UnsplashのPatrick Bellotが撮影した写真
製品やサービスの品質向上に取り組む際、どこから手を付ければよいか迷ってしまうことはないでしょうか。クレームや不良は目の前にあるものの、その原因は人・設備・手順・環境などが絡み合っており、直感や経験だけでは整理しきれないことも少なくありません。
この記事では、品質管理の強力なツールである「特性要因図」について、その基本的な概念から具体的な作成手順、現場での活用方法までをわかりやすく解説します。特性要因図を使いこなすことで、品質問題の「見える化」が進み、原因分析や対策立案の精度を高めることができます。
特性要因図は、品質に影響を与える要因を体系的に洗い出し、整理するための図表です。魚の骨のような形をしていることから「フィッシュボーン図」、提唱者である石川馨氏の名前から「石川図」とも呼ばれます。
特性要因図とは、製品やサービスの品質特性(問題・結果)に影響を与える要因を、「大骨(主要因)」「中骨(中間要因)」「小骨(小要因)」に分けて整理し、図式化したものです。
右端に「結果(特性)」を置き、左側から結果に向かって大きな矢印(骨)を伸ばし、その上に原因候補を書き込んでいくことで、次のような目的を達成できます。
単に「思いついた原因を箇条書きにする」のではなく、図に落とし込むことで、チーム全体で同じ問題認識・原因認識を共有しやすくなる点が特性要因図の大きな特徴です。
製品やサービスの品質問題は、単一の原因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発生していることが大半です。感覚的に「このあたりが怪しい」と当たりをつけるだけでは、根本原因までたどり着けない場合があります。
そこで役立つのが特性要因図です。特性要因図を用いることで、品質に影響を与える要因を体系的に整理し、問題の全体像を俯瞰的に捉えることができます。結果として、次のような効果が期待できます。
特性要因図を活用するメリットは以下の通りです。
特に、部門横断で品質改善に取り組む場面では、「誰が」「どの視点で」原因を考えているかを共有しやすくなり、議論の土台として活用しやすいツールです。
特性要因図は、品質管理における代表的な「7つ道具」のひとつです。ほかの代表的な手法との違いを整理すると、位置づけがより明確になります。
| 手法 | 主な目的・特徴 |
|---|---|
| 特性要因図 | 品質特性(結果)に影響を与える要因を体系的に整理・分析し、原因候補を洗い出す。 |
| パレート図 | 問題の種類ごとの発生頻度や影響度をグラフで示し、「どの問題から手を付けるべきか」を判断する。 |
| 管理図 | 工程の状態を継続的に監視し、統計的に「異常かどうか」を判断する。 |
| ヒストグラム | データの分布状態(ばらつき)を視覚的に表現し、工程能力や偏りの有無を確認する。 |
特性要因図は、特に「なぜこの不良が起こっているのか」「どんな要因が絡んでいるのか」を整理するための原因分析ツールです。パレート図などで「どの問題を優先して改善するか」を決めた後、その問題の原因を掘り下げる際に使うと効果的です。
特性要因図は、大きく分けて以下の4つの要素で構成されています。
これらの要素を魚の骨の形に配置することで、品質特性と影響要因の関係性を視覚的に整理することができます。
特性要因図の一般的な作成手順は以下の通りです。
この手順に従って特性要因図を作成することで、品質特性に影響を与える要因を体系的に整理することができます。最初から完璧を目指すのではなく、議論を重ねながら何度か書き直す前提で取り組むとよいでしょう。
特性要因図を作成する際は、以下の点に注意することが大切です。
これらの点に留意しながら特性要因図を作成することで、品質問題の原因分析と対策立案により実務的な形で役立てることができます。
ここでは、製造業における「不良品発生率の低減」を目的とした特性要因図の作成例を簡単に紹介します。
このように、不良品発生率に影響を与える要因を大骨・中骨・小骨に分けて整理していくことで、どの領域から対策を始めるべきかが見えやすくなります。
特性要因図を実務で活用する際の基本的な流れは次の通りです。
このアプローチに従って特性要因図を活用することで、問題の洗い出しから対策の実施・評価までを一貫した流れで進めることができます。
特性要因図を問題解決に活用する際のコツを、いくつか紹介します。
これらのコツを意識しながら特性要因図を活用することで、品質問題の解決に向けた取り組みを、より効果的かつ再現性の高いものにできます。
特性要因図は、一度作って終わりの資料ではなく、継続的改善(いわゆる PDCA サイクル)を回すためのベースとしても活用できます。
この一連のプロセスを繰り返すことで、品質の継続的な向上と、組織としての問題解決能力の向上を同時に実現できます。特性要因図は、このサイクルの中で「Plan(計画)」の質を高めるためのツールと位置づけるとよいでしょう。
たとえば、ある電子部品メーカーでは、特定製品の不良率が高く、クレームが増加していました。品質管理部門を中心に、設計・生産技術・製造のメンバーを集め、特性要因図を用いた原因分析を実施しました。
特性要因図を作成・分析した結果、以下のような要因が浮かび上がりました。
これらを踏まえて、
といった改善策を実施したところ、不良率は大きく低減し、クレーム件数も減少しました。以降、同社では新製品立ち上げや工程変更時にも特性要因図を標準的に活用するようになり、トラブル発生時の対応スピードも向上したといいます。
特性要因図は、品質問題の原因を体系的に分析し、効果的な改善策を立案・実施するための強力なツールです。製品やサービスの品質向上を目指す企業にとって、特性要因図の理解と活用は非常に重要です。
特性要因図を用いることで、品質に影響を与える要因を論理的に整理し、問題の全体像を俯瞰的に捉えることができます。また、現場の意見を取り入れながら要因を抽出し、対策の優先順位を明確にすることで、品質改善活動を効果的に進めることができます。
「なんとなく原因を議論する」段階から一歩進み、特性要因図を活用した構造的な原因分析に取り組むことで、品質問題の再発防止や、組織としての問題解決力の強化につながっていくでしょう。
特性要因図は、品質特性(結果)に影響を与える要因を「大骨・中骨・小骨」に整理し、魚の骨のような形で図示する原因分析ツールです。品質問題の原因候補を体系的に洗い出すために用いられます。
製造現場の不良解析だけでなく、サービス業のクレーム分析やシステム障害の要因整理、業務プロセス改善など、原因が複数絡み合うあらゆる場面で活用できます。
製造業では一般的に「人・機械・材料・方法・環境(4M+E)」を用います。サービス業や事務部門では「人・仕組み・情報・設備・外部要因」など、自社の業務に合わせて大骨の切り口を設計するとよいでしょう。
テーマの規模や関係者の人数にもよりますが、1回のワークショップで1〜2時間程度かけて骨組みを作成し、その後の検証や修正を含めて数回に分けてブラッシュアップするケースが一般的です。
個人の思い込みや印象だけで要因を書かず、現場の意見やデータをもとに議論することが重要です。また、原因のレベルがバラバラにならないように、大骨・中骨・小骨の粒度を意識して整理することもポイントです。
特性要因図は原因候補を整理するための「仮説リスト」です。実際の原因特定には、データ分析や現場観察、追加調査などを行い、仮説を検証するプロセスが必要です。
パレート図は「どの問題を優先して改善するか」を決めるために使い、特性要因図は「選んだ問題の原因を掘り下げる」ために使うのが基本的な使い分け方です。両者を組み合わせることで、より効果的な改善活動になります。
はい、役立ちます。システム障害やレスポンス低下、問い合わせ増加などの要因を「人・プロセス・システム・外部要因」などに分けて整理することで、改善の方向性を見つけやすくなります。
紙とペン、ホワイトボードでも作成できますが、会議後の共有や修正を考えると、Excel・PowerPoint・オンラインホワイトボードツールなどを併用すると便利です。まずは手書きで議論し、その後ツールに整理して残す方法も有効です。
まずは一つのテーマを絞り、小規模なチームで簡単な特性要因図を作ってみるのがおすすめです。完璧を目指し過ぎず、「原因の見える化」を体感しながら、徐々に自社なりの使い方を整えていくとスムーズです。