トレンド解説

IEEE802.1Xとは? わかりやすく10分で解説

アイキャッチ
目次

IEEE 802.1Xとは

IEEE 802.1Xは、ネットワークに接続する端末の認証を確保する目的で作られた標準規格です。これにより、ネットワークへの不正なアクセスを防止し、認証が未完了の通信を拒否することが可能になります。一般的には、LANスイッチやアクセスポイントといったネットワークの末端機器がこの認証のプロセスを行います。

端末がネットワークにアクセスを試みると、認証要求がクライアント側に送られ、クライアントはこの要求に応じてIDやパスワードといった認証情報を送信します。
認証サーバー(例えば、RADIUSサーバーと言われるもの)がこれらの情報をもとに認証を行います。端末から送られた認証情報が一致すれば、その端末はネットワークに接続できるようになります。

IEEE 802.1Xの主な目的と特性

IEEE 802.1Xの主な目的は、ネットワーク環境におけるセキュリティを強化することです。ネットワークへの不正なアクセスを防ぐことで、データの漏洩リスクを低減し、ネットワーク環境の安全性を維持します。

また、IEEE 802.1Xは認証されていない通信を拒否するという特性を持っています。これにより、不正アクセスや未認証の端末からの通信を防ぎ、ネットワークの安全性を保護します。

さらに、IEEE 802.1Xは、MD5やSSL/TLS、EAP等の多種多様な認証メカニズムと互換性があるという特性も有ります。そのため、環境に合わせた最適な認証手段を選べる柔軟性を持っています。

IEEE 802.1Xが必要とされる理由

IEEE 802.1Xが必要となる主な理由は、ネットワークセキュリティを高めるためです。無線LAN等のオープンなネットワーク環境では特に、不正アクセスによるデータ漏洩のリスクが高まります。

また、ITインフラが急速に複雑化し、端末の種類が増えるにつれ、ネットワークへの不正アクセスも高度化しています。そのため、高度な認証メカニズムを持つIEEE 802.1Xが求められます。

さらに、複数のネットワークを統一的に管理する際にもIEEE 802.1Xは有効です。利用者の認証情報を一元管理することで、システム管理の効率化と共にセキュリティの強化が可能となります。

IEEE 802.1Xが活用される具体的な場面

IEEE 802.1Xは、企業や学校などさまざまな場所のネットワーク環境で活用されています。特に大規模なネットワーク環境において、安全にデータ通信を行うために必要とされます。

具体的には、オフィス内の無線LANや、教育機関のキャンパスネットワークのような環境での利用が一般的です。これらの環境では、登録利用者だけがネットワークに接続することを保証する必要があります。

また、ビジネスの現場でも、セキュリティの強化と共に、IT資産管理の効率化のためにIEEE 802.1Xが採用されます。端末の認証情報を一元管理することで、管理コスト削減とセキュリティ向上を両立することが可能になります。

IEEE 802.1Xでの認証プロセス

端末からの認証要求

IEEE 802.1Xの認証プロセスは、端末がネットワーク接続を試みる場所から始まります。端末が通信を求めると、LANスイッチやアクセスポイントなどのネットワーク末端機器が認証を要求します。この認証要求は、接続を求める端末にIDやパスワードなどの情報を提供するよう指示します。

したがって、非登録の利用者や不審な端末からの接続試みは初期段階で阻止されます。この段階で、認証情報の送受信以外の通信が行われることはありません。そのため、認証が完了するまでその他の通信はブロックされます。

この端末からの認証要求というプロセスは、ネットワークの保護における初期の防御線を形成しています。これにより、不正なアクセスや不審な通信を初期段階で遮断し、ネットワークを安全に保つことが可能です。

認証サーバへの問い合わせ

次に、LANスイッチやアクセスポイントは、端末から受け取った認証情報を認証サーバへと問い合わせます。認証サーバとしては、一般的にはRADIUSサーバなどが用いられます。このサーバは一元管理され、登録されているすべての端末の認証情報を保持しています。

認証サーバは、受け取った認証情報が自身が保持している情報と一致するかを確認します。その結果、認証情報が正確かつ正当であれば、認証の成立をLANスイッチやアクセスポイントに通知します。この認証の成功は、端末とネットワークとの間の通信の開始を意味します。

この認証サーバへの問い合わせのプロセスは、ネットワーク内の情報の整合性を保つための重要な手段です。これにより、認証情報が正当であることが確認されたときのみ通信が許可されます。

通信の許可

パラメータが一致した場合、認証サーバは通信の許可を与えます。これにより、端末はネットワークに接続できるようになります。認証が完了した後の通信は、非常に安全であるとされています。

通信の許可がされた後でも、認証情報が変更されたり、不正行為が発見されたりした場合には、再度認証が行われることがあります。これにより、接続後のセキュリティも確保されています。

通信の許可により、認証に成功した端末はネットワークにアクセスすることが可能となります。なお、通信の許可が出なかった場合、接続の試みは失敗し、端末はネットワークにアクセスできません。

サプリカントの役割

この全ての認証プロセスを実行するためには、「サプリカント」と呼ばれるソフトウェアが端末側に必要となります。このソフトウェアは認証のためのIDやパスワードなどの情報を収集し、それをLANスイッチやアクセスポイントに送信します。

また、サプリカントは認証サーバと対応する認証方式を交渉します。それにより、最も適切な方法で認証が行われ、ネットワークのセキュリティが確保されます。

サプリカントが果たすこの役割は極めて重要であり、問題なく認証プロセスを遂行するためには欠かせません。最新のサプリカントソフトウェアを使用することで、ネットワークのセキュリティを最大限に高めることができます。

IEEE 802.1Xの認証プロトコル

EAPとは

IEEE 802.1X規格の認証には、「EAP」(Extensible Authentication Protocol)と呼ばれる認証プロトコルが使用されます。EAPは、ネットワークへの接続を試みる端末の認証情報の送受信を担当し、利用者の正当性を確かめる役割を担っています。

EAPは非常に柔軟なプロトコルで、多数の認証方式をサポートしています。これは、ネットワークの安全性を確保しつつ、多様なネットワーク環境や端末に対応できるようにするためです。

したがって、EAPはIEEE 802.1X規格の重要な要素であり、ネットワークの安全性と利便性を両立する上で不可欠な役割を果たしています。

EAPの認証方式の種類

EAPでは、MD5ハッシュ、デジタル証明書、SSL/TLSなど、さまざまな認証方式が利用できます。これらの認証方式が使われることで、ネットワークへの不正アクセスを防ぎつつ、異なるタイプの端末や状況下でも接続が可能となります。

例えば、MD5ハッシュは、パスワードをハッシュ化して通信を行う方式で、その簡易さから広く使われています。一方、デジタル証明書SSL/TLSは、認証情報の送受信に暗号化を用いることで、より高度なセキュリティを提供します。

これらの認証方式は、それぞれ異なる特性と利点を持つため、ネットワークの要件やセキュリティレベルに応じて適切なものが選ばれます。

認証方式の選定と交渉

IEEE 802.1Xの認証プロトコルは、サプリカント(端末側のソフトウェア)と認証サーバが対応している認証方式を交渉して使用します。この交渉プロセスは、双方が共通にサポートする認証方式を見つけるためのものです。

いずれの認証方式が選ばれるかは、端末とネットワークのセキュリティ要件、利用環境、サポート状況などに依存します。例えば、デスクトップPCのような物理的に安全な環境で使用される端末は、セキュリティ要件が低い認証方式を選ぶことができます。

一方、公共の場所で使用されるモバイルデバイスなどは、強いセキュリティ要件があり、より堅牢な認証方式が必要になることがあります。

認証方式の選択に影響を与える要素

ネットワーク設定者は、多様な要素を考慮して認証方式を選びます。その一つが、ネットワークに接続する端末の種類とそれぞれのセキュリティ要件です。

認証方法のネットワークハードウェアおよびソフトウェアとの互換性と相互運用性も重要な考慮事項です。互換性のない認証方法は適切に機能しない可能性があり、ネットワークの中断を引き起こしたり、ネットワークのパフォーマンスを制限したりすることがあります。

また、運用コストや管理の容易さも重要な要素です。一部の認証方式は導入や管理が複雑で、優れたセキュリティを提供する一方で、運用コストが高くなる可能性があります。

以上のような要素を考慮に入れて、最も適切な認証方式が選ばれ、ネットワークのセキュリティが確保されます。

IEEE 802.1X規格の歴史

IEEE 802.1X規格の歴史について解説します。通常、新たな技術規格が登場する背景には、それを必要とする技術的な課題が存在します。それでは、IEEE 802.1Xがどのような経緯で誕生し、どう進化してきたのかについて見ていきましょう。

IEEEの802.1委員会とは

IEEEの802.1委員会は、ネットワークに関わるさまざまな標準を定めている組織です。この委員会が開発した規格の一つがIEEE 802.1Xであり、その目的はネットワーク接続の正当性を確認することにあります。IEEE 802.1Xは、委員会が新しい認証手段を模索した結果生まれました。

IEEE 802.1Xの初版の仕様とその役割

2001年、最初のIEEE 802.1X仕様が発行され、通信ネットワークの安全性確保に大いに貢献しました。この規格により、ネットワークに接続しようとするデバイスは認証を通過しなければならなくなり、システム全体のセキュリティが強化されました。

規格名の末尾の「X」の意味

IEEE 802.1Xの名称における末尾の「X」は、新規格を示すために使用されています。「X」はローマ数字では10を表し、一般的に新しさや革新を象徴することが多いです。この点から、IEEEはこの規格によって新たな認証方式を導入し、その進展に大いに期待していることを示しています。

以降の改定と主なアップデート

IEEE 802.1Xは、情報通信の進展に伴い数々の改定を経ています。それぞれの改定で新たな認証プロトコルが追加され、更なるセキュリティ強化が図られました。例えば、「EAP」(Extensible Authentication Protocol)はその一つで、MD5ハッシュ、デジタル証明書、SSL/TLSなどのさまざまな方式で利用できます。それぞれのアップデートには時間と多大な労力がかけられており、IEEE 802.1Xは日々進化し続けています。

IEEE 802.1Xの現在と未来

時代が情報化社会へと急速に移行していく現在、IEEE 802.1X認証はその信頼性とセキュリティ性が大いに評価されています。しかし、その活用現場と未来にはどのような可能性が待ち受けているのでしょうか。本篇では、IEEE 802.1Xの現在と未来について考察します。

現代におけるIEEE 802.1Xの活用現場

IEEE 802.1X認証は、企業などの大規模ネットワーク環境から家庭のWi-Fiまで幅広く利用されています。

とりわけ企業では、従業員のネットワーク接続を厳重にコントロールする必要性から、その信頼性とセキュリティ性を活かし、接続管理に多く活用しています。

家庭では、無線LANのセキュリティ強化の一環として導入されるケースが増えています。

IoT時代におけるIEEE 802.1Xの役割

IoT時代に突入し、様々なデバイスがネットワークに接続するようになると、IEEE 802.1X認証の重要性はますます高まります。

IoTデバイスが増加するにつれて潜在的な脅威も増加し、それら全てを適切に管理することは非常に困難となります。このため、IEEE 802.1Xはそのセキュリティ性を活かしてデバイスの認証に広く使用されるようになるでしょう。

既に、多くのIoT機器製造業者はIEEE 802.1Xに対応した製品を開発しており、この動きは今後一層加速することが予想されます。

未来のIEEE 802.1X規格の可能性

IEEE 802.1X規格の適用分野は、従来の有線 LANや無線 LAN だけでなく、更に拡大していくと予想されます。

例えば、電力網、遠隔医療、自動運転車など、さまざまな分野でのデータ通信のセキュリティ保護に役立てられる可能性があります。

これにより、安全なインターネット環境をさらに広範囲に提供することが可能となります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム