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特性要因図とは? 10分でわかりやすく解説

水色の背景に六角形が2つあるイラスト 水色の背景に六角形が2つあるイラスト
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UnsplashPatrick Bellotが撮影した写真      

製品やサービスの品質向上に取り組む際、どこから手を付ければよいか迷ってしまうことはないでしょうか。クレームや不良は目の前にあるものの、その原因は人・設備・手順・環境などが絡み合っており、直感や経験だけでは整理しきれないことも少なくありません。

この記事では、品質管理の強力なツールである「特性要因図」について、その基本的な概念から具体的な作成手順、現場での活用方法までをわかりやすく解説します。特性要因図を使いこなすことで、品質問題の「見える化」が進み、原因分析や対策立案の精度を高めることができます。

特性要因図とは何か?わかりやすく解説

特性要因図は、品質に影響を与える要因を体系的に洗い出し、整理するための図表です。魚の骨のような形をしていることから「フィッシュボーン図」、提唱者である石川馨氏の名前から「石川図」とも呼ばれます。

特性要因図の定義と目的

特性要因図とは、製品やサービスの品質特性(問題・結果)に影響を与える要因を、「大骨(主要因)」「中骨(中間要因)」「小骨(小要因)」に分けて整理し、図式化したものです。

右端に「結果(特性)」を置き、左側から結果に向かって大きな矢印(骨)を伸ばし、その上に原因候補を書き込んでいくことで、次のような目的を達成できます。

  • 品質問題の原因を体系的に洗い出す
  • 要因間の関係性を「ひと目で」把握する
  • 見落としていた原因候補に気づく
  • 対策の優先順位を検討しやすくする

単に「思いついた原因を箇条書きにする」のではなく、図に落とし込むことで、チーム全体で同じ問題認識・原因認識を共有しやすくなる点が特性要因図の大きな特徴です。

特性要因図が必要な理由

製品やサービスの品質問題は、単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発生していることが大半です。感覚的に「このあたりが怪しい」と当たりをつけるだけでは、根本原因までたどり着けない場合があります。

そこで役立つのが特性要因図です。特性要因図を用いることで、品質に影響を与える要因を体系的に整理し、問題の全体像を俯瞰的に捉えることができます。結果として、次のような効果が期待できます。

  • 思い込みや先入観を排した原因分析ができる
  • 「人のせい」「設備のせい」といった感覚的な議論を避けられる
  • 限られた改善リソースを、重点的に投下すべき箇所に絞り込みやすくなる

特性要因図を活用するメリット

特性要因図を活用するメリットは以下の通りです。

  1. 品質問題の原因を体系的に整理・分析できる
  2. 問題の全体像を俯瞰的に捉えられる
  3. 根本原因の見落としを防ぐことができる
  4. 適切な対策立案に役立ち、ムダな対策を減らせる
  5. チーム内でのコミュニケーションや共通認識の形成を促進できる

特に、部門横断で品質改善に取り組む場面では、「誰が」「どの視点で」原因を考えているかを共有しやすくなり、議論の土台として活用しやすいツールです。

特性要因図と他の品質管理手法との違い

特性要因図は、品質管理における代表的な「7つ道具」のひとつです。ほかの代表的な手法との違いを整理すると、位置づけがより明確になります。

手法主な目的・特徴
特性要因図品質特性(結果)に影響を与える要因を体系的に整理・分析し、原因候補を洗い出す。
パレート図問題の種類ごとの発生頻度や影響度をグラフで示し、「どの問題から手を付けるべきか」を判断する。
管理図工程の状態を継続的に監視し、統計的に「異常かどうか」を判断する。
ヒストグラムデータの分布状態(ばらつき)を視覚的に表現し、工程能力や偏りの有無を確認する。

特性要因図は、特に「なぜこの不良が起こっているのか」「どんな要因が絡んでいるのか」を整理するための原因分析ツールです。パレート図などで「どの問題を優先して改善するか」を決めた後、その問題の原因を掘り下げる際に使うと効果的です。

特性要因図の基本的な構造と作成方法

特性要因図の基本的な構造

特性要因図は、大きく分けて以下の4つの要素で構成されています。

  1. 特性(品質特性):分析対象となる製品やサービスの品質特性(例:不良率、納期遅延率、問い合わせ件数など)を示します。
  2. 大骨(主要因):品質特性に直接影響を与える大きな要因のグループです。製造業では「人・機械・材料・方法・環境(いわゆる4M+E)」などで分類するのが一般的です。
  3. 中骨(中間要因):大骨から派生する中間的な要因を表します。たとえば「人」の大骨から「教育・訓練」「コミュニケーション」などが中骨として出てきます。
  4. 小骨(小要因):中骨からさらに細分化された、小さな要因を表します。具体的な作業ミスの種類や、設備名、手順名などが該当します。

これらの要素を魚の骨の形に配置することで、品質特性と影響要因の関係性を視覚的に整理することができます。

特性要因図の作成手順

特性要因図の一般的な作成手順は以下の通りです。

  1. テーマの設定:まず、分析対象とする品質問題・品質特性を明確にします(例:「不良品発生率の低減」「発送ミスの削減」など)。
  2. 特性の記入:図の右端に、設定したテーマ(品質特性)を四角で囲んで記入します。
  3. 主要因の列挙:品質特性に直接影響を与える大きな要因を「大骨」として左右から伸ばし、ラベルを付けます(人・機械・材料・方法・環境など)。
  4. 中間要因の列挙:各大骨から枝分かれする形で、中間的な要因を「中骨」として書き出します。
  5. 小要因の列挙:中骨からさらに細かく分岐させて、小さな要因(具体的な事象や条件)を「小骨」として記入します。
  6. 要因の確認:列挙した要因に漏れや重複がないか確認し、整理・統合します。

この手順に従って特性要因図を作成することで、品質特性に影響を与える要因を体系的に整理することができます。最初から完璧を目指すのではなく、議論を重ねながら何度か書き直す前提で取り組むとよいでしょう。

特性要因図作成時の注意点

特性要因図を作成する際は、以下の点に注意することが大切です。

  • 現場の意見を必ず取り入れる:管理部門だけで作ると、実態とズレた図になりやすくなります。
  • 要因の分類は論理的かつ網羅的に:似た要因はまとめ、別の大骨に属すべき要因は移動させるなど、整理しながら進めます。
  • 事実ベースで書く:「多分〜だろう」という仮説だけでなく、データや実績、現場ヒアリングに基づいた要因を優先します。
  • 特性要因図はあくまで仮説:図に書いた要因がすべて「本当の原因」とは限りません。後工程で検証することを前提に扱います。

これらの点に留意しながら特性要因図を作成することで、品質問題の原因分析と対策立案により実務的な形で役立てることができます。

特性要因図の具体的な作成例

ここでは、製造業における「不良品発生率の低減」を目的とした特性要因図の作成例を簡単に紹介します。

  1. テーマの設定:不良品発生率の低減
  2. 特性の記入:右端に「不良品発生率の高さ」と記入
  3. 主要因の列挙:人、機械、材料、方法、環境の5つを大骨として設定
  4. 中間要因の列挙:
    • 人:教育・訓練、作業手順の理解、疲労
    • 機械:メンテナンス状況、設備の老朽化、設定値
    • 材料:ロット間のばらつき、保管状況
    • 方法:作業標準書の内容、検査手順の明確さ
    • 環境:温度・湿度、照度、騒音
  5. 小要因の列挙:
    • 教育・訓練:新人教育の時間不足、OJT の質のばらつき
    • メンテナンス:定期点検の未実施、消耗部品の交換遅れ
    • 材料品質:受入検査項目の不足、仕入先管理基準の曖昧さ

このように、不良品発生率に影響を与える要因を大骨・中骨・小骨に分けて整理していくことで、どの領域から対策を始めるべきかが見えやすくなります。

特性要因図の活用方法とコツ

特性要因図を活用する際の基本的なアプローチ

特性要因図を実務で活用する際の基本的な流れは次の通りです。

  1. 問題の明確化:分析対象とする品質問題を具体的に定義し、目標値や期限を決めます。
  2. チームの編成:設計・製造・品質保証・営業など、問題に関係する部門からメンバーを集めます。
  3. 要因の抽出:現場の意見やデータをもとに、品質特性に影響を与える要因を洗い出します。
  4. 要因の分類:抽出した要因を大骨・中骨・小骨に整理し、特性要因図を作成します。
  5. 要因の検証:データ分析や現場調査を通じて、列挙した要因の妥当性を検証します。
  6. 対策の立案:特性要因図を基に、品質問題の解決に向けた具体的な対策を検討します。
  7. 対策の実施と評価:対策を実行し、効果をデータで評価します。
  8. フォローアップ:効果が十分でない場合は、要因の見直しや追加対策を行い、継続的に改善します。

このアプローチに従って特性要因図を活用することで、問題の洗い出しから対策の実施・評価までを一貫した流れで進めることができます。

問題解決に特性要因図を効果的に活用するコツ

特性要因図を問題解決に活用する際のコツを、いくつか紹介します。

  • 問題の定義に時間をかける:「何が問題なのか」が曖昧なまま特性要因図を描くと、議論が散漫になりがちです。
  • 多様なメンバーで議論する:開発側だけでなく、営業・サポート・現場オペレーターなど、異なる立場のメンバーを含めると要因の抜け漏れが減ります。
  • 「なぜ?」を繰り返す:中骨・小骨を増やす際には、「なぜそうなるのか?」を何度か繰り返して掘り下げます(いわゆる「なぜなぜ分析」と併用)。
  • データで裏付けする:特性要因図はあくまで仮説の整理です。優先度を決める際は、実データや現場観察で検証します。
  • 他の手法と組み合わせる:パレート図や管理図などと併用することで、より客観的な改善活動につなげられます。

これらのコツを意識しながら特性要因図を活用することで、品質問題の解決に向けた取り組みを、より効果的かつ再現性の高いものにできます。

特性要因図を活用した継続的改善の進め方

特性要因図は、一度作って終わりの資料ではなく、継続的改善(いわゆる PDCA サイクル)を回すためのベースとしても活用できます。

  1. テーマの選定:改善すべき品質問題を選定し、テーマを設定する。
  2. 特性要因図の作成:テーマに対する特性要因図を作成し、原因候補を網羅的に洗い出す。
  3. 要因の分析:データや現場観察を通じて、重要度の高い要因を絞り込む。
  4. 改善策の立案:重点要因に対する具体的な改善策を検討する。
  5. 改善策の実施:実務に落とし込み、現場で実行する。
  6. 効果の確認:改善前後の指標を比較し、効果を確認する。
  7. 標準化:効果が確認できた改善内容を手順書や教育に反映し、標準化する。
  8. 次のテーマへ:新たな改善テーマを選定し、再びサイクルを回す。

この一連のプロセスを繰り返すことで、品質の継続的な向上と、組織としての問題解決能力の向上を同時に実現できます。特性要因図は、このサイクルの中で「Plan(計画)」の質を高めるためのツールと位置づけるとよいでしょう。

特性要因図活用の成功事例(イメージ)

たとえば、ある電子部品メーカーでは、特定製品の不良率が高く、クレームが増加していました。品質管理部門を中心に、設計・生産技術・製造のメンバーを集め、特性要因図を用いた原因分析を実施しました。

特性要因図を作成・分析した結果、以下のような要因が浮かび上がりました。

  • 作業者ごとに作業手順の理解度に差がある
  • 一部設備のメンテナンス周期が長く、微妙な寸法ズレが発生している
  • 特定仕入先からの部品ロットで品質のばらつきが大きい

これらを踏まえて、

  • 作業標準書の見直しと教育・訓練の強化
  • 設備メンテナンス周期の短縮と点検項目の追加
  • 仕入先監査と受入検査基準の見直し

といった改善策を実施したところ、不良率は大きく低減し、クレーム件数も減少しました。以降、同社では新製品立ち上げや工程変更時にも特性要因図を標準的に活用するようになり、トラブル発生時の対応スピードも向上したといいます。

まとめ

特性要因図は、品質問題の原因を体系的に分析し、効果的な改善策を立案・実施するための強力なツールです。製品やサービスの品質向上を目指す企業にとって、特性要因図の理解と活用は非常に重要です。

特性要因図を用いることで、品質に影響を与える要因を論理的に整理し、問題の全体像を俯瞰的に捉えることができます。また、現場の意見を取り入れながら要因を抽出し、対策の優先順位を明確にすることで、品質改善活動を効果的に進めることができます。

「なんとなく原因を議論する」段階から一歩進み、特性要因図を活用した構造的な原因分析に取り組むことで、品質問題の再発防止や、組織としての問題解決力の強化につながっていくでしょう。

Q.特性要因図とはどのようなツールですか?

特性要因図は、品質特性(結果)に影響を与える要因を「大骨・中骨・小骨」に整理し、魚の骨のような形で図示する原因分析ツールです。品質問題の原因候補を体系的に洗い出すために用いられます。

Q.特性要因図はどんな場面で活用できますか?

製造現場の不良解析だけでなく、サービス業のクレーム分析やシステム障害の要因整理、業務プロセス改善など、原因が複数絡み合うあらゆる場面で活用できます。

Q.特性要因図を作成する際の大骨はどのように決めればよいですか?

製造業では一般的に「人・機械・材料・方法・環境(4M+E)」を用います。サービス業や事務部門では「人・仕組み・情報・設備・外部要因」など、自社の業務に合わせて大骨の切り口を設計するとよいでしょう。

Q.特性要因図の作成にはどれくらい時間がかかりますか?

テーマの規模や関係者の人数にもよりますが、1回のワークショップで1〜2時間程度かけて骨組みを作成し、その後の検証や修正を含めて数回に分けてブラッシュアップするケースが一般的です。

Q.特性要因図を作るときに注意すべき点は何ですか?

個人の思い込みや印象だけで要因を書かず、現場の意見やデータをもとに議論することが重要です。また、原因のレベルがバラバラにならないように、大骨・中骨・小骨の粒度を意識して整理することもポイントです。

Q.特性要因図だけで原因を特定できますか?

特性要因図は原因候補を整理するための「仮説リスト」です。実際の原因特定には、データ分析や現場観察、追加調査などを行い、仮説を検証するプロセスが必要です。

Q.特性要因図とパレート図はどのように使い分ければよいですか?

パレート図は「どの問題を優先して改善するか」を決めるために使い、特性要因図は「選んだ問題の原因を掘り下げる」ために使うのが基本的な使い分け方です。両者を組み合わせることで、より効果的な改善活動になります。

Q.ITサービスやシステム開発でも特性要因図は役立ちますか?

はい、役立ちます。システム障害やレスポンス低下、問い合わせ増加などの要因を「人・プロセス・システム・外部要因」などに分けて整理することで、改善の方向性を見つけやすくなります。

Q.特性要因図はどのようなツールで作成するのがよいですか?

紙とペン、ホワイトボードでも作成できますが、会議後の共有や修正を考えると、Excel・PowerPoint・オンラインホワイトボードツールなどを併用すると便利です。まずは手書きで議論し、その後ツールに整理して残す方法も有効です。

Q.特性要因図を初めて使う場合、どこから始めればよいですか?

まずは一つのテーマを絞り、小規模なチームで簡単な特性要因図を作ってみるのがおすすめです。完璧を目指し過ぎず、「原因の見える化」を体感しながら、徐々に自社なりの使い方を整えていくとスムーズです。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム