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eKYC(electronic Know Your Customer)とは? 10分でわかりやすく解説

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eKYC(electronic Know Your Customer)とは、金融機関や事業者がオンラインで顧客の本人確認(KYC)を行うための仕組み・手続きです。対面や郵送に頼っていた本人確認をデジタル化することで、申込から利用開始までの時間を短縮しつつ、不正利用やマネーロンダリング(資金洗浄)対策の実効性を高めることが期待されています。とはいえ、導入すれば自動的に安全になるわけではありません。法規制への適合、なりすまし対策、個人情報の取り扱い、運用体制まで含めて設計してはじめて、eKYCは「便利さ」と「安全性」を両立できる手段になります。[1][2]

eKYCとは何か?

eKYCは、本人確認書類や顔情報などをデジタルで取り扱い、本人確認をオンライン上で完結させるプロセスです。口座開設や決済、携帯契約、暗号資産取引、各種会員登録など、本人確認が求められる場面で採用が広がっています。

eKYCの定義と概要

eKYCは「本人確認をオンライン化する」だけでなく、本人確認の“確からしさ”をどのように担保するかが要点です。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 利用者が本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)を撮影・アップロードする
  2. 書類画像から、券面情報の読み取り(OCR等)と、偽造・改ざん兆候のチェックを行う
  3. 本人の顔を撮影し、書類の顔写真との一致確認(顔認証)を行う
  4. なりすましを防ぐため、ライブネス(生体)確認など「その場で撮影している」ことの確認を組み込む
  5. 審査・記録を残し、本人確認完了後にサービス提供を開始する

ポイントは、画像処理やAIの有無ではなく、「誰が、どの根拠で、本人であると判断したか」を説明できる設計になっているかです。

eKYCの目的と重要性

eKYCが重視される理由は、大きく3つあります。

  1. 不正取引・マネーロンダリング対策(AML/CFT)の強化
  2. 本人確認業務の効率化(審査時間・人的コストの削減)
  3. 利用者体験の改善(来店不要・短時間で利用開始)

とくにオンラインサービスは「申し込みが簡単」な反面、攻撃者にとっても参入障壁が低くなります。eKYCは、利便性を損ねずに入口の安全性を確保するための要となります。

従来のKYCとeKYCの違い


従来のKYCeKYC
本人確認方法対面/郵送/書面確認オンライン(撮影・送信・照合)
必要書類原本提示/写しの郵送画像データ/電子情報(方式による)
処理時間数日〜数週間になりやすい数分〜数時間(運用設計による)
コスト人手・郵送・店舗運用が中心システム+審査運用(自動化で圧縮可能)

eKYCは「速い・安い」と言われがちですが、実際は不正対策の強度を上げるほど手順が増え、審査も厳格化します。スピードだけを目標にすると、事故や規制対応で手戻りが発生しやすくなります。

導入背景と現状

  • オンライン取引の一般化(金融、EC、サブスク、通信など)
  • AML/CFT(資金洗浄・テロ資金供与対策)をめぐる国際的な要請(リスクベースでの管理が求められる)[2]
  • 非対面ニーズの拡大(手続きの非接触化・迅速化)

日本では、本人確認を要する取引について法令上の枠組みが整理されており、非対面の本人確認方法も制度として位置づけられています。[1]

eKYCの仕組みと流れ

eKYCを構成する要素

eKYCは、いくつかの技術要素の組み合わせで成立します。よく使われる要素は次のとおりです。

  • 本人確認書類の取得:券面撮影、ICチップ読取、電子証明書の活用など
  • 券面真贋チェック:改ざん・偽造の兆候(文字つぶれ、反射、ホログラムの不自然さ等)を検出
  • 顔照合:書類写真と本人撮影画像を比較し一致度を算出
  • ライブネス確認:静止画・動画の使い回し、ディープフェイク等を抑止
  • 審査運用:自動判定だけでなく、グレー判定を人が確認できる体制
  • 証跡管理:本人確認の根拠(データ・判定ログ・オペレーション履歴)を保持

どれか一つが欠けても、本人確認の信頼性は大きく揺らぎます。とくに「例外処理(撮影不備・本人の撮影環境・再提出)」を想定していないと、運用負荷が一気に増えます。

本人確認書類の電子化で起きがちなつまずき

書類の電子化は効率化の核ですが、現場では次のような課題が起きやすいです。

  • 画質不足:ブレ、反射、暗所撮影で文字が読めず再提出が増える
  • 本人確認書類の種類差:券面レイアウトやセキュリティ要素が異なり、判定ロジックが複雑になる
  • 利用者の撮影リテラシー:高齢者や非IT層では案内設計が成否を分ける

そのため、単に「アップロードしてください」と促すのではなく、撮影ガイド・自動品質チェック(再撮影誘導)・ヘルプ導線まで含めて設計することが重要です。

AIやOCRによる自動化の位置づけ

AIやOCRは、eKYCを支える有力な手段ですが、万能ではありません。期待値を適切に置くと、設計が安定します。

  • OCRは「入力補助」として有効だが、読み取り誤り前提で照合・補正フローを持つ必要がある
  • 顔認証は一致度(スコア)で判断するため、閾値設計(厳しすぎると離脱、緩いと不正)を詰める必要がある
  • 自動判定だけに寄せず、人手審査の介在点(グレー処理、例外承認)を最初から設ける

「自動化=人が不要」ではなく、人が判断すべきケースを減らすのが現実的なゴールです。

ブロックチェーン活用は“万能薬”ではない

eKYCでブロックチェーンが話題になることがありますが、誤解しやすい点があります。ブロックチェーンは改ざん耐性のある記録方式として有効な場合がある一方で、本人確認そのもの(真贋判定やなりすまし対策)を自動的に解決するわけではありません。

もし活用するなら、「誰が、いつ、どの根拠で確認したか」という証跡の保持など、限定的な目的で適用範囲を定めることが現実的です。個人情報をどこまで載せるか、削除要請にどう応えるか(プライバシー規制との整合)も含め、慎重な設計が必要になります。

eKYCのメリットとデメリット

事業者側のメリット

  • 審査の迅速化(申込〜利用開始までのリードタイム短縮)
  • 業務効率化(店舗・郵送・入力確認の負荷を低減)
  • 不正対策の高度化(書類チェック+顔照合+ライブネス等を組み合わせられる)
  • 証跡の整備(監査・調査への説明材料が残しやすい)

ただし、効果は「導入したこと」ではなく、運用が回り、精度が維持されることで初めて出ます。

利用者側のメリット

  • 来店不要・短時間で手続きできる
  • 営業時間に縛られにくい(夜間・休日でも申込可能)
  • 再提出や問い合わせが減れば、体感が大きく改善する

一方で、撮影環境やスマホ操作に左右されるため、うまく進まない人を救う導線がないと満足度は下がりやすくなります。

導入に伴う課題と対策

  • なりすまし:ディープフェイク、写真のかざし、盗難書類などを想定し、ライブネスや複合判定を用意
  • 誤判定:本人なのに落ちる(False Negative)を減らすため、再提出・有人確認・代替手段を設計
  • 運用負荷:グレー案件が集中する時間帯、問い合わせ増を見込み、体制とSLAを決める
  • 個人情報保護:暗号化、アクセス制御、保管期間、委託先管理、ログ監査を具体化
  • 規制対応:要求される本人確認水準・記録・本人特定事項の確認方法を理解し、要件に落とす[1]

「ベンダーを入れれば終わり」になりがちですが、実態は逆です。自社のリスク許容度と顧客層に合わせて、手順・閾値・例外対応・保管・監査を決めることがeKYCの本番です。

法的位置づけと規制対応の考え方

eKYCは利便性の議論だけでなく、法令・ガイドラインに沿った設計が不可欠です。とくにAML/CFTの文脈では、本人確認は「入口」であり、取引監視や継続的顧客管理とセットで考える必要があります。

国際的な観点:リスクベースで設計する

FATFの基準は、画一的な手続きよりも、リスクに応じて管理を強めたり緩めたりする「リスクベース・アプローチ」を重視します。[2] eKYCでも同様に、たとえば次のような設計判断が現実的になります。

  • 取引額や商品特性が高リスクなら、本人確認を強化(追加書類、審査強化、有人確認の比率を上げる)
  • 低リスクの範囲では、手続きの負担を抑えつつ、監視と再確認で補う

日本の観点:非対面本人確認の方式を要件に落とす

日本では、本人確認が求められる取引について、非対面での本人確認方法が整理されています。[1] 実務では「どの方式で確認するか」によって、必要なデータ、UI、審査運用、証跡の取り方が変わります。

重要なのは、法令文を暗記することではなく、自社の取引形態とリスクに対して、要件を満たす実装・運用に落とし込むことです。要件はプロダクトだけでなく、社内の審査フロー・監査対応・委託先管理まで影響します。

eKYC導入・運用のチェックポイント

1) 入口(本人確認)だけで終わらせない

eKYCは本人確認の手段ですが、AML/CFTの観点では「入口」だけでは不十分です。本人確認後の取引モニタリング、疑わしい取引の検知、再確認(リフレッシュ)まで含めて、全体像として整合する必要があります。

2) 例外対応を最初に設計する

現場で最も詰まりやすいのは、撮影不備・読み取り失敗・本人の撮影環境不良です。再撮影→再提出→有人確認→代替手段のように、分岐の“逃げ道”を先に決めておくと、離脱と問い合わせが減ります。

3) 閾値(合否ライン)を「仮置き」で終えない

顔照合や真贋判定はスコア設計が肝です。最初は仮置きでも構いませんが、導入後に誤判定率・離脱率・不正検知率を見ながら、継続的に閾値と運用を調整できる体制を作ることが重要です。

4) 個人情報の取り扱いを“説明できる”形にする

本人確認書類画像や顔情報は機微なデータです。保管期間、利用目的、アクセス権、委託先、削除手続き、インシデント時の対応まで、社内外に説明できる形に整備しておくことが信頼につながります。

まとめ

eKYCは、オンラインでの本人確認を実現し、利便性と安全性の両立を目指す重要な仕組みです。ただし、導入すれば自動的に安全になるわけではなく、なりすまし対策、誤判定への備え、個人情報保護、証跡管理、規制対応などを含めた運用設計が成功の分かれ目になります。自社の取引形態とリスクに合わせて、方式・フロー・体制を具体化し、「なぜその判断になるのか」を説明できるeKYCを構築していきましょう。[1][2]

FAQ

Q.eKYCとKYCの違いは何ですか?

KYCは本人確認全般の考え方で、eKYCはオンラインで本人確認を完結させる具体的な手続きや仕組みを指します。

Q.eKYCは導入すれば不正を防げますか?

防止に役立ちますが、万能ではありません。ライブネスや審査運用、取引監視まで含めた設計が必要です。

Q.eKYCでよく使われる本人確認書類は何ですか?

運転免許証やマイナンバーカードなどが代表的で、サービスの要件により利用できる書類は異なります。

Q.OCRは必須ですか?

必須ではありませんが、入力補助として有効です。読み取り誤り前提で照合・補正フローを設計することが重要です。

Q.顔認証の精度はどれくらい信頼できますか?

環境や条件で変動します。閾値設計と有人確認の分岐を用意し、運用データで継続的に最適化することが前提です。

Q.ディープフェイク対策は必要ですか?

必要です。ライブネス確認や複合判定など、静止画・動画の使い回しを前提とした対策が求められます。

Q.誤判定(本人なのに落ちる)への対策は?

再提出導線、撮影ガイド、有人確認、代替手段を用意し、離脱と問い合わせを抑える設計にします。

Q.個人情報保護で特に注意すべき点は?

暗号化、アクセス制御、保管期間、委託先管理、監査ログの整備を具体化し、説明できる状態にすることです。

Q.eKYCは金融以外でも使えますか?

使えます。通信、EC、暗号資産、各種会員サービスなど、本人確認が必要な業務で活用が進んでいます。

Q.eKYC導入でまず決めるべきことは何ですか?

自社のリスクと取引形態に対して、どの本人確認方式を採用し、例外対応と証跡管理をどう回すかを最初に決めます。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム