍵は56ビットのマスター鍵から生成される16個のサブキー(各48ビット)としてラウンドに供給されます。つまり「同じ鍵をそのまま16回使う」のではなく、鍵スケジュールによってラウンドごとに変化するサブキーを使う点が重要です。

ラウンド関数の詳細

ラウンド関数 f は、主に次の処理で構成されます。

1) 拡大置換(E):右側32ビットを48ビットへ拡大します(一部ビットを重複させます)。

2) 鍵とのXOR:拡大した48ビットとサブキー48ビットをXORします。

3) Sボックス(置換):48ビットを6ビット×8分割し、Sボックスで4ビット×8へ変換して32ビットに戻します(非線形性の中心)。

4) P置換:32ビットを並べ替え、次ラウンドへ拡散しやすくします。

ここで重要なのは、DESは「ハッシュ化」ではなく、鍵付きの変換(暗号化)である点です。ハッシュは基本的に不可逆ですが、DESは鍵があれば復号できます。

最終出力とDESの出力

16ラウンド後、左右を入れ替えた状態(R16/L16)にして最終置換(FP)を適用し、暗号文を出力します。復号では同じ構造を用い、サブキーの適用順序を逆にすることで平文に戻します。

DESの種類と特性

「DES」は本来1つの暗号アルゴリズムを指しますが、DESを複数回適用して強度を上げる試みとして、二重DESやトリプルDES(3DES/TDEA)が知られています。ここでは代表的な3つを整理します。

単一DES

単一DESは、56ビット鍵で64ビットブロックを暗号化する元来のDESです。現代の基準では鍵長が短く、総当たり攻撃に対して十分な安全性を提供できません

二重DES

二重DESはDESを2回適用し、鍵を2つ用いる方式です。一見すると鍵長が増えて強くなりそうですが、中間一致攻撃(Meet-in-the-Middle)により、期待したほど安全性が伸びないことが知られています。そのため実務では推奨されません。

トリプルDES

トリプルDES(3DES / TDEA)はDESを3回適用する方式で、代表的な構成としてEDE(暗号化→復号→暗号化)が用いられます。鍵の使い方には「2キー方式」「3キー方式」があり、単一DESよりは強い一方で、DES由来の制約(ブロック長64ビットなど)も抱えます。

各種DESの強度と脆弱性

整理すると、単一DESは鍵長が短く現代用途では不適です。二重DESは中間一致攻撃により増強効果が限定的です。トリプルDESは一定の改善がありますが、性能面・設計上の制約から、現在はAESが主流であり、暗号スイートの更新・移行が基本方針になります。

DESの評価と脆弱性

DESは歴史的には高く評価されましたが、現代の実運用で見ると「なぜ危険なのか」「どんな形で残ってしまうのか」を理解しておく必要があります。

DESのセキュリティ評価

DESは登場当初、実装しやすさと当時の計算能力を前提に、実用的な暗号として広く採用されました。しかし現在は、56ビット鍵が短いため、攻撃者が十分な計算資源を持つ場合に総当たり攻撃が成立し得る点が大きな問題になります。

また、DESはマスター鍵から派生したサブキーを用いて16回ラウンドを回します。これは設計として妥当ですが、「鍵長が短い」という根本問題を解決するものではありません。

DESの脆弱性

DES最大の弱点は鍵長の短さです。鍵探索空間が小さいほど、総当たりの現実性が高まります。さらに、DES(およびDES派生方式)はブロック長が64ビットであるため、大量データの暗号化では運用上の制約・リスクも意識されます(これは暗号アルゴリズム単体だけでなく、モード運用の話も含みます)。

中間一致攻撃とは?

中間一致攻撃(Meet-in-the-Middle)は、暗号処理を多段にしたとき、暗号化側と復号側の「途中結果」を突き合わせることで探索コストを下げる攻撃です。特に二重DESはこの攻撃に弱く、「2回かけたのだから強いはず」という直感が成り立ちにくい代表例です。

攻撃シナリオと対策

DESに対する代表的な脅威は、総当たり攻撃や(方式によっては)中間一致攻撃です。対策として最も現実的なのは、AESなど現代的な暗号方式へ移行することです。

なお、NISTの暗号移行ガイダンス(SP 800-131A Rev.2)では、対称鍵暗号としての二重TDEA(2キー3DES)の暗号化は「Disallowed」とされ、三重TDEA(3キー3DES)の暗号化も「2023年までDeprecated、2023年以降Disallowed」と整理されています。:contentReference[oaicite:0]{index=0}

DESからAESへの移行

DESの制約が明確になるにつれて、共通鍵暗号の主役はAESへ移りました。ここではAESの概要と、移行の理由、比較ポイントを整理します。

AESの概要

AES(Advanced Encryption Standard)は、米国の連邦標準として採用された共通鍵暗号で、ブロック暗号の一種です。鍵長は128/192/256ビットから選べ、DESよりはるかに大きい鍵空間を持ちます。

また、AESはソフトウェア実装でも高速で、CPUの命令セット支援(AES-NIなど)がある環境ではさらに高性能です。性能・安全性・普及度のバランスから、現在の標準的な選択肢になっています。

DESからAESへの理由

移行理由の中心は、安全性(鍵長・設計)運用適合性(現代用途に耐える性能・実装性)です。DESは56ビット鍵のため総当たり耐性が不足し、3DESも設計上の制約や移行ガイダンス上の位置づけから、長期利用の前提になりにくくなりました。:contentReference[oaicite:1]{index=1}

AESとDESの比較

比較の要点は次の通りです。

・鍵長:DESは56ビット、AESは128/192/256ビット。

・設計:DESはFeistel構造、AESは置換・線形変換を組み合わせた別構造(SPN系)。

・現代適合:AESは現代の標準暗号スイートに自然に組み込まれ、実装最適化も進んでいます。

今後の暗号化技術の展望

データ量の増大と攻撃技術の進歩により、暗号は「一度選んで終わり」ではなく、移行可能性を前提に運用されます。また、量子計算の進展を見据え、耐量子暗号(Post-Quantum Cryptography, PQC)の標準化・実装も進んでいます。

ただし、現時点の実務でまず重要なのは、DESのようなレガシー暗号が残っていないかを棚卸しし、影響範囲(通信、保存データ、機器間連携、サードパーティ)を把握した上で、優先順位を付けてAES等へ移行することです。

まとめ

DESの現在の利用状況

DESは歴史的に広く使われた暗号方式ですが、現在では安全性の観点から新規利用は推奨されません。それでも、古い機器・古いプロトコル設定・互換性目的の実装などで、意図せず残っていることがあります。

そのため、実務では「DESを理解する」こと自体よりも、残存DESを発見し、段階的に排除することが重要になります。暗号設定の棚卸し(利用箇所、相手先、モード、鍵管理)を行い、移行計画と検証手順を用意するのが現実的です。

DESの今後の展開

今後、DESが復権する見込みは基本的にありません。一方で、暗号アルゴリズムとしてのDESは、暗号史・設計の基礎(Feistel構造、Sボックス、ラウンド構造)を学ぶ教材として参照され続けます。

DESの代替技術

DESの代替として中心になるのはAESです。用途によっては、通信の認証・署名・鍵交換に公開鍵暗号(RSA、楕円曲線暗号など)が組み合わさり、全体として安全な暗号スイートが構成されます。

重要なのは「暗号方式」だけでなく、鍵管理(生成・保管・ローテーション・失効)と運用設計(モード選定、実装更新、監査)まで含めて、全体で安全性を作ることです。

昨今の暗号化技術の動向

暗号技術の動向としては、耐量子暗号(PQC)への移行準備が注目されています。もっとも、多くの組織にとっての優先課題は、まずレガシー暗号(DES/3DES等)の排除と、現代標準(AES等)への統一です。暗号移行は「一斉置換」ではなく、影響の大きい箇所から段階的に進めるのが現実解になります。

Q.DESは現在も安全に使えますか?

いいえ。DESは鍵長が56ビットと短く、現代の基準では新規利用に適しません。

Q.DESとAESの最大の違いは何ですか?

鍵長と安全性です。DESは56ビット、AESは128/192/256ビットで、AESの方が強固です。

Q.DESはどんな場面で残りやすいですか?

古い機器、古いプロトコル設定、互換性目的の暗号スイートなどで残りやすいです。

Q.二重DESは安全性が2倍になりますか?

なりません。中間一致攻撃により、期待ほど安全性が向上しないことが知られています。

Q.トリプルDES(3DES)は今でも推奨されますか?

推奨されません。暗号移行ガイダンスでは暗号化用途の利用が制限され、AESへの移行が基本です。

Q.DESの「16ラウンド」は何のためにありますか?

ビット列を段階的に混合し、暗号文から平文を推測しにくくするためです。

Q.DESはハッシュ関数のように不可逆ですか?

いいえ。DESは暗号なので、鍵があれば復号して元の平文に戻せます。

Q.DESからAESへ移行するときの注意点は何ですか?

暗号方式だけでなく、利用箇所の棚卸し、相手先互換性、モード選定、鍵管理まで含めて計画します。

Q.「中間一致攻撃」は何を狙う攻撃ですか?

多段暗号の途中結果を突き合わせ、探索コストを下げて鍵を見つけやすくする攻撃です。

Q.耐量子暗号が普及したらAESも危険になりますか?

直ちに無効化される前提ではありませんが、将来に備えてPQC移行の動向を追い、更新可能な設計にします。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム