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DRとは? わかりやすく10分で解説

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目次

DRとは?

DR(Disaster Recovery)は、災害や障害、サイバー攻撃などによってITシステムが停止・劣化したときに、業務に必要な状態へ復旧させるための計画と実行プロセスを指します。単にバックアップを取るだけでなく、「どのシステムを」「どの順番で」「どれくらいの時間内に」「どの水準まで」戻すのかを決め、手順・体制・技術を整えておくことがDRの中心です。

DRの定義

DRは、自然災害(地震・水害など)、ハードウェア故障、ソフトウェア不具合、人的ミス、サイバー攻撃などにより発生するシステム停止(ダウンタイム)やデータ損失を、許容範囲内に抑えながら復旧するための戦略です。日本語では「災害復旧」「ディザスタリカバリ」と呼ばれます。

実務では、ドキュメント(手順書・連絡網・判断基準)、ポリシー(復旧優先順位・責任分界)、訓練(テスト)、および技術(バックアップ、レプリケーション、冗長化、切替手段など)をセットで整備します。

なおDRは「復旧」が主目的ですが、結果として被害を広げないための備え(冗長化・バックアップ設計・権限管理など)を含むことも多く、復旧と再発防止の両面から扱われます。

DRの目的

DRの主な目的は、予期しない停止やデータ損失が起きても、経済的損失・信用の低下・法令/契約違反のリスクを抑えつつ、業務を迅速に再開できる状態を作ることです。

そのために、DRではシステムの継続性(可用性)とデータ保全性を高める設計が重要になります。代表的には、予備環境、バックアップ、データ複製(レプリケーション)、冗長ネットワーク、代替手順(手作業運用・縮退運用)などで実現します。

DRと事業継続計画(BCP)の違い

DRとBCPは、どちらも非常時に備える枠組みですが、焦点が異なります。

  • BCP:組織全体の事業継続(人・拠点・取引・サプライチェーン・手順など)を扱う
  • DR:特にITシステムとデータの復旧にフォーカスする

そのため、DRはBCPを実現するための重要な要素(IT領域の実装部分)と位置づけられることが一般的です。BCPが「何を続けるか(業務)」を決めるのに対し、DRは「それを支えるITをどう戻すか」を具体化します。

DRにおけるITシステムの役割

DRでは、データの保管・転送・復元、システムの切替、認証やネットワークの再構成など、中心にあるのはITシステムです。確実なDR計画を作るには、対象システムの棚卸し(構成・依存関係)、バックアップ方式、復旧手順、運用体制を含めた包括的なレビューが欠かせません。

クラウド、オンプレミス、SaaS、拠点ネットワークなど利用形態が多様化するほど、「どこまでを自社が復旧責任として持つのか(責任分界)」を明確にしておくことが重要になります。

システム障害の種類と予防策

ITシステムには、どれほど対策していても障害がゼロになることはありません。だからこそ、障害の種類と影響を理解し、事前に備えることでダウンタイムと被害を最小化できます。

システム障害の原因と種類

システム障害の原因は多岐にわたります。代表例は次の通りです。

  • ハードウェア障害:サーバー故障、ストレージ故障、電源ユニット不具合など
  • ソフトウェア障害:バグ、設定ミス、アップデート失敗、互換性問題など
  • ネットワーク障害:回線断、機器故障、DNS障害、経路障害など
  • 人的要因:誤操作、誤設定、手順漏れ、誤削除など
  • 外部要因:災害(地震・水害)、停電、テナント障害、サイバー攻撃など

どのタイプでも「復旧の優先順位」と「許容できる停止時間/データ損失」を事前に決めておくことが、実際の対応速度を左右します。

システム障害発生時の影響と対策

システム障害の影響は、売上・業務停滞だけでなく、顧客対応の遅延、信用低下、契約違反、法令対応コストなど、複合的に広がります。特に、基幹系や顧客向けサービスは影響範囲が大きく、DRの整備が重要です。

基本方針としては、バックアップの適切な運用(世代管理・復元手順の確立)と、必要に応じた冗長化・切替(フェイルオーバー)の仕組みを整えます。加えて、障害の検知(監視)と初動(連絡・判断・切替)を標準化しておくことで、復旧に至るまでの時間を短縮できます。

ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークの予防策

ハードウェアは、定期点検や予防保守に加え、重要機器の冗長化(電源・NIC・RAIDなど)や、交換部材・保守契約の整備が効果的です。

ソフトウェアは、変更管理(承認・影響評価)、段階的リリース、ロールバック手順、テストの徹底により、障害確率を下げられます。

ネットワークは、回線や機器の冗長化、経路設計、DNS/認証基盤の可用性確保、DDoS対策などが中心になります。加えて、構成情報のドキュメント化(図・設定バックアップ)も復旧速度に直結します。

リスク評価とリスク管理

すべての障害を完全に防ぐことは困難です。そこで重要なのが、リスク評価リスク管理です。

リスク評価では、起こり得る障害を洗い出し、発生確率と影響度(業務停止・損害・信用など)を整理します。リスク管理では、影響の大きいものから順に対策(予防・検知・復旧)を割り当て、手順と責任分担を明確にします。

DRは、このリスク管理の中でも「復旧」の仕組みを具体化する位置づけにあります。

DR計画の策定と実施

障害発生時に短時間で復旧するには、平時のうちにDR計画を作り、運用できる形に落としておく必要があります。DR計画は、災害時の事業継続性を確保し、復旧の道筋(優先順位・体制・手順)を定義するものです。

DR計画策定の基礎

DR計画はBCPと整合した形で策定します。特に、事業目標(止められない業務は何か)と、IT側の現実(復旧に必要な時間とコスト)を擦り合わせ、実行可能な落としどころを作ることが重要です。

また、クラウドやSaaSを利用している場合は、提供者のSLAや復旧範囲を踏まえたうえで、自社のDRとして何を補うべきかを整理します。

重要業務の特定と情報資源の分析

DRでは、すべてのシステムを同じレベルで守るのではなく、重要業務を優先して保護する考え方が基本です。対象業務と、その業務に必要な情報資源(アプリ、DB、認証、ネットワーク、外部連携など)を紐づけ、依存関係も含めて整理します。

ここが曖昧だと、復旧の順番を誤って「システムは戻ったのに業務が回らない」という事態が起こり得ます。

目標復旧時間(RTO)と目標復旧時点(RPO)の定義

次に、RTORPOを定義します。

  • RTO(Recovery Time Objective):停止から復旧までに許容される最大時間(どれだけ早く戻す必要があるか)
  • RPO(Recovery Point Objective):許容できるデータ損失の上限(どの時点までのデータ復旧が必要か)

RTO/RPOは、DR方式(バックアップ間隔、レプリケーション有無、切替方式)とコストを左右します。たとえば、RPOを短くするほど頻繁なバックアップやリアルタイム複製が必要になり、設計と運用の難度も上がります。

データバックアップとリカバリの手順

RTO/RPOを満たすためのバックアップ設計復旧手順を明確にします。具体的には、次のような要素を決めます。

  • バックアップ対象(DB、設定、証明書、鍵情報、ログ、SaaSデータなど)
  • バックアップ方式(フル/差分/増分、スナップショット、レプリケーション)
  • 保管先(別拠点、別アカウント、オフライン保管など)
  • 世代管理と保管期間(ランサムウェア耐性も含めて検討)
  • 復旧手順(順序、担当、所要時間、確認項目)

別地域への保管やクラウド活用は有効ですが、復旧責任の分界・切替手順・検証のしやすさを含めて、実行可能な計画に落とすことが大切です。

DRのテストと検証

DRは「計画を作って終わり」ではありません。期待通りに復旧できるかを確認するテストと検証が不可欠です。テストを通じて、手順の抜け、権限不足、依存関係の見落とし、想定外の所要時間などが初めて顕在化します。

DRテストの重要性

システム停止が短時間でも発生すると、評判・顧客信頼・収益に深刻な影響が出る可能性があります。DRテストは、バックアップからの復元、切替手順、データ整合性の確認、業務再開までの一連の流れが機能することを確かめる手段です。

また、担当者交代や構成変更があるほど、ドキュメントの陳腐化が起きやすくなります。定期的なテストは、計画の鮮度を保つ意味でも重要です。

テスト計画の策定

DRテストでは、目的と範囲を明確にします。たとえば「バックアップからのDB復元まで」「別拠点への切替を含む」「ユーザーがログインできる状態まで」など、到達点を定義します。

テスト計画には、シナリオ(想定する障害)、対象システム、役割分担、手順、評価基準(RTO/RPO達成可否、データ整合性、業務影響)を含めます。

DRテストの実施と結果の評価

テストでは、復旧作業の実績時間、失敗箇所、依存関係の問題、判断の遅れなどを記録し、事実ベースで評価します。特に「復旧できた」だけでなく、どれくらいの時間で、どの品質で、再現性をもって実行できたかが重要です。

可能であれば、机上訓練(Tabletop)→部分復旧テスト→切替訓練(フェイルオーバー)と段階的に強度を上げていくと、運用負荷とリスクを抑えつつ改善できます。

テスト結果に基づくDR計画の見直し

テストで見つかった問題は、手順・体制・技術のいずれに原因があるかを切り分け、計画に反映します。たとえば、手順の追加、権限付与、構成変更、監視強化、連絡フローの修正などです。

DRは一度作ったら固定ではなく、システム変更や体制変更に合わせて更新し続けることで、実際の障害時に機能します。

コストと効率のバランス

DRは事業継続に寄与する一方、設計・構築・運用・テストにコストがかかります。重要なのは「無制限に強化する」ことではなく、リスクとコストのバランスをとって、現実的に運用できる水準を作ることです。

DRのコストと投資効果

DRは高コストになり得る一方で、障害発生時の損失(停止損失、復旧作業、人件費、信用低下)を抑える効果があります。投資対効果は、障害が起きた瞬間に顕在化しやすいため、平時は「保険」に見えがちです。

だからこそ、事業影響度(止まると何が起きるか)を定量・定性で整理し、経営層に説明できる形にすることが重要です。

コスト効率化のための施策

コストを抑える基本は、守るべき範囲を絞ることです。すべてを同じ水準で復旧しようとすると、費用も運用負荷も膨らみます。重要業務・重要データに優先順位を付け、縮退運用(最低限の機能で再開)も選択肢に入れます。

また、クラウド活用で物理冗長化の負担を減らせる場合もありますが、クラウド側の障害やアカウント侵害リスクも踏まえ、多重のバックアップ(別アカウント・別領域・オフライン保管など)を検討すると安全性が上がります。

DRコストと事業規模の関係性

DRコストは、事業規模やシステム規模、そして求めるRTO/RPOに比例して増えます。大規模になるほど損失額も大きくなりやすいため、投資を正当化しやすい一方、設計も複雑化します。

中小規模でも、最低限のDR(バックアップの世代管理、復元手順、連絡網、テスト)を整えることで、致命的な停止を避けられる可能性が高まります。

資金計画と予算化の重要性

DRは「構築費」だけでなく、「運用費(監視・保守)」「テスト費」「更新費(変更追従)」も含めた長期コストで考える必要があります。計画的に予算化し、継続的に改善できる状態にしておくことが、結果的に最も効率的です。

また、DRは直接利益を生みにくい施策のため、リスク(停止損失・信用・法令/契約)を根拠に、投資の必要性を説明できる材料を整えることが重要になります。

DRの今後

デジタル化が進むほど、DRの重要性は高まります。障害は「起きるかどうか」ではなく、「いつ起きてもおかしくない」前提で、復旧力を持つことが求められます。

DRの必要性と課題の変遷

DRの必要性は、データとITシステムへの依存度の増加にともなって拡大してきました。一方で、確実な対策を行うほどコストと運用負荷は増えます。ミッションクリティカル領域では高水準が求められる一方、中小規模では導入・運用の敷居が課題になりやすいのが現実です。

クラウドとDR

クラウド技術の進展はDRに大きな変化をもたらしました。クラウドは冗長化やバックアップの選択肢を増やし、別地域保管や自動化を実現しやすくします。

ただし、クラウドに依存しすぎると、クラウド側の障害や設定ミス、アカウント侵害が企業活動全体に波及する可能性があります。クラウド利用時こそ、責任分界の明確化と、復旧手段の多重化が重要になります。

AIとデータ分析の活用

AIやデータ分析により、障害の予兆検知(異常検知)や自動切替の高度化が進んでいます。たとえば、性能劣化の早期発見、バックアップ失敗の兆候検知、インシデント対応の手順支援など、DR/運用の効率化につながる領域が拡大しています。

一方で、最終的な復旧判断や業務再開判断には、システムの前提理解と体制が必要です。AIを活用しつつも、手順・役割・訓練という基本が土台になります。

サイバーセキュリティとの関連性

近年はサイバー攻撃(特にランサムウェア)を前提にしたDRが重要になっています。攻撃による暗号化や改ざん、アカウント侵害に備えるには、復旧だけでなく「バックアップが破壊されない設計(隔離・世代・権限)」や「侵害範囲の切り分け」が不可欠です。

DRは、データ保護だけでなく、サイバーインシデント後に業務を再開するための現実的な手段として、セキュリティ運用と強く結びついていく領域です。


FAQ(よくある質問)

Q.DRとは何ですか?

DR(Disaster Recovery)は、災害や障害でITシステムが停止した際に、業務に必要な状態へ復旧するための計画と実行プロセスです。

Q.DRとBCPはどう違いますか?

BCPは組織全体の事業継続を扱い、DRはその中でもITシステムとデータの復旧に特化した領域です。

Q.バックアップがあればDRは不要ですか?

不要にはなりません。DRはバックアップに加え、復旧の優先順位、手順、体制、所要時間、検証まで含めて「復旧できる状態」を作る取り組みです。

Q.RTOとRPOは何を意味しますか?

RTOは許容できる停止時間の上限、RPOは許容できるデータ損失の上限です。DR方式とコストを左右する重要指標です。

Q.DR計画は何から着手すべきですか?

重要業務の特定と、その業務に必要なシステム・データの依存関係整理から始め、RTO/RPOを定義して復旧手順に落とし込みます。

Q.DRテストはなぜ必要ですか?

計画が机上の空論になりやすいためです。復旧手順の抜け、権限不足、想定外の所要時間などはテストで初めて見つかることが多くあります。

Q.DRテストにはどんな種類がありますか?

机上訓練(Tabletop)、部分復旧テスト、切替訓練(フェイルオーバー)、実災害を想定したシミュレーションなどが代表的です。

Q.クラウドならDRは簡単になりますか?

選択肢は増えますが、責任分界や設定ミス、アカウント侵害、クラウド側障害のリスクもあります。多重バックアップと検証が重要です。

Q.ランサムウェア対策としてDRで重視すべき点は?

バックアップの隔離・世代管理・権限設計(破壊されない保管)と、侵害範囲を切り分けた復旧手順の整備が重要です。

Q.DRのコストはどう考えるべきですか?

構築費だけでなく運用・テスト・更新費まで含め、停止損失や信用低下、契約・法令リスクを踏まえて、重要度に応じた水準を設計します。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム