ウェブサイトが突然重くなったり、つながりにくくなったりする原因はさまざまですが、代表的なもののひとつが「大量のアクセスで処理能力を使い切らせる」タイプの攻撃です。いわゆるF5アタックは、その中でもページの再読み込みを短時間に繰り返して負荷をかけるイメージで語られることが多い攻撃です。この記事では、仕組み・見分け方・実務的な対策までを整理し、読了後に「自社の構成なら何から手を付けるべきか」を判断できる状態を目指します。
F5アタックとは、WebサイトやWebアプリケーションに対して短時間に大量のHTTPリクエストを発生させ、サーバーやネットワーク、アプリケーションの処理資源を枯渇させてサービスの応答を遅くしたり停止させたりすることを狙う攻撃の俗称です。名称は、ブラウザで再読み込み(リロード)を行うキー操作(F5キー連打)に由来します。
実態としては、Webアプリケーション層を狙うHTTPフラッド(HTTP flood)に近い挙動です。HTTPフラッドは、正規ユーザーと同じように見えるHTTP GET/POST等のリクエストを大量に送りつけ、オリジンサーバー側のCPU・メモリ・スレッド・DB接続・外部API呼び出しなどを消費させます。いわば「大量の“普通のアクセス”で処理を詰まらせる」タイプのDDoS/DoSです。
また、攻撃者はIPアドレスを分散させたり、User-Agentやヘッダを変化させたり、リファラやCookieの有無を混ぜたりして、単純な遮断をすり抜けようとします。
F5アタック(HTTPフラッド)で起きがちな影響は、次のように整理できます。
| 被害の種類 | 起こりやすい現象 | 実務上の困りごと |
|---|---|---|
| 可用性低下 | 表示が遅い、タイムアウト、500系エラー増加 | 問い合わせ増、運用負荷増、機会損失 |
| アプリ資源の枯渇 | CPU高騰、DB接続上限、スレッド枯渇 | 「原因不明の障害」に見えやすい |
| 周辺システムへの波及 | 決済・検索・外部APIが連鎖的に遅延 | 復旧しても“後処理”が残る |
| 信頼・収益への影響 | 離脱増、CVR低下、ブランド毀損 | 金額換算しづらい損失が大きい |
用語は混同されやすいのですが、整理すると次の通りです。
つまり、「F5アタック=必ずDDoS」というより、HTTPリクエストの洪水でサービスを重くする現象を、わかりやすく呼んだ言い方だと捉えるのが安全です。
HTTPフラッド系は「普通のアクセスが増えただけ」に見えやすいため、“どこが増えているか”を切り分けるのが実務の要です。
ここが見えてくると、対策を「遮断」か「緩和(重くならない設計)」かに分岐できます。
対策は大きく、入口(エッジ)で止める、オリジンに届いても耐える、運用で素早く収束させるの3層で考えると抜けが減ります。
HTTPフラッドは「正規っぽい」ので、まずはオリジンに届く前にさばく設計が有効です。
レート制限の応答にはHTTP 429(Too Many Requests)を返し、必要に応じてRetry-Afterで待機時間を示す、といった実装が一般的です。
HTTPフラッドで効かれやすいのは「動的で重い処理」です。根本的には、ここを守れると強いです。
攻撃はゼロにはできないため、“起きたときに短時間で収束させる”運用が重要です。
すべてを同じ強度で守ろうとすると、UXとコストが破綻しやすいです。まずは攻撃されると致命的なURL(ログイン、検索、購入導線、APIの高コスト処理)を列挙し、そこだけ防御を厚くします。
IP分散(プロキシ/ボット)をされると、IP単位の制限だけでは追い付かないことがあります。可能なら、ユーザーID・APIキー・セッション・トークンなど、より実態に近い単位でも制限できる設計を検討します。
攻撃時に全部の機能を守るのは難しい場合があります。だからこそ、重要機能を残し、非重要機能を止める縮退(Graceful Degradation)や、短TTLキャッシュで“連打”を吸収する設計が効きます。
F5アタックは、リロード連打に由来する俗称で語られることが多いものの、実態はHTTPフラッドのように大量のHTTPリクエストでアプリやサーバーの処理資源を枯渇させるタイプの攻撃として理解するのが実務的です。対策は、CDN/WAFなどエッジでの遮断・緩和、オリジン保護とスケール設計、アプリの高コスト処理の軽量化、そしてインシデント対応手順の整備を組み合わせるのが基本です。自社の構成に合わせて「どのURLを守るか」「どこで止めるか」「落ち方をどうするか」を先に決めると、実装と運用が現実的になります。
攻撃が分散していればDDoSになり得ますが、少数の送信元でも同様の現象は起きるため「必ずDDoS」とは限りません。
小規模サイトや重い処理が多い場合は手動でも影響が出ますが、実際には自動化ツールで増幅されるケースも多いです。
帯域が余っていても、アプリやDBなど処理資源が先に枯渇すると遅延や停止が起きます。
検索・ログイン・動的生成ページ・外部API依存・DB負荷が高いAPIなど、1回の処理が重いURLが狙われやすいです。
IP分散されると効果が落ちるため、可能ならユーザーID・APIキー・セッション単位の制限も併用します。
有効です。オリジンに届く前にキャッシュ・遮断・レート制限を行えるため、HTTPフラッド系に特に効果が出やすいです。
増えているURLと送信元分布を確認し、WAF/レート制限の強化や高コスト機能の一時停止など一次対応で影響を抑えます。
有効です。過剰なリクエストを抑制する意図を明確にでき、必要に応じて待機時間も示せます。
高コスト処理の軽量化、キャッシュ設計、早期リジェクト、縮退設計により、少ない攻撃でも落ちにくい構造にできます。
守るべきURLの優先度付け、監視とアラート、WAF/レート制限の運用手順、オリジン保護、障害時の周知テンプレを整備します。