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ハイブリッドクラウドとは? わかりやすく10分で解説

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ハイブリッドクラウドの基本解説

ハイブリッドクラウドがどのようなものなのかを理解するためには、その概念、構成要素、利用方法、そしてなぜハイブリッドクラウドが必要なのかについて知る必要があります。この章では、それら全てを詳しく解説します。

ハイブリッドクラウドとは

ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドプライベートクラウド、そしてオンプレミス環境を組み合わせて利用するクラウドの形態のことを指します。パブリッククラウドとは、AzureやAWSなどの一般に開放されたクラウドサービスのことを指します。一方、プライベートクラウドとは、自社専用のクラウドサービスのため、セキュリティが高いという特徴があります。

ハイブリッドクラウドは、これらの環境を組み合わせて利用することで、さまざまな特性を活かしつつ、各環境のデメリットを補完し、効果的なシステム運用ができるという特徴があります。

ハイブリッドクラウドの構成要素

ハイブリッドクラウドの構成は組織ごとに異なることがありますが、一般的にはオンプレミスパブリッククラウドの組み合わせ、またはプライベートクラウドとパブリッククラウドの組み合わせになります。さらに、オンプレミス、パブリッククラウド、プライベートクラウドを組み合わせたものもあります。

これらの構成要素を組み合わせることで、セキュリティ、負荷分散、コスト削減などのさまざまなメリットを享受できます。ですが、一方で複雑な環境になりやすく、各環境に精通している必要があるというデメリットもあります。

ハイブリッドクラウドの利用方法

一部の機能やデータをプライベートクラウドやオンプレミス環境で運用し、他の一部をパブリッククラウドで運用する、といった具体的な利用方法がハイブリッドクラウドの典型的な利用方法となります。

このような導入により、業務に適した環境を選びながら、適切なコストを確保することができます。また、データの一部をプライベートクラウドに配置することで、セキュリティを確保したり、法規制に対応したりすることができます。

ハイブリッドクラウドが必要な理由

ハイブリッドクラウドが必要となる理由はさまざまですが、セキュリティ要件の厳しいデータ、高パフォーマンスが求められる作業、コスト効率化などが主な理由となります。

また、ハイブリッドクラウドは、負荷分散が可能であり、災害時などでも迅速にデータを復旧することが可能です。これにより、業務の停止リスクを減らすことが可能となっています。

純粋なパブリッククラウドだけでは補うことのできない、もしくは難しい上記のような課題を解決できるため、ハイブリッドクラウドは非常に強力なITインフラといえます。

ハイブリッドクラウドのメリット

ハイブリッドクラウドを導入することで得られる利益は多種多様でありますが、ここではそのメリットを4つの主要なカテゴリーに分類して解説します。それぞれセキュリティの向上、負荷分散の効果、データシステムの堅牢性、そしてコスト削減の可能性です。

これらのメリットは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミス環境といった各種クラウド環境の長所を活かし短所を補完することによって実現されます。

それではそれぞれを具体的に見ていきましょう。

セキュリティの向上

ハイブリッドクラウドの一つの大きなメリットはセキュリティの向上です。自社で完全に管理できるプライベートクラウドはセキュリティが非常に高く、一方でパブリッククラウドはその柔軟性から新たな有用なセキュリティ技術の導入が早いです。

これらを組み合わせることで、適切なデータ管理とセキュリティ強化を両立でき、データをより安全に保つことが可能となります。

各環境ごとのセキュリティ特性を理解し、適切に活用することが求められます。

負荷分散の効果

負荷分散もハイブリッドクラウドのメリットの一つです。パブリッククラウドはスケーラビリティが高く、急なアクセス増加などに迅速に対応可能です。

一方、プライベートクラウドは一定のアクセス数なら安定したパフォーマンスを提供できます。これらを組み合わせることで、システム全体の負荷を適切に分散し、常に最適なパフォーマンスを維持できます。

負荷分散のための戦略は経験や知識、そして深い理解が必要となります。

データシステムの堅牢性

ハイブリッドクラウドはデータシステムの堅牢性を向上させるための有力な手法です。データのバックアップや復元は非常に重要な課題で、一部のデータを失うことはビジネスに深刻な影響を及ぼす可能性があります。

ハイブリッドクラウドでは、各環境を適切に活用することで、データの消失リスクを最小限に抑えることが可能となります。

より堅牢なデータシステム構築に対する理解と施策の実行が必要となります。

コスト削減の可能性

最後に、ハイブリッドクラウドはコスト削減の可能性をもたらします。パブリッククラウドは必要な時に追加資源を取得することができる一方、プライベートクラウドは安定したコスト性能を提供します。

これらの組み合わせにより、必要なリソースを必要な時に最適な形で利用することが可能になり、全体の運用コストの削減につながります。

しかし、想定外のコストが発生しないように適切なコスト管理と予算調整が求められます。

ハイブリッドクラウドのデメリット

ハイブリッドクラウドは多数のメリットを提供しますが、各種課題も確かに存在します。ここでは、ハイブリッドクラウド利用時に想定される主要なデメリットを紹介し、その対策方法についても触れていきます。

その利用形態が複数の環境を組み合わせるために、その管理や運用には一定の難易度があります。

具体的なデメリットとその対策については以下の通りです。

環境の複雑性

オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドなど、様々な環境を組み合わせたハイブリッドクラウドは、その運用が複雑化しがちです。その結果、システムの管理やトラブルシューティングが難しくなる可能性があります。

この問題に対処するためには、各環境の特性と最適な運用方法を理解し、適切な管理手法を取り入れることが重要です。

また、専門性を持ったパートナー企業と提携することも、複雑さを軽減する有効な手段です。

専門的な知識が必要

ハイブリッドクラウドを適切に管理し、最大限活用するには、各クラウド環境の運用に必要な深い知識とスキルが求められます。

このため、自社内に専門知識を有する人材が不足している場合、ハイブリッドクラウドの導入や運用に支障をきたす可能性があります。

専門的な知識やスキルの習得には、継続的な教育とトレーニングが必要です。また、業務を外部の専門家に委託することも一つの解決策です。

コスト管理の難しさ

複数のクラウド環境を組み合わせるハイブリッドクラウドでは、それぞれの環境にかかるコストを適切に理解し管理することが求められます。

特にパブリッククラウドは利用量に応じた従量制の料金が主体のため、想定外のコストが発生するリスクがあります。

これを避けるためには、緻密なコスト見積もりと、定期的な費用の確認・コスト効果の分析・適切な予算管理が必要です。

システム移行の難易度

既存のオンプレミス環境からハイブリッドクラウドへの移行は、データ移行やシステムの再構築など、多大な労力とコストを要します。

また、システムが停止する時間を最小限に抑えるための詳細な計画と実行が求められます。

これらの課題は、十分な計画と専門的な知識、経験に基づく実行力があれば克服可能です。移行プロジェクトを成功させるためには、専門的なスキルを持つパートナー企業の協力を得ることも強く推奨されます。

ハイブリッドクラウドの実践的導入方法

ハイブリッドクラウドを実践的に導入するためには、事業の要件、必要な技術、そして各クラウド環境の特性を充分に理解した上で、項目ごとに最適な組み合わせを選ぶことが重要です。以下に記載するハイブリッドクラウドの導入方法は、具体的な環境の組合せとその活用のヒントを示すものであり、あくまで一例ですが、理解の参考になれば幸いです。

オンプレミスとパブリッククラウドの組み合わせ

オンプレミス環境とパブリッククラウドを組み合わせる場合、一部のデータはセキュリティレベルの高いオンプレミスに保存し、一方、大量の非機密データや強力なコンピューティング能力が必要なタスクはパブリッククラウドに配置します。この組合せは、セキュリティ性とスケーラビリティを両立させたいシーンで有効です。

プライベートクラウドとパブリッククラウドの組み合わせ

プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせる方法は、セキュリティ性の高いデータはプライベートクラウドで保管し、その他の一般的なデータはパブリッククラウドに格納するという案です。こうすることで、ビジネスの敏捷性とセキュリティ要件の遵守を両立することが可能になります。

オンプレミス、パブリッククラウド、プライベートクラウドの組み合わせ

オンプレミス、パブリッククラウド、プライベートクラウドの全てを組み合わせると、最大限にフレキシブルな運用が可能になります。プライベートクラウドとパブリッククラウドは一部をオーバーラップさせ、データとアプリケーションの流動性を確保する一方、オンプレミス環境は、必要な限りのセキュリティとリソース制御を提供し続けます。

クラウド移行計画の作成

ハイブリッドクラウドの実践的な導入には、明確なクラウド移行計画が必要です。クラウド移行計画では、システム要件の理解、リソースの割り当て、データ移行の準備、クラウド環境の構成、そして後のスケーリングなど、多くのステップを含むことになります。具体的なステップや移行のポイントなどは現場により多岐にわたるため、専門的な知識を持ったパートナーと協力しながら進めることが強く推奨されます。

ハイブリッドクラウドの運用と管理

ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、およびオンプレミス環境を組み合わせて利用するクラウドの形態です。それぞれの特性を活かし、デメリットを補完することで、効果的なシステム運用が可能となります。しかし、その運用と管理にあたっては、いくつかの課題と戦略が存在します。

管理対象の明確化

ハイブリッドクラウドでは、多種多様な環境が複雑に組み合わされています。それぞれの環境の役割と、トラブルが起きたときの対応策を明確にすることが重要です。

また、各環境に精通していなければ管理が困難となるため、管理者教育も必須となります。

さらに、各環境の役割を明確にすることで、効果的な業務分担や効率的なリソース利用が可能となります。

セキュリティ対策の運用管理

ハイブリッドクラウドのセキュリティは、その複雑な構成から、非常に重要な課題です。独特のセキュリティリスクが存在し、それに対する適切な対策が求められます。

たとえば、パブリッククラウドとプライベートクラウドの間でデータを移動させる際、データ漏洩リスクが生じる可能性があります。また、オンプレミス環境では、物理的なセキュリティを確保する必要があります。

これらを適切に操作・監視するためには、強固なセキュリティポリシーと運用管理が非常に重要です。

クラウドコストの管理

ハイブリッドクラウドでは、異なる環境間でリソースを移動することが可能です。しかし、その利用料金はクラウドの種類や提供企業により大きく異なります。

したがって、コスト管理はハイブリッドクラウドの重要な課題の一つです。各環境の利用料金や利用状況を正しく把握し、経済的な観点からも最適な環境を選択する必要があります。

特に、パブリッククラウドは課金単位が細かく、使用量に応じた課金が行われるため、使用状況のモニタリングと分析が重要となります。

データ内部規制への対応

ハイブリッドクラウドでは、異なる地域や国家のデータセンターを利用することもあります。そのため、各地域、各国家のデータ保護法やプライバシー法等の内部規制に対応する制度やシステムを持つことが求められます。

したがって、法令遵守はハイブリッドクラウド運用の重要な業務の一つとなります。これには、各地域ごとの合法的なデータ移動、適切なデータ保管、そしてデータの使用方法の監視が含まれます。

これらを全て満たすためには、国内外の法律に精通した専門家と連携し、適切なシステムとルールを構築することが求められます。

ハイブリッドクラウドの将来性

ハイブリッドクラウドは効率性、柔軟性、そしてセキュリティといった点で、企業や大規模な組織に対して非常に魅力的なオプションとなっており、その利用がますます増えていくことが予想されます。その先進性は、既存のITインフラストラクチャに新たな価値を提供します。

デジタルトランスフォーメーションの一環として、データの集約化と活用がますます重要になる中で、ハイブリッドクラウドはソリューションとしての役割を果たすでしょう。

では、具体的にどのようにハイブリッドクラウドが進化し、どのような市場動向が見られ、またその発展予測はどのようなものなのでしょうか?

テクノロジーの進化とハイブリッドクラウド

クラウドテクノロジーは進化し続けており、その中でハイブリッドクラウドも新たな可能性を開拓しています。テクノロジーの進化により、より柔軟なデータの管理や、最適な運用環境を選択することが可能となっています。

例えば、強化学習の進歩により、ハイブリッドクラウドが新しい形で活用される場面が増えてきています。データ分析に強く、大量のデータを取り扱うことが可能なハイブリッドクラウドは、ビッグデータやAIと完璧にマッチします。

また、5Gの普及により、ハイブリッドクラウドはエッジコンピューティングの一部として新たな価値を提供することが考えられます。

ハイブリッドクラウドの市場動向

現在、多くの企業がデジタル変革を進める中で、ハイブリッドクラウドの導入を真剣に考えています。その背景には、グローバルなIT市場の成長、特にパブリッククラウドサービス市場の拡大があります。

また、データセキュリティへのニーズや、リモートワーク環境の整備といった要因もハイブリッドクラウド市場の拡大を推進しています。

更に、コスト効率性、システムのスケーラビリティ、オンデマンド性といったハイブリッドクラウドの特性も、企業にとって大きな魅力となっています。

ハイブリッドクラウドの発展予測

ハイブリッドクラウドの発展予測を考えるとき、AIとの統合が更に進むことが予想されます。AIが分析や意思決定を自動化するうえで、データの取得、保管、処理といったプロセスを効率的に行えるハイブリッドクラウドが重要な役割を果たすでしょう。

また、エッジコンピューティングの普及に伴い、ハイブリッドクラウドが更に重要性を増すと考えられます。エッジデバイスからの大量のデータを効率的に取り扱うためにはハイブリッドクラウドの導入が欠かせません。

このように、データ中心の戦略が求められる現代社会において、ハイブリッドクラウドが果たす役割はますます大きくなると考えられます。

ハイブリッドクラウドの未来図

ハイブリッドクラウドの未来図を描くとき、一つ目にイメージされるのは、データの効率的な運用、蓄積、分析が可能となる環境です。これは大量のデータを取り扱う必要がある企業にとって、強力なツールとなるでしょう。

二つ目としては、エッジコンピューティングやAIとの融合です。これにより、リアルタイムのデータ分析や自動化が実現し、ビジネスの効率化や新たな価値創出につながります。

三つ目としては、セキュリティ面での強化です。現代の社会では、データの保護は非常に重要な課題であり、それを確保できるハイブリッドクラウドに対するニーズは更に高まるでしょう。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム