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IDaaSとは? わかりやすく10分で解説

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IDaaS(Identity as a Service)とは

先進的なシステム統合に不可欠な概念がIDaaS(Identity as a Service)です。これは、クラウドベースのサービスで、認証・認可・ユーザー管理といったID管理(Identity Management)の機能を提供します。しかし、専門的な言葉だけでは、具体的にIDaaSが何を指すのか、何のために存在するのかを理解するのは難しいかもしれません。そこでこの記事では、IDaaSの重要性と、その具体的な機能について解説します。

概要と定義

IDaaS(Identity as a Service)は、クラウドサービスの一種です。IDaaSはIDのライフサイクルを全体的に管理し、企業のセキュリティ要件を満たして法規制を順守します。IDaaSの提供者は、認証・シングルサインオン(SSO)・ユーザープロビジョニング・アクセス管理・ディレクトリサービスなどの一連のIDとアクセスマネジメント機能をクラウドベースで提供します。IDaaSにより、企業は内部のITリソースを有効活用でき、安全なアクセスを確保できます。

IDaaSのコンセプトの誕生

クラウドコンピューティングが登場する前、企業のIT部門は内部のネットワークに対するセキュリティ維持に重点を置いていました。しかし、クラウドコンピューティングの登場により、企業は自身のネットワーク外部のクラウドサービスを利用するようになりました。この変化がIDaaSの誕生につながりました。クラウドサービスを利用することで、企業は自社内のITリソースを節約できる一方、ネットワーク外部へのセキュリティ確保の重要性が増加しました。これだけ多くのクラウドサービスが存在すると、誰がどのサービスにどのようにアクセスするかを一元管理する必要性が生じます。そのために生まれたのが、IDaaSというコンセプトです。

IDaaSの利用による利点

IDaaSが提供する主なメリットには、効率性の向上・セキュリティの強化・コスト削減があります。これらの具体的な内容について、以下に詳しく説明します。

効率性の向上

IDaaSの最大の利点の一つは、効率性の向上です。IDaaSは、企業のアイデンティティとアクセス管理を効率化します。一つのクラウドベースのプラットフォームからアクセス権を一元管理できるため、企業はスタッフのアクセス権の付与・変更・削除を即座に実行できます。これにより、新たな利用者の追加や権限変更など、日々の業務が大幅に効率化します。

セキュリティの強化

次に、セキュリティの強化が挙げられます。IDaaSの利用により、マルチファクタ認証やビヘイビア分析などのセキュリティ機能を導入できます。また、アクセスする端末やネットワーク、場所による制限も設定できるため、不正アクセスのリスクを大幅に低減可能です。さらに、アクセスログの一元管理や解析機能の利用により、セキュリティ対策の見直しや改善を促せます。

コスト削減

IDaaSのもう一つの重要なメリットは、コスト削減です。IDaaSの導入により、アイデンティティとアクセス管理に関連するハードウェアやソフトウェアの設定・管理・更新などに伴うコストを大幅に削減できます。また、これらの作業に必要だった人的リソースも削減できるため、他の業務への投資や新たなプロジェクトへの振り分けが可能です。さらに、IDaaSは一元化した管理によって、人間のミスによるセキュリティ上のリスクを防ぎます。これにより、セキュリティインシデントによる損失も抑えられます。

IDaaSの具体的な機能と特徴

ここでは、IDaaSの具体的な機能と特徴について詳しく説明します。ここで紹介する三つの機能がIDaaSの重要な要素です。

シングルサインオン(SSO)

シングルサインオンとは、何らかのサービスやアプリケーションに一度ログインするだけで、その他の全てのサービスやアプリケーションにも自動的にログインできる機能のことです。IDaaSと組み合わせることで、異なるシステムやサービスに対する個々のログイン作業を削減し、ユーザーエクスペリエンスを向上できます。一方で、セキュリティを確保するためにはSSO導入に際して注意が必要です。

マルチファクタ認証(MFA)

マルチファクタ認証というのは、ユーザーが本人であることを証明するために、二つ以上の独立した要素を提供する認証手段のことです。通常、その要素は「知識(パスワードなど)」、「所有(モバイルデバイスやトークン)」、「生物認証(指紋や顔認証など)」の三つから選択されます。

IDaaSの中に組み込むことで、MFAはシングルサインオンのセキュリティを補強する役割を果たします。アクセス権を確認する際に、パスワードだけでなく他の認証ファクターも必要とすることで、不正アクセスによる情報漏洩のリスクを低減できます。

ユーザープロビジョニング

ユーザープロビジョニングは、組織内でのユーザーアカウントのライフサイクルを自動的に管理する機能です。ユーザープロビジョニングには、アカウントの作成・削除・権限の付与や変更といった手間のかかる管理業務が含まれます。

組織の規模が大きくなるにつれ、アカウントの管理は複雑性を増していきますが、IDaaSを使用すればこれらの作業の自動化・簡素化が可能です。また、ユーザープロビジョニングを活用することで正確なアクセス権の管理が可能になり、セキュリティの強化に繋がります。

IDaaSの市場と主要なプロバイダー

今日、多くの企業が急速にデジタルシフトする中で、情報セキュリティの確保と効率的なアイデンティティ管理が求められています。これにより、IDaaSの市場は盛んに成長しており、さらなる拡大が予想されています。

市場動向と展望

優れたアイデンティティ管理ソリューションの需要増に伴い、IDaaS市場は年々その規模を拡大。特にクラウド技術の普及やリモートワークの増加が、この成長を後押ししました。

主要なプロバイダーとその特徴

現在、多くの企業がIDaaSソリューションを提供していますが、ここでは特に注目すべき3つのプロバイダーをご紹介します。

まず一つ目はOktaです。彼らはエンタープライズクラスのIDaaSソリューションを提供し、シングルサインオン・ユーザープロビジョニング・マルチファクタ認証などの高品質な機能により高い評価を受けています。

次にMicrosoft Azure Active Directoryがあります。MicrosoftのクラウドベースのIDaaSソリューションで、Microsoft製品と綿密に統合されているのが特徴です。特にOffice 365などのMicrosoftサービスを利用している企業にとって有用な選択肢となっています。

最後に、Google Cloud Identityも挙げられます。GoogleのIDaaSソリューションで、同社の他のクラウドサービスと密接に統合されています。Google WorkspaceなどのGoogleサービスを多用する企業には、とても役立つソリューションです。

紹介したプロバイダー以外にも、さまざまな企業から多岐にわたるIDaaSソリューションが提供されています。それらは各企業のニーズに合わせて特化した機能を持つため、自社に最適なIDaaSは何かを見極めることが重要です。

IDaaSの導入事例

次に、実際にIDaaSがどのように企業で導入され、どのような効果を生み出しているのかを見ていきましょう。大企業から中小企業まで、さまざまな組織がIDaaSを活用しており、それぞれが持つ課題の解決や業績向上に繋がっています。

大企業における導入事例

たとえば、ある企業では、自社のクラウドサービスのユーザー認証にIDaaSを採用しています。これにより一貫性が確保されたユーザー体験を提供し、ユーザーの信頼性を向上させています。また、IDaaSの導入により、顧客の認証情報を一元管理し、さまざまなサービスに一貫したセキュリティを提供できます。

また、あるIT企業では、自社のクラウドサービスにIDaaSを導入しています。これにより、社内の認証情報を一元化し、セキュリティの向上と効率性の向上を実現しています。

中小企業における導入事例

一方、中小企業でもIDaaSの導入は進んでいます。特にリモートワークの普及に伴い、IDaaSの導入が進んでいます。

たとえば、ある中小企業では、リモートワークの導入に伴い社員が自宅からでも安全に会社のネットワークにアクセスできるように、IDaaSを導入しました。IDaaSの導入により、社員は自宅からでも会社のネットワークに安全にアクセスできるようになり、仕事の効率性が向上しました。この企業は、従来のオンプレミス型の認証システムに比べてIDaaSの導入コストが安く、導入後の運用も楽であると評価しています。

このように、大企業だけでなく中小企業でも、IDaaSは様々な課題を解決しながら、ビジネスの効率性とセキュリティを向上させるツールとして重宝されています。

IDaaSの導入時の考慮点

企業がIDaaSを導入する際、特に重要な3つの考慮点があります。それらはセキュリティ課題適用範囲の定義、そしてプロバイダー選定のポイントです。それぞれについて詳細を解説していきます。

セキュリティ課題

まず、セキュリティ課題について説明します。IDaaSは、企業のユーザー管理を一手に引き受けるサービスです。そのため、集約された重要な個人情報やアクセス情報が外部の脅威から守られているかどうかは、重要な問題です。

対策として、IDaaSから提供されるセキュリティ機能を十分に理解し、利用規約に記述されている情報保護に対する取り組みを詳しく確認しましょう。さらに、情報の暗号化手段やデータ漏洩時の対応策なども明らかにし、これらが企業のセキュリティポリシーに適合していることの確認も不可欠です。

適用範囲の定義

次に、適用範囲の定義です。IDaaSの導入により、認証やアクセス管理を集約できますが、その範囲を適切に決めることが大切です。

具体的には、どの程度のスコープでIDaaSを利用するか、例えば組織全体か部署単位か、あるいはプロジェクト単位かなどを明確にします。さらにどのシステムやアプリケーションに対してIDaaSを適用するかも重要な決定ポイントです。

その上で、それぞれの適用範囲に応じてIDaaSの管理体制を考え、インフラストラクチャを整備することも重要だといえます。

プロバイダー選定のポイント

最後に、IDaaSのプロバイダー選定です。多くのプロバイダーが存在し、それぞれに特徴や強み、弱みがあります。

例えば、サービスの種類や機能、初期費用や継続的なコスト、セキュリティ対策の充実度、サポート体制、評判や信頼性など、自社の要件や予算に合わせてプロバイダーを選ぶことが重要です。

さらに、導入後の運用体制や環境整備について考慮し、自社の業務フローや文化に最も適したプロバイダーを選ぶべきです。

以上がIDaaS導入時に考慮すべき3つのポイントです。これらを念頭に置いて適切なIDaaSを選び、その効果を最大限に活かしていきましょう。

IDaaSと他のSaaSの比較

クラウドサービスは、その提供形態によりさまざまな種類に分類されます。IDaaSはその一つであり、Identity(アイデンティティ)をサービスとして提供する形態を指します。他にもPaaS(Platform as a Service)やIaaS(Infrastructure as a Service)などがありますが、これらは役割と提供するサービスが異なります。

IDaaSとPaaS(Platform as a Service)

まず、PaaSとはプラットフォームを提供するサービスであり、そのプラットフォーム上でユーザーが自分自身で開発・運用ができ、必要に応じてリソースを利用できます。一方、IDaaSはアイデンティティやアクセス管理のソリューションとして提供され、セキュリティ管理が目的です。

PaaSは主にアプリケーション開発のためのプラットフォームを提供するのに対し、IDaaSはそのアプリケーションにアクセスする際のユーザー認証やアクセス制御を一元管理するためのサービスです。IDaaSはPaaSと連携し、同一のプラットフォーム上でアクセス管理が可能です。

IDaaSとIaaS (Infrastructure as a Service)

IaaS(Infrastructure as a Service)は、サーバーやストレージ、ネットワークなどの基盤を提供するサービスです。このIaaS上にOSやミドルウェア、アプリケーションなどを構築し、運用します。

一方のIDaaSは、その基盤となるIaaSにログインするユーザーやシステムのアイデンティティ管理を提供するサービスです。つまり、IaaSは物理的なインフラを提供し、その上にソフトウェアを構築・運用するための環境を提供します。それに対してIDaaSはそのソフトウェアにアクセスするユーザーやシステムの認証を一元管理します。

そのため、IDaaSとIaaSは密接に連携して機能します。IDaaSはIaaSのセキュリティを強化し、ユーザー管理を効率化する重要な役割を果たします。

IDaaSの今後の発展

ここでは、新しい技術である人工知能とブロックチェーンが、IDaaS(Identity as a Service)とともにどのような未来を創造するのかを説明します。

AI(人工知能)とIDaaS

AI(人工知能)は、IT業界全体に革新をもたらす最前線のテクノロジーであり、IDaaSも例外ではありません。IDaaSとAIの組み合わせは、ユーザー認証の自動化、進化する脅威からの保護、およびパーソナライズされたユーザー体験の提供といった面で見事な結果を生み出すことができます。

具体的には、AIは以下のような形でIDaaSを強化することができます。まず、ユーザーの行動を学習して異常を検知し、IDaaSと組み合わせることでセキュリティの強化が期待できます。また、AIはユーザーの個々の要件と設定を理解し、パーソナライズされた体験を提供する能力をIDaaSに付与することも可能です。

ブロックチェーンとIDaaS

ブロックチェーンはもともと仮想通貨のために開発されましたが、その可能性はそれ以上に広がっています。一部の専門家は、その分散型の特性高度なセキュリティのために、ブロックチェーンが次世代のIDaaSになると予測しています。

ブロックチェーンを使用したIDaaSは、従来のIDaaSが抱えるいくつかの問題を解決する可能性があります。その一つがセキュリティの問題です。ブロックチェーンの分散型ネットワークは、データの改ざんのリスクを減らし、情報管理の透明性を向上させます。その結果、ユーザーは自分自身のデータがどのように使用・管理されているかを、より具体的に把握できるようになるでしょう。

さらに、ブロックチェーン技術によるデジタルアイデンティティ管理は、不正アクセスや個人情報漏洩のリスクを減らすための新たな手段を提供できます。これは、各ユーザーのIDがブロックチェーンに記録され、これを基に認証が行われるという形をとることが想定されます。

まとめ

IDaaS(Identity as a Service)の重要性と意義、そしてその進化と拡張可能性を考えるにあたって、その全体像を捉える必要があります。本記事では、IDaaSの定義・機能・利点について詳しく解説しました。これらの知識は、IDaaSが企業や組織にとってどれほど有益で、そして本質的なツールであるかを理解する上で欠かせません。

IDaaSは、業務効率の向上、セキュリティの強化、コスト削減などといった利点を提供します。このような利点を最大限に活用するためには、シングルサインオン、マルチファクタ認証、ユーザープロビジョニングなどの具体的な機能を理解し、活用する必要があります。

また、IDaaSの導入を考える際には、市場動向や、主要なプロバイダーの特長、さらには導入事例を参考にすることが重要です。そして、導入に際しては、セキュリティ課題や導入範囲の定義、そしてプロバイダー選定のポイントなど、慎重に考えるべき事項も多いといえます。

加えて、他のSaaSと比較したIDaaSの特長を理解することで、その利便性と包括性がより一層際立つことでしょう。そして、AIやブロックチェーンといった新しい技術が将来のIDaaSに与える影響についても触れました。

こうした知識をもとに、IDaaSの有用性を把握し、適切な利用方法を見つけられれば、その業効性を如何なく発揮できるでしょう。IDaaSの進化は日進月歩で、この先も技術や社会環境の変化とともに進化し続けることは間違いありません。

こうした変化を取り込むだけでなく、それを事業の成長やセキュリティ強化に活用するには、IDaaSの進化を継続的に注視し、新しい知識を得ることが重要です。その一環として、この記事がお役に立てば幸いです。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム