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iPaaSとは? わかりやすく10分で解説

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目次

はじめに

iPaaSは、社内外のアプリケーション同士を「つなぐ」ためのクラウド型プラットフォームです。SaaSの利用が当たり前になった今、業務データはあちこちに散らばりやすく、連携の手間も増えがちです。iPaaSを使うと、オンプレミスとクラウドをまたぐ連携を作りやすくなり、データ連携や業務フローの自動化を現実的なコストとスピードで進められるようになります。

iPaaSとは何か

iPaaS(Integration Platform as a Service)は、オンプレミス環境とクラウド環境をまたいだアプリケーション連携を、できるだけシンプルに行うためのクラウドベースの仕組みです。たとえば「SaaSの顧客情報を基幹システムへ同期する」「問い合わせフォームの情報をチケット管理に登録する」「受注データを会計へ渡す」といった、よくある連携を統合フロー(連携フロー)として素早く作り、運用しやすくします。

多くのiPaaSは、あらかじめ用意されたコネクタ(接続部品)やテンプレート、画面上でのフロー設計、監視やリトライなどの運用機能を備えています。利用者はサブスクリプション(利用契約)を行い、必要な連携を設定していく形で使い始めます。

iPaaSの主な目的と用途

iPaaSの目的はシンプルで、アプリ・データ・業務プロセスを接続して、流れを止めないことです。典型的な用途は次の通りです。

  • データ連携:顧客・商品・在庫・請求など、複数システムにまたがるデータの同期
  • 業務の自動化:特定のイベントを起点に、登録・通知・承認などの手順を自動で回す
  • システム間の橋渡し:APIがあるSaaS同士はもちろん、オンプレミス側の連携(ゲートウェイ経由など)も含めてつなぐ
  • 段階的な刷新支援:既存システムをいきなり全部入れ替えず、連携から整理して移行を進める

ポイントは「開発チームだけが頑張る連携」から、「運用も含めて回る連携」へ持っていくことです。iPaaSは、そのための土台を用意する存在だと考えると分かりやすいです。

必要とされるビジネス環境

現代の業務では、CRM、MA、会計、ワークフロー、チャット、ストレージなど、用途ごとにSaaSが増えやすくなりました。その結果、次のような困りごとが出やすくなります。

  • 同じデータを複数システムに二重入力している
  • 部署ごとにツールが違い、情報が分断されている
  • 「この数字はどれが正しい?」が起きやすい
  • 連携が属人化し、担当者がいないと止まる

iPaaSは、こうした「つなぎ込みの負担」を減らしつつ、データの流れを揃えるために使われます。特に、部門横断の連携(営業→受注→請求、サポート→顧客DB、採用→人事など)では効果が出やすい傾向があります。

iPaaSの普及と成長

iPaaSが広まってきた背景には、クラウド利用の拡大だけでなく、APIの一般化、SaaSの増加、そして「連携を作った後の運用」が重視されるようになったことがあります。連携は作って終わりではなく、障害対応、仕様変更、データの例外処理などが必ず発生します。iPaaSは、こうした運用を前提にした機能(監視、ログ、リトライ、通知、権限管理など)をまとめて提供しやすい点が、選ばれる理由になっています。


iPaaSの特徴

iPaaSは「接続する」だけでなく、「作る・動かす・見える化する」までをまとめて支えるのが特徴です。ここでは、機能の見え方を具体的に整理します。

クラウドベースのインテグレーション

iPaaSはクラウド上で動くため、環境構築の手間が比較的小さく、必要に応じて機能を追加しやすい傾向があります。オンプレミス側と連携する場合も、エージェントやゲートウェイを介して安全に接続する形がよく採られます。

また、連携先としてSaaSが増えるほど、個別開発でのつなぎ込みは増えやすくなります。iPaaSの価値は、こうした「連携が増えるほど複雑になる」状況を、できるだけ整理して扱える点にあります。

データ統合とデータ交換

iPaaSは、システム間のデータ交換を一貫した流れとして扱います。たとえば、次のような処理をフローとしてまとめられます。

  • データ形式の変換(項目名や型の変換、コード変換)
  • 条件分岐(この条件なら別の宛先へ)
  • 重複排除や突合(同一顧客の判定など)
  • 例外処理(失敗時のリトライ、別ルート、担当者通知)

「つながっているけど品質がバラバラ」を放置すると、結局は現場での手戻りが増えます。iPaaSは、データの扱いを揃えるための仕組みとしても使われます。

リアルタイム更新と同期の考え方

iPaaSはリアルタイム処理も可能ですが、常にリアルタイムが正解とは限りません。用途によっては「数分おきの同期」や「夜間バッチ」のほうが安定する場合もあります。iPaaSの良さは、イベント駆動(何かが起きたら動く)と、定期実行(決まった時間に動く)の両方を、同じ考え方で設計しやすい点にあります。

自動化とワークフロー管理

iPaaSは単なるデータ移動ではなく、「業務の手順」を自動化する用途でも使われます。例としては次のような流れです。

  • フォーム送信 → チケット作成 → 担当者へ通知 → ステータス更新を関係者へ共有
  • 受注登録 → 与信チェック → 承認 → 出荷依頼 → 請求作成

ここで重要なのは、運用し続けられる設計です。権限、変更管理、ログ、アラートなど、作った後に必要になる要素を最初から織り込めるかどうかが、iPaaS選定や設計の差になります。


iPaaSの利点

iPaaSは、連携を「速く作れる」だけでなく、「増えた連携を破綻させない」ための利点があります。ここでは、現場で効いてくるポイントを中心にまとめます。

利便性と迅速な構築

多くのiPaaSは、コネクタやテンプレート、GUI(画面)での設計を用意しており、ゼロから連携プログラムを書かなくても、一定の連携を形にしやすい傾向があります。もちろん難しい要件では開発が必要になりますが、少なくとも「よくある連携」は素早く試せるため、検証→改善のサイクルを回しやすくなります。

オンプレミスとクラウドの連携

オンプレミスに基幹システムやファイルサーバーが残っている企業は少なくありません。iPaaSは、クラウド側だけでなくオンプレミス側との接続も含めて設計できるため、段階的なクラウド移行(いきなり全部は無理、を前提にした移行)にも向きます。

ビジネスプロセスの効率化

連携が整うと、二重入力や転記ミス、確認待ちによる停滞が減りやすくなります。特に、手作業が多い工程は「ミスが起きる」「担当者が休むと止まる」といった形で、目に見えないコストが積み上がりがちです。iPaaSは、その手作業を減らし、流れを揃えるための手段として使われます。

拡張性とスケーラビリティ

企業のシステムは一度作ったら終わりではなく、新しいSaaSの導入、組織再編、グループ会社の増加などで変化します。iPaaSは、連携が増える前提で「増やし方」を用意できる点が強みです。ただし、拡張しやすいからこそ、命名規則や設計ルール、権限設計などのガバナンスもセットで考える必要があります。


iPaaSの設定と運用の流れ

iPaaSは導入して終わりではなく、設計・実装・運用を一続きで考えると失敗しにくくなります。ここでは、流れを分解して整理します。

初期設定とサブスクリプション

最初に行うのは、利用するiPaaSの契約と初期設定です。一般的には、管理者アカウント、組織・プロジェクトの単位、権限(誰が作れて誰が実行できるか)、接続情報(認証情報の保管方法)などを決めます。

ここで「とりあえず全員管理者」は避けたほうが安全です。連携は業務の中心を流れるようになるため、変更権限の設計は早い段階で固めておくのが無難です。

アプリケーションとサービスの接続

次に、連携したいアプリやサービスを接続します。APIキー、OAuth、証明書、IP制限など、接続方法は相手によって異なります。オンプレミス側はエージェントやゲートウェイ経由になることも多く、ネットワーク経路と権限の整理が重要になります。

また、接続できたら終わりではなく、「どのデータを、どの頻度で、どの方向に流すか(片方向か双方向か)」を決めておくと、後からの混乱が減ります。

統合フローの構築

統合フロー(連携フロー)は、単にデータを送るだけでなく、次のような設計要素を含みます。

  • 変換:項目の対応、フォーマット、コード体系の変換
  • 品質:必須項目の欠落や異常値の扱い
  • 衝突:同時更新が起きたときの優先順位(どちらを正とするか)
  • 例外:失敗時のリトライ、保留、担当者への通知

「動くものを作る」だけなら早いのですが、運用で詰まるのはだいたい例外処理です。最初から例外の扱いを決めておくと、後の手戻りが減ります。

データ同期とリアルタイム更新

リアルタイム連携は魅力的ですが、実運用では「リアルタイムにする価値があるか」を見極めるのが大切です。たとえば、在庫や決済のように即時性が重要なものはリアルタイム寄り、日次でよい集計データはバッチ寄り、といった形で使い分けると安定しやすくなります。

また、同期が増えるほど障害時の影響範囲も広がります。監視・アラート・再実行手順まで含めて設計できるかが、運用のしやすさを左右します。


セキュリティとプライバシー

iPaaSは「いろいろなシステムをつなぐ」ため、扱うデータも広くなりがちです。だからこそ、セキュリティとプライバシーは導入時に最優先で押さえる必要があります。

iPaaSのセキュリティ

多くのiPaaSは、通信の暗号化(例:TLS)、保存データの暗号化、監査ログ、権限管理などの機能を備えています。ただし、プラットフォーム側の機能があっても、使い方が雑だと事故が起きます。特に注意したいのは次の点です。

  • 認証情報の扱い:APIキーやトークンの保管、ローテーション、共有の禁止
  • 権限設計:最小権限、管理者の限定、変更の承認フロー
  • ネットワーク:接続元制限、オンプレ連携時の経路と分離
  • ログ:誰がいつ何を変えたか、失敗がどこで起きたかを追える状態にする

データプライバシーと法規制

個人情報や顧客データを扱う場合、国や地域の法規制、業界のルール、契約上の取り決めへの対応が必要になります。たとえば、GDPR(EU)やCCPA(米国カリフォルニア州)など、データ保護に関する規制が話題になりますが、適用範囲は企業の事業形態や取引先によって異なります。

iPaaSを使うとデータが複数システムを通るため、「どこからどこへ流れているか」「誰がアクセスできるか」を把握し続けることが重要になります。データマッピング、アクセスログ、保管期間、削除手順などを、運用ルールとして整えておくと安心です。

セキュリティ対策の例

実務として取りやすい対策例を挙げると、次のようになります。

  • 暗号化:通信・保存の暗号化、鍵管理の方針を明確にする
  • アクセス制御:多要素認証、最小権限、職務分掌(作る人と承認する人を分ける)
  • 監視:失敗回数の増加や異常なアクセスを検知し、通知・停止できるようにする
  • 変更管理:フロー変更の手順、レビュー、ロールバック手順を決める

iPaaSのリスク

iPaaSは便利ですが、連携の中心になるほど、障害時の影響も大きくなります。たとえば、連携フローが止まると「受注が会計に入らない」「問い合わせが担当に届かない」など、業務が直接止まる可能性があります。

そのため、重要なフローほど、冗長化、リトライ設計、代替手順(手動対応の手順書)、監視とアラートを用意し、「止まっても復旧できる」運用にしておくことが現実的です。


iPaaSの今後

iPaaSは、単に連携を作る道具から、データ活用・自動化の基盤としての役割を強めています。ここでは、よく語られる方向性を整理します。

IoTとiPaaS

IoTで増えるのは、デバイス数だけでなくデータの種類と量です。センサー値、稼働ログ、位置情報などが増えると、収集・整形・保存・分析の流れが複雑になります。iPaaSは、こうしたデータを周辺システムへ渡したり、イベントをきっかけに処理を走らせたりする「つなぎ役」として使われる場面が増えると考えられます。

AIと機械学習

AIや機械学習の活用が進むほど、入力データの品質と連携の安定性が重要になります。iPaaS自体にAI機能が搭載されるケースもありますが、まず効いてくるのは「必要なデータを必要な形で集め、流せること」です。データ連携の土台が整っているほど、AI活用の準備が進めやすくなります。

iPaaS市場の広がり

クラウド利用が増えるほど、システム同士をつなぐニーズは増えやすくなります。さらに、部門単位でのSaaS導入が進むほど、全社視点の統合(ガバナンスやデータ整合)が課題になりやすいです。iPaaSは、そのギャップを埋める手段として、今後も利用場面が増える可能性があります。

ただし、iPaaSの価値はツール単体では決まりません。どのデータを整えるか、どのフローを優先するか、運用ルールをどう作るかといった「使い方」が、成果を大きく左右します。


Q.iPaaSとは何ですか?

iPaaSは、複数のアプリケーションやデータをつなぐためのクラウド型プラットフォームです。オンプレミスとクラウドをまたぐ連携フローを作り、運用しやすくします。

Q.iPaaSは何のために使いますか?

代表的には、データ同期(顧客・受注など)、業務の自動化(通知・登録・承認など)、システム間の橋渡し(SaaSと基幹の連携)に使われます。

Q.API連携を個別開発するのと何が違いますか?

個別開発は自由度が高い一方、連携が増えるほど保守・監視・障害対応が重くなりがちです。iPaaSは、コネクタや監視、ログ、リトライなど「運用を前提にした機能」をまとめて扱いやすい点が違いです。

Q.オンプレミスのシステムとも連携できますか?

多くの場合、エージェントやゲートウェイを介して連携できます。ネットワーク経路、権限、接続方式(APIキーや証明書など)の設計が重要になります。

Q.リアルタイム連携は必須ですか?

必須ではありません。即時性が必要な処理はリアルタイム寄り、日次でよい処理はバッチ寄りなど、用途で使い分けたほうが安定することがあります。

Q.iPaaS導入でよくある失敗は何ですか?

例外処理(失敗時の扱い)を考えずに作り始めて、運用で詰まるケースが多いです。監視、リトライ、通知、手動対応手順まで含めて設計すると失敗しにくくなります。

Q.セキュリティはiPaaS側に任せれば大丈夫ですか?

任せきりは危険です。通信暗号化やログ機能があっても、認証情報の管理、最小権限、変更管理など、使う側の運用が甘いと事故につながります。

Q.プライバシーや法規制の対応で気をつけることは?

データがどこからどこへ流れているか、誰がアクセスできるかを把握し続けることが重要です。適用される規制は企業や取引条件で変わるため、データマッピング、ログ、保管期間、削除手順を運用ルールとして整えるのが現実的です。

Q.iPaaSの選定で見るべきポイントは?

接続先のコネクタの充実度、オンプレ連携の方式、監視・ログ・リトライなどの運用機能、権限管理と変更管理、コスト体系(実行回数やデータ量の課金)を確認すると比較しやすいです。

Q.iPaaSは今後も必要になりますか?

SaaSやクラウドの利用が増えるほど、連携のニーズは増えやすい傾向があります。iPaaSは「連携を作る」だけでなく「運用して回す」ための土台として、引き続き重要になりやすいと考えられます。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム