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DNCとは? わかりやすく10分で解説

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目次

工作機械の加工プログラム(NCプログラム)が大容量化すると、「機械側に入りきらない」「現場ごとに最新版が分からない」「紙テープやUSBの受け渡しでミスが出る」といった悩みが起きがちです。この記事では、複数の工作機械へNCプログラムを配信・管理する仕組みであるDNC(Direct Numerical Control)を、基本から導入時の注意点まで分かりやすく整理します。

DNCとは

DNCはDirect Numerical Controlの略で、工作機械(NC/CNC)に対して、加工プログラム(NCデータ)をネットワーク経由で送受信し、運用を一元化する考え方・仕組みを指します。現場では「DNC=加工プログラムの配信・管理(必要に応じて逐次送信もする)システム」と理解するとイメージしやすいでしょう。

もともとは、紙テープなどの物理媒体でプログラムを持ち運ぶ運用をやめ、中央のコンピュータから複数台の機械へ直接プログラムを送る方式として発展しました。現在は「Distributed Numerical Control(分散数値制御)」の意味でDNCと呼ばれることもあり、工場内のネットワークで複数台をつなぎ、プログラム管理・配信・履歴管理まで含めて運用するケースが一般的です。

DNCが求められる背景

DNCが導入される背景には、次のような現場課題があります。

  • プログラムの大型化:複雑形状や多工程化でNCプログラムが長くなり、機械側のメモリに収まらないことがある
  • 版管理の混乱:誰がいつ修正したか分からず、古いプログラムで加工してしまうリスクがある
  • 受け渡し作業の負担:USBや手作業転送が増えるほど、手間と取り違えが増える
  • 多台数運用:機械台数が増えるほど、配信・保管・承認の仕組みがないと破綻しやすい

DNCの種類

「DNC」をどう捉えるかは製品・現場によって幅がありますが、概ね次の2パターンで説明できます。

  • 集中管理型(サーバー中心):サーバーでNCプログラムを管理し、承認フローや履歴(誰が何をいつ変更したか)まで含めて運用する
  • 配信・通信型(転送中心):機械との通信で、ダウンロード/アップロード/逐次送信(ドリップフィード)を安定して行うことに重点を置く

DNCの仕組み

DNCの基本は「サーバー(またはPC)にあるNCプログラムを、通信回線を通じて工作機械へ渡す」ことです。ここでは、現場でよく出てくる動作のポイントを押さえます。

NCプログラムの転送と「ドリップフィード」

DNCでは、NCプログラムを機械へまとめて送る(ダウンロード)だけでなく、機械側メモリが小さい場合に、プログラムを少しずつ逐次送信して加工を継続する方式が使われることがあります。これが「ドリップフィード(逐次送信)」と呼ばれる運用です。

ドリップフィードでは、通信の安定性が加工の継続に直結します。通信が途切れると加工が止まる可能性があるため、回線品質や機器構成、現場の運用ルールが重要になります。

通信方式(有線・無線)とよく使われるインターフェース

DNCの通信は、工場の設備更新状況によって混在しがちです。代表的には次のような方式があります。

  • RS-232Cなどのシリアル通信:古い機械でも対応しやすい一方、距離・速度・ノイズ耐性に注意が必要
  • Ethernet(有線LAN):工場ネットワークに組み込みやすく、多台数の管理・運用と相性がよい
  • 無線(Wi-Fi等):配線の制約を減らせるが、電波環境・遮蔽物・干渉の影響を受けやすい

「有線=安定、無線=不安定」と決めつけるのは早計です。無線でも設計次第で十分に安定させられる一方、金属設備が多い現場では電波の反射・減衰が起きやすく、事前調査が欠かせません。

DNCシステムを構成する要素

DNCは単なる“転送ソフト”ではなく、運用を支える複数の要素で成り立ちます。

  • DNCサーバー/管理PC:NCプログラムの保管・配信・ログ管理を担う
  • DNCソフトウェア:転送、ドリップフィード、権限管理、履歴管理などを提供する
  • 通信機器:シリアル変換器、デバイスサーバー、スイッチ、アクセスポイントなど
  • 工作機械側の設定:通信条件(ボーレート等)、受信モード、保存領域など

DNCとNCデータ

DNCを理解する上で欠かせないのが「NCデータ(NCプログラム)」です。DNCは“プログラムを作る技術”ではなく、作られたNCプログラムを現場に配り、正しく使い、必要なら回収して管理するための仕組み、と捉えると整理しやすくなります。

NCデータ(NCプログラム)とは

NCデータとは、工作機械に対して「どの工具で、どの順序で、どの座標へ、どの条件で動くか」を指示する命令の集合です。一般的にはGコード/Mコードなどで表現され、CAMで生成されることが多い一方、現場で微調整が入ることもあります。

DNCとNCデータの関係

DNCは、NCデータを機械へ配信するだけでなく、どれが最新版か誰が変更したかどの機械で使ったかといった運用情報もまとめて扱える点に価値があります。特に多台数運用では「プログラムの置き場が分散している」こと自体が不具合の温床になりやすいため、DNCで管理点を集約する効果が出やすくなります。

NCデータの生成と現場投入の流れ

一般的な流れは次の通りです。

  1. CADで形状・図面を作成する
  2. CAMで工具経路を作り、NCプログラムを生成する
  3. (必要に応じて)シミュレーションやポスト処理で機械に合わせる
  4. DNCに登録し、承認・版管理を行う
  5. 現場の機械へ配信し、加工を実施する

この中でDNCが効くのは、主に「4~5」の部分です。つまり、作成側(設計・製造技術)と実行側(現場)をつなぐ“受け渡し”の品質を上げる役割を担います。

DNCとCNCの違い

DNCとCNCは名前が似ていますが、対象範囲が異なります。簡単に言うと、CNCは1台の工作機械の制御装置(またはその方式)DNCは複数台を含む運用・配信の仕組みです。

CNCとは

CNC(Computer Numerical Control)は、コンピュータを使って工作機械を数値制御する方式、またはその制御装置を指します。プログラムに従って、工具やテーブルを高精度に動かし、同じ加工を繰り返し再現できる点が強みです。

DNCとCNCの関係

DNCはCNCの“上位互換”ではなく、CNCを含む現場全体のプログラム運用を支える仕組みです。CNCが各機械の頭脳だとすれば、DNCは「プログラムの配達・保管・履歴管理を担う物流網」に近い役割といえます。

使い分けの考え方

  • 機械が少台数で、プログラムも小さく、受け渡しが単純なら:CNC運用だけでも回る場合がある
  • 機械が増え、プログラムが大型化し、版管理が問題になるなら:DNCの導入効果が出やすい

現実には、CNCはほぼ前提として存在し、その上でDNCをどう設計するかが論点になります。

DNCの応用分野

DNCは「NCプログラムの受け渡し・管理」を強くするため、工作機械を多台数運用する現場ほど効果が出やすい技術です。

機械加工の現場

切削加工や金型加工など、プログラムが長くなりやすい現場では、ドリップフィードを含めた安定転送が重要になります。また、類似品の多品種生産では、プログラムの取り違え防止(版管理)が品質に直結します。

製造ライン・工程全体の最適化

DNCで「どの機械がどのプログラムを使っているか」を把握しやすくなると、工程の見直しや標準化の議論が進めやすくなります。さらに、他システム(生産管理、CAD/CAM、工程管理など)と連携させる構想も立てやすくなります。

自動化設備との連携

産業用ロボットや自動搬送などの自動化設備そのものをDNCで制御する、というよりは、加工プログラムの変更・展開を標準化し、自動化の前提となる運用を整える用途で活用されます。段取り替えが多い現場では、プログラム配布が速いほど立ち上がりも速くなります。

DNCの効果と利点

DNC導入で期待される効果は「多台数運用の品質を上げること」に集約されます。ここでは、よく挙がる改善ポイントを具体化します。

DNCの効果と改善ポイント

  • 段取り時間の短縮:探す・持ってくる・コピーする、といった手作業が減る
  • 取り違えの抑止:最新版の管理、承認済みデータの配布、履歴の可視化でミスを減らす
  • 機械停止の低減:転送待ちや媒体トラブルが減り、稼働率に寄与しやすい
  • 品質の安定化:版の混在が減るほど、加工条件の再現性が上がる

DNCの利点と欠点

利点は、プログラム管理を集約して運用を標準化できる点です。一方で、欠点や注意点もあります。

  • 初期設計が必要:通信方式、権限、承認、フォルダ設計などを曖昧にすると、逆に混乱する
  • 障害時の影響範囲:集中管理が進むほど、サーバー障害やネットワーク障害の影響が広がりやすい
  • 現場運用の徹底が必要:勝手にローカルへ保存・改変されると、版管理が崩れる

DNCのROIを考えるポイント

DNCのROI(投資対効果)は、単に「人件費が減る」だけでは測りにくい面があります。現実的には、次の視点で効果を見積もると判断しやすくなります。

  • プログラム受け渡しにかかる時間(探す・転送・確認)の削減
  • 取り違え・誤版による再加工やスクラップの低減
  • 段取り替えの頻度が高い現場での立ち上げ短縮
  • 品質トラブル時に原因(どの版を使ったか)を追えることによる復旧短縮

DNC導入時の注意点

DNCは「導入すれば自動で良くなる」ものではなく、運用設計の出来が成果を左右します。ここでは、導入前に押さえておきたい論点をまとめます。

通信の安定性と現場環境

ドリップフィードや多台数転送を想定する場合、ネットワークの品質が重要です。とくに無線を使う場合は、遮蔽物・干渉・アクセスポイント配置など、工場特有の要素が影響します。導入前に、対象エリアでの通信評価や障害時の切り分け手順を用意しておくと安心です。

版管理と承認フロー

DNCの価値は「誰でも置ける共有フォルダ」ではなく、正しい版を正しい手順で配るところにあります。最低限、次を決めておくことを推奨します。

  • 登録・変更できる人(権限)
  • 承認の考え方(誰が、どの条件でOKにするか)
  • 命名規則(品番、工程、版数、日付など)
  • 現場での微修正をどう扱うか(戻すのか、現場版を禁止するのか)

セキュリティ対策

DNCは工場内ネットワークに関わるため、情報セキュリティも無視できません。具体的には、認証・権限管理、操作ログ、端末の持ち込み制限、サーバーのバックアップ、ネットワーク分離など、現場の要件に合わせて設計します。

障害時の備え

DNCサーバーやネットワークが止まると、プログラム配信が止まる可能性があります。すべてを一気に依存させるのではなく、バックアップ手段(復旧手順、予備機、最低限の代替運用)を準備し、段階的に移行するのが現実的です。

まとめ

DNC(Direct Numerical Control)は、工作機械へNCプログラムを配信・管理し、多台数運用における版管理や受け渡しの品質を高める仕組みです。プログラムの大型化や多品種化が進むほど、転送の安定性、承認・履歴管理、セキュリティ、障害対策といった運用設計が重要になります。自社の台数規模や現場運用に合わせてDNCを設計できれば、段取り短縮や取り違え低減など、現場の“詰まり”を解消する有力な手段になり得ます。

DNCに関するよくある質問

Q.DNCとは何をする仕組みですか?

工作機械へNCプログラムをネットワークで配信・管理し、版管理や転送作業を標準化する仕組みです。

Q.DNCとCNCは何が違いますか?

CNCは1台の機械を制御する方式・装置で、DNCは複数台を含むプログラム配信・運用を支える仕組みです。

Q.DNCが必要になるのはどんなときですか?

機械台数が増えたときや、NCプログラムが大型化して取り回しや版管理が難しくなったときに効果が出やすいです。

Q.ドリップフィードとは何ですか?

NCプログラムをまとめて送るのではなく、加工しながら少しずつ逐次送信して実行する運用方式です。

Q.DNCは無線でも運用できますか?

運用できますが、工場の電波環境の影響を受けるため、事前調査と設計が重要です。

Q.古い機械でもDNCにつなげられますか?

シリアル通信などで接続できる場合がありますが、対応インターフェースと安定性の確認が必要です。

Q.DNC導入で一番多い失敗は何ですか?

命名規則や承認・権限のルールが曖昧なまま運用を始め、版管理が崩れるケースです。

Q.DNCはセキュリティ面で注意が必要ですか?

必要です。権限管理、操作ログ、バックアップ、ネットワーク分離などを現場要件に合わせて設計します。

Q.DNCサーバーが止まると加工も止まりますか?

ドリップフィード運用では影響が出る可能性があります。障害時の代替手段と復旧手順を用意するのが基本です。

Q.DNCの効果はどう測ればよいですか?

転送・探索の作業時間、取り違えによる再加工、段取り時間、トラブル時の原因特定時間などで評価しやすいです。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム