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不正のトライアングルとは? わかりやすく10分で解説

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目次

不正のトライアングルの概念の導入

不正のトライアングルとは何か

不正のトライアングルとは、不正行為を行う際に三つの要素が揃うとされる理論的なモデルです。抽象的な概念ではありますが、不正行為の背後にある要素を分析し、予防策をたてる際に非常に有効なツールとなります。

具体的には、不正を行うためには動機機会、そしてその行為を正当化する理由が必要であると論じられています。これら三つの要素が揃うことで、不正行為が生じる確率が高まるとされています。

不正行為の背後にどのような要素が存在するのかを考える際に、不正のトライアングルは有効なフレームワークです。

動機、機会、正当化の説明

動機とは、ここでは特に財政的なプレッシャーや欲求など、不正行為を行うための何らかの内的・外的なプッシャーの事を指します。例えば、経済的な困難や借金、あるいは生活費の必要性などが含まれます。

機会は、不正行為を可能にする環境や状況を指します。具体的には、監視体制の不十分さ、責任の不明瞭さ、管理体制の不備、状況や立場の利用などが挙げられます。

そして、正当化は不正行為を行う人が自身の行為に対してつける容認の根拠です。いわば、自己の行為を合理化・正当化する理由付けのことを指しています。

不正のトライアングルの使用例

一見、不正のトライアングルは抽象的な概念に思えますが、様々な場面で適用することができます。具体例として、財政難から会社の資金を横領した人物がいるとします。この場合、動機は財政難、機会は信頼されていたための監視の不備、そして正当化は「会社から得ている給料が低いために仕方なかった」という思考です。

また、会計士や会計検査官が不正のトライアングルを使用して内部監査を行う場面もあります。具体的には、動機や機会、正当化が存在するかどうかを評価し、それに応じて内部コントロールのフレームワークを改善する作業を行います。

不正のトライアングルを理解すると、それらの不正行為がどのように行われ、またどのように予防するべきかについて対策を考えるヒントが見つかります。

不正のトライアングルが情報セキュリティにどのように関連しているか

情報セキュリティの世界でも、不正のトライアングルは興味深い洞察を提供してくれます。特に内部犯罪者による情報漏れやサイバー攻撃の背後にある動機、機会、正当化の理解には非常に有効です。

たとえば、社内のITスタッフが会社の機密情報を盗み出した、といった事例を考えてみましょう。この場合、動機は「自己の利益のため」、機会は「ITスタッフであるために情報システムのアクセス権がある」、そして正当化は「自身の技術力が低く評価されているからだ」といった具体的な要素が挙げられます。

情報セキュリティの観点からも、不正のトライアングルを理解しておけば、その理論に基づいた防衛策を構築することが可能となります。具体的には犯罪者の動機を削減するための仕組み作り、情報へのアクセスを制限するためのセキュリティ体制の強化、そして犯罪者が自身の行為を正当化しづらい環境を作る事が考えられます。

動機を深く掘り下げる

不正のトライアングルの最初の要素は動機です。これは、個人が不正行為を行う理由やプレッシャーを指します。個々の動機は様々であり、個人の価値観、財政的な困難、社会的なプレッシャーなどが関与することもあります。

しかし、ここで重要な点は、動機は漠然としたものではなく、具体的な収益を期待するか、損失を避けたいという明確な意図があることです。

したがって、不正の動機を理解するためには、その人が何を目指しているのか、なぜその行動を取りたいと感じるのかを理解する必要があります。

動機が生じる理由と要因

動機が生じる一般的な理由と要因としては、財政的な圧力、職場での不公平感、野心、欲求不満、個人の価値観の歪みなどがあります。

その中でも特に該当者の財政的危機は最もよく知られた動機であり、借金や生活費の問題、顕著な生活水準の変化、賭け事、個人的な欲求などが不正行為の引き金となることがよくあります。

また、職場の環境や身分、人間関係に起因する感情的な問題も重要な要因となることがあります。これは、報酬への不満、キャリアの停滞、上司や同僚との関係など、様々な問題が組み合わさることにより発生します。

動機が不正行為にどのように繋がるか

個々の動機は、内部的または外部的な要因により引き出され、関係者を不正行為に駆り立てる可能性があります。根底には大抵「欲」があり、それが達成できないフラストレーションが動機と相互作用します。

このような感情が十分に蓄積されると、正常な判断力が低下し、不正行為へと向かいます。例えば、負債を抱えた従業員は、不正な方法でお金を手に入れる方が、自身の悩みを解消する最善の方法であると感じることがあります。

その結果、不正行為は一種の逃避行動となり、それが現実の問題を一時的にでも解消すると感じた場合、繰り返す可能性があります。

既存の情報セキュリティにおける動機の具体例

情報セキュリティにおける動機としては、金銭的な利益を得るため、リベンジ(報復)のため、好奇心、または挑戦意欲などが挙げられます。

たとえば、サイバーセキュリティ体制の欠陥を見つけたインサイダー(組織内部の関係者)が、情報を外部に漏らすことで金銭的な利益を得る場合、それが動機となります。

また、職場でのいじめや差別、不満から来るリベンジ行為として、システム内部の情報を破壊したり漏洩させたりする場合もあります。

動機を防ぐための戦略と方法

動機を防ぐ戦略として、対内的な監査と監視を強化し、潜在的な問題を早期に発見することが重要です。

また、報告制度の整備や、不正行為に対する罰則の明示などを通じて、不正行為に対する抑止力を強化することも必要です。

さらに、従業員一人一人が適切に報酬を得られ、公平に扱われる環境を作り上げることも有効です。これには、報酬体系の公正な見直しや、多様性と包摂性を重視した組織文化の醸成が含まれます。

機会に焦点を当てる

不正行為を可能にする機会の形成

不正行為のトライアングルでは、"機会"は不正行為を可能にする環境または条件を示します。これらは、弱い内部統制、無防備な情報セキュリティ、不適切な管理監督など、従業員が不正行為を犯すための「窓」を提供します。

また、この"機会"は、一般的に組織内の有形・無形の要素から生じます。有形の要素とは、物理的にアクセス可能な財産や資源、情報システムなどを指します。無形の要素とは、組織文化や倫理観、職務の自由度などを指します。

出来るだけ多くの不正の機会をつぶすことで、不正行為の発生可能性を低下させることが可能となります。これには適切な内部統制の設置や厳格な監査が必要となります。

情報セキュリティにおける具体的な機会の例

情報セキュリティにおける"機会"の例として、保護されていない情報システムへの不正なアクセスやデータ侵害があります。これには、パスワードの弱さ、セキュリティパッチの適用遅延、物理的なセキュリティの不備などが含まれます。

また、内部の不正者への"機会"の例としては、監督や監査の欠如、不十分な職務の区分、高度な機能への過剰なアクセス許可などがあります。これらは、不正行為を助長させ、同時に情報セキュリティを脅かします。

情報セキュリティの維持のためには、これらの"機会"を取り除くことが至上命題となります。

機会を最小限に抑える戦略と方法

"機会"を最小限に抑えることは、情報セキュリティにおける不正行為の防止に不可欠な戦略です。そのために必要な方法として、強力なパスワードポリシーの設定、定期的なセキュリティアップデートの適用、物理的なセキュリティ強化があります。

更に、職務の乱用を防ぐために、適切な職務分掌、アクセス権限の厳格な管理、定期的な監査の導入が必要となります。これにより不正行為の検出を早め、"機会"を最小化することが可能となります。

機会を最小限に抑えることは、情報セキュリティの維持と不正行為の防止にとって重大な意味を持つということを忘れないでください。

機会が不正行為の危険性をどのように増加させるのか

"機会"が存在すると、不正行為の可能性が大幅に増加します。これは、不正行為を犯すためのパスが開かれてしまうからです。この結果、情報資産が侵害され、企業の評判や顧客の信頼を失う可能性があります。

また、"機会"が増えると、それが行われるまでの時間も短くなる傾向にあります。これは、"機会"が提供する便利さと引き換えに、不正行為の影響を最小限に抑える時間が短くなるためです。

したがって、機会を取り除くことで、不正行為の危険性を抑制することが可能となります。この視点から情報セキュリティを強化することは、組織にとって重要な課題となります。

正当化の解析

不正のトライアングルの構成要素である「正当化」の重要性を理解することは、情報セキュリティの側面から不正行為を防ぐ上で鍵となります。「正当化」は不正行為に対する道徳的な免罪符となるため、不正行為が行われる可能性を高めます。

「正当化」の解析とは、科学的な手法を用いて、その動機がどのように形成され、何によって触発されるのかを理解し、解釈することです。この段階は、現象を理解し、将来の予防策を立てるための基盤を構築するために重要です。

以下では、「正当化」が何であるか、なぜ重要なのか、そして情報セキュリティにおけるその影響について掘り下げていきます。

正当化とは何か、なぜ重要なのか

正当化とは、基本的には不正行為を合理的または許容可能と見なすための理由を作り出すプロセスです。これは、通常、個人が自身の不正行為を免責し、自己の価値観や固定概念と矛盾しないようにするために行われます。

正当化は大変重要です。なぜなら、個人が不正行為に手を染めることを容易にする可能性があるからです。彼らが個人的、または組織的な価値観を保ちつつ不正行為を行うための「罪の意識からの逃避路」を作り出すことが正当化です。

直感的には、正当化が存在しなければ、個々の道徳や誠実さが不正行為を防ぐバリアとなるかもしれません。

情報セキュリティにおける正当化の例

情報セキュリティ領域における「正当化」の一例としては、“私はただ仕事を効率化しているだけだ”というセキュリティポリシーの無視や、あるいはセキュリティツールを無効化する行為があります。これらの行為は、従業員自身が適切なセキュリティ対策を軽視する理由を正当化するために用いられます。

また、"会社は私に適切に報酬を支払っていない"という思考は、データ盗難や社内情報の漏洩行為を正当化する理由となることがあります。

これらの例からもわかるように、情報セキュリティにおける正当化がどれほど危険であるかを理解することは非常に重要です。

正当化を避けるための戦略と方法

不正行為の発生を防ぐためには、その最初の段階である「正当化」を防ぐことが重要です。具体的な戦略としては、セキュリティ意識の高揚、不正行為に対する明確なポリシーや処罰の存在、倫理的価値観の強化などが挙げられます。

また、階層別のトレーニングを提供することにより、不適切な正当化の可能性を減らすことができます。これにより、不正行為を行う可能性がある人々は、彼らの行動の結果とその影響についてより深く理解することができます。

最後に、情報セキュリティチームが定期的に監視と監査を行うことで、不正の試みを速やかに検出し、防ぐことができます。

正当化が情報セキュリティリスクにどのように影響を与えるのか

正当化が情報セキュリティリスクに影響を与える方法は、まずその存在が不正行為を可能にするため、セキュリティリスクを増大させるという点にあります。セキュリティ対策が適用されていても、正当化の存在は個々の行動を通じてその効果を脅かすことができます。

また、まさに情報セキュリティにおける正当化は、不正行為の動機を強化し、不適切な行動を助長します。これにより、組織全体のセキュリティ体制の弱体化につながります。

実際、正当化は、情報セキュリティリスクに多大な影響を及ぼし、企業の貴重な情報資源を危険にさらすことがあります。したがって、情報セキュリティ環境における正当化の理解と管理は、リスク管理の基本的な部分であると言えるでしょう。

不正のトライアングルを防ぐための具体的な戦略

不正のトライアングルは不正行為を行う際に必要な三つの要素、すなわち動機、機会、正当化を指す概念です。この不正のトライアングルを防ぐためには、これら各要素に対する戦略的な対応が求められます。以下では、それらの戦略について詳細に説明します。

不正のトライアングルの各要素に対応する戦略

まず、動機の要素です。これは往々にして金融的プレッシャーや個人的欲求からくるものです。対策としては、従業員の福利厚生を充実させたり、公正な評価や報酬システムを設けることにより、不正を起こす動機を除去することが重要です。

次に、機会の要素です。不正への機会を取り除くためには、内部統制の強化が求められます。アクセス制御や不正行為の早期発見を可能にする監査体制の構築などが重要となります。

最後に、不正行為を正当化する要素です。これに対する戦略としては、企業の倫理教育の強化が求められます。従業員が自らの行為が不正であると認識し、不正による悪影響を理解することが重要です。

重要な情報セキュリティポリシーとプロセス

情報セキュリティポリシーの制定とそれに基づくプロセスの確立は、不正のトライアングルを防ぐための重要な要素です。これには、情報の分類と取扱い、情報資産の適切な保護、アクセス権の管理、インシデントへの対応プロセスなどが含まれます。

また、制定したポリシーや手ほどきは日常業務に即した形で従業員に伝えられ、理解されなければなりません。また、これらのポリシーは定期的に見直しを行い、最新のセキュリティリスクに対応できるようにすることが重要です。

このように、情報セキュリティポリシーとプロセスを策定し、それを徹底することで、不正のトライアングルで語られる「機会」を大幅に減らすことが可能になります。

社内での情報セキュリティ意識の向上

情報セキュリティ対策の最も重要な要素の一つは、全従業員の情報セキュリティ意識の向上です。重要な企業情報を扱う全ての者が、セキュリティ対策の一環となる重要な役割を持っていると理解することが重要です。

具体的には、継続的な教育プログラムや訓練を通じて情報セキュリティについての理解度を高め、個々の行動が全体の情報セキュリティにどのように影響するかを理解させることが重要となります。

また、経営者自身が情報セキュリティの重要性を認識し、それを組織全体に伝えるリーダーシップを示すことが、組織全体の情報セキュリティ向上には不可欠です。

考慮すべき情報セキュリティの傾向と技術

情報セキュリティを確保するためには、詐欺者が用いる可能性のある最新の攻撃手法や不正行為の傾向について理解することが重要です。

このためには、情報共有ネットワークへの参加、専門家からの教育、情報セキュリティ関連の出版物への定期的な接続などを通じた継続的な学習が必要です。

また、技術的な対策についても理解しておく必要があります。これには、最新のセキュリティツールの導入、システムの定期的なパッチ適用、セキュリティセットの厳密な設定などが含まれます。

まとめ

この記事では、「不正のトライアングル」という概念について不正行為を誘発する3つの要素、動機、機会、正当化という視点から説明しました。情報セキュリティの観点からみても、そして組織全体の運営や日常業務の進め方にも多大な影響を与える重要な視点だということが理解いただけたかと思います。

幅広い視点での不正のトライアングルの理解

不正のトライアングルは、その理念的評価だけでなく、具体的な不正行為の事例を分析するのにも有効です。状況や組織の規模、業種に関わらず役立つモデルであり、多角的な視点で不正行為を理解するうえで欠かすことのできない考え方です。

また、不正のトライアングルの3つの要素を各々把握し、不正行為の可能性を最小限にする手法を考えることで、具体的な防止策の開発に役立ちます。

具体的な不正行為の事例などを通して、理論が現実にどのように結びつくかを理解することが、防止策を立案する上で重要なポイントになります。

情報セキュリティ対策の重要性

情報セキュリティ対策とは、組織内の情報資産が不正な手段によって漏えい、改ざん、消失することを防ぐための取組みを指します。

不正のトライアングルを理解していることは、このような情報セキュリティ対策を進める上で非常に重要です。なぜなら、不正行為に至る原因を深く理解することが、適切な対策を立てるための前提となるからです。

情報セキュリティ対策は更新を絶えず必要とし、その評価と改善の過程は終わりのない探究です。この過程において、不正のトライアングルが提供する考え方は、その枠組みを更新し、進化させるための貴重な手段となります。

不正のトライアングルから得られる教訓

不正のトライアングルから得られる教訓は数え切れないほどですが、その中でも特に重要な点は、不正行為は特定の個人や組織だけが行うものではないということです。不正のトライアングルの観点より、ある特定の条件下では、誰でもが不正行為を行う可能性があると考えることが重要です。

この視点を持つことで、組織や個人は自身の在り方や行いを再確認し、誤った行動を繰り返す可能性を最小限に抑えることができます。

今後の情報セキュリティ対策の見通し

不正のトライアングルの視点は、今後の情報セキュリティ対策にも大きく寄与します。

人々のライフスタイルやビジネスの形、そして社会全体の在り方が大きく変わる中で、情報セキュリティ対策は、更に進化し続ける必要があると言えます。

その中で、不正行為の原因となる要素を理解し、それを適切に管理するための方法を考え続けることが求められます。強固な情報セキュリティ対策を構築するためには、不正のトライアングルから得られる教訓を忘れずに、日々の情報管理に反映させていくことが重要です。

本記事が、情報セキュリティ対策の深化のための一助となれば幸いです。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム