iSCSIとは? わかりやすく10分で解説
iSCSIとは?
iSCSIは、物理的に接続されているデバイスとネットワーク越しにSCSI接続をするためのインターネットプロトコルです。通信ルールはSCSIと基本的に同じであり、ネットワークを通じてSCSIコマンドを転送するための規格です。
iSCSIは、IPネットワークを利用し、現存のインフラを利用してより大きな距離で、より多くのデバイスを接続することが可能となっています。コストを抑えつつ、専用のハードウェアやケーブルなどを必要とせずに実装できるため、大幅なスケーラビリティと便利さを提供します。
iSCSIの歴史
iSCSIは、2000年代初頭にIBMとシスコによって開発されました。その目的は、高速ネットワークを使用して、独立したストレージシステムを効果的に接続することでした。それ以降、クラウドストレージや仮想化技術の普及により、その重要性は増し、多くのシステムで採用されています。
iSCSIは、古いサーバーと新しいハードウェアの間のデータ移行を容易にし、また、異なるハードウェアでの互換性を提供します。また、ストレージシステムの独立性を保つことにより、データセンターの管理者がデータ管理と保存をより容易に行うことができます。
SCSIとiSCSIの関係
SCSI(Small Computer System Interface)は、キーボードやマウス、プリンタ、ディスクドライブなどの各種周辺機器をコンピュータに接続するためのインターフェーススタンダードです。それに対して、iSCSIは基本的にSCSIのネットワーク版として機能します。それはSCSIコマンドをIPネットワーク経由で転送し、大量のデータを迅速かつ安全に移動できます。
これにより、物理的な接続に依存することなく、任意の場所からストレージデバイスにアクセスすることが可能になります。SCSIが物理的な接続に用いられるのに対し、iSCSIはプロトコル自体がネットワーク環境での転送を可能にするために発展しました。
iSCSIの主な特徴と機能
iSCSIには、拡張性、コスト効率、便利さなど、さまざまな重要な特徴と機能があります。特に、既存のネットワークインフラストラクチャを利用できるその性質は、ITインフラストラクチャを新たに設計・構築するコストや時間を節約する大きなメリットとなっています。
iSCSIは容易にデプロイ可能であり、そのルールはネットワーク越しの接続が容易であるため、ストレージの規模を迅速に拡大したり縮小したりすることが可能です。
また、iSCSIはネットワーク越しにストレージにアクセスする機能を提供することで、データセンター内でデータを素早く安全に移動することが可能になります。この性質は、大規模なデータセンターの管理に強力なツールとなります。
iSCSIの魅力
ここでは、IPネットワーク上でのSCSIコマンドの転送、データセンター運用の効率化、コスト削減と効率性の向上、そして他のストレージ技術との比較を通して、iSCSIが提供する魅力と利点を詳細に解説します。
IPネットワーク上でのSCSIコマンドの転送
iSCSIの一番の魅力は、IPネットワーク上でSCSIコマンドを転送する能力にあります。従来、物理的な線でしか行えなかったSCSI接続は、iSCSIによりネットワーク経由で可能となりました。
これにより、データセンター内に存在する機器と簡単に通信を行う、もしくは新たなストレージデバイスを導入することができます。これは可能な接続数を増やし、冗長性と信頼性を向上させ、世界どこからでもシステムにアクセスできます。
その上、「ストレージエリアネットワーク(SAN)」の一部としてiSCSIを利用することで遠隔地にあるデータセンター間の連携も可能になります。
iSCSIによるデータセンターの効率化
次に、iSCSIによるデータセンター運用の効率化も重要な魅力です。
iSCSIの使用により、高速かつ効率的なデータの転送が可能となり、SCSIデバイス間でのデータ共有も簡単になります。これにより、ネットワーク上のSCSIデバイス間の通信が大幅に効率化し、ストレージの管理が簡単になります。
また、適応性の高さもiSCSIの魅力の一つであり、iSCSIは既存のIPネットワーク上で簡単に運用できます。新たな設備投資や大規模な設定変更が必要ないため、データセンターのストレージ管理の負担を減らすことができます。
iSCSIによるコスト削減と効率性の向上
iSCSIを使用することで、大幅なコスト削減と効率性の向上も期待できます。
既存のIPネットワークを利用するため、特殊な接続ケーブルやハードウェアなどの追加投資なしでiSCSIを導入することが可能です。これにより、初期投資や維持管理コストを大幅に削減できます。
さらに、物理的な距離に左右されずデータ転送ができるため、データの冗長性と持続性を向上させ、ITシステムの全体的な効率を高められます。
iSCSIと他のストレージテクノロジーの比較
最後に、iSCSIと他のストレージ技術との比較によるiSCSIの優位性を見ていきましょう。
Fibre Channelと比較するとiSCSIはIPネットワークを用いるため、既存のネットワーク設備を使用できるのも利点です。高価なFibre Channel専用ハードウェアの導入が不要であり、またiSCSIはトラフィックのルーティングとセグメンテーション能力も持っています。
さらに、NASと比較した場合でもiSCSIは優位性を保ちます。iSCSIはデータをブロックレベルで転送するため、一部のアプリケーションに対するパフォーマンスがNASよりも優れているからです。
iSCSIの実際の使用場面
ターゲットとイニシエータの間でデータストレージ情報を送受信するためのプロトコルであるiSCSIは、その効率的な操作により多くの使用場面で優れています。
IPネットワークを介してデータストレージデバイスを接続する能力は、明らかに短縮する時間と労力を節約するため、多くのIT環境での絶対的な選択となっています。
現実の世界では、iSCSIはデータセンターやビジネス環境、さらには高度なネットワークのパフォーマンスを最適化するユースケースとベストプラクティスに応用されています。
データセンターでのiSCSIの利用
最も一般的なiSCSIの使用環境の一つはデータセンターです。ここでは、大量のデータを安全で効率的な方法で保存し、アクセスすることが必要です。
データセンターはしばしば膨大な保存容量を必要とし、そのような環境でiSCSIはデータストレージとネットワーク間の通信を円滑にする有効な手段となります。
また、物理的なケーブル接続を必要としないため、物理的なスペースが限られた状況では特に便利であるといえます。
ビジネス環境でのiSCSIの利用
ビジネス環境では、通常、異なる部門やチームがデータを頻繁に送受信します。iSCSIを用いることで、彼らは簡単かつ誤りなくその類似データにアクセスすることができます。
しかもこれによって、何千もの同時接続が可能になる上、異なるトラフィックが混在するネットワークでも高いパフォーマンスを維持することができます。
ビジネス環境でのiSCSIの利用は、データ共有を簡単にし、生産性と効率性を向上させることが可能です。
iSCSIのユースケースとベストプラクティス
iSCSIは、一致した性能とすばらしい拡張性を備えたサーバ間の接続やバックアップリンクなど、多くのユースケースで使用されています。
データ保護のためにバックアップやレプリケーション操作を迅速に行うことができるのもiSCSIの大きな利点です。
ベストプラクティスとしては、パフォーマンスを最適化するためには、適切な設定とアクティビティ監視が必要だといえます。
iSCSIのパフォーマンスと最適化
効率的なデータ転送とパフォーマンスは、iSCSIの最優先事項であり、そのために必要ないくつかの要素が存在します。
これには、適切なネットワーク設定とパケットサイズ、効率的なストレージ管理、そして十分な帯域幅が含まれています。
さらに、適切なハードウェアの選択と設定もiSCSI環境のパフォーマンスに大きな影響を与えます。これにより、データ転送速度は大幅に向上し、全体的なシステムのパフォーマンスも改善されます。
iSCSIネットワークの設定と管理
このセクションでは、iSCSIネットワークの設定と管理について詳しく説明します。あくまで基本的な知識なので、現場の状況により適切な設定や管理方法が変わる可能性を覚えておきましょう。
以下に示す各項目が、このセクションでカバーする主要なトピックです。
iSCSIターゲット・イニシエータの設定、IP ネットワーク上での iSCSI の設定と接続、iSCSI のトラブルシューティングと維持管理、そして最後にiSCSIのセキュリティ対策についてお伝えします。さまざまな状況に備え、これらの情報を手元に置いておくことをお勧めします。
iSCSIターゲット・イニシエータの設定
iSCSIの実装において、2つの主要なコンポーネントであるターゲットとイニシエータの設定が必要です。ターゲットは、ストレージデバイス(ハードディスクやディスクアレイ)を表し、イニシエータはそれらにアクセスするシステムを指します。
ターゲットやイニシエータの設定は、それぞれのデバイスの機能やオペレーティングシステム、そして具体的なネットワーク環境により異なります。例えば、いくつかのオペレーティングシステムではイニシエータの設定は非常に単純で、GUIベースの設定ツールを介して行うことができます。
具体的な設定手順については多数存在しますので、具体的な製品のマニュアルや公式ドキュメンテーションを参照しましょう。また、設定に関するトラブルがある場合には、製品の技術サポートに問い合わせるのもよい方法です。
4.2 IPネットワーク上でのiSCSIの設定と接続
iSCSIの設定と接続を行うためには、まずIPアドレスの設定、続いてiSCSIターゲットとイニシエータ間の接続設定が必要です。これらの設定により、iSCSIによるデータ転送が可能となります。
具体的なIPアドレスの設定はネットワーク環境によるため、具体的な設定方法については製品のドキュメンテーションやマニュアルを参照するとよいでしょう。ターゲットとイニシエータ間の接続設定も同様に、使用している製品やネットワーク環境により異なるため、適切な設定方法については製品のドキュメンテーションやマニュアルを参照してください。
また、設定や接続のトラブルが発生した場合には製品の技術サポートに問い合わせるのも一つの方法です。困ったときには適切なサポートを得ることで、トラブルを迅速に解消することが可能となります。
iSCSIのトラブルシューティングと維持管理
iSCSIネットワークを運用するにあたり、トラブルシューティングと維持管理が必要となります。これには、パフォーマンスモニタリング、障害のトラブルシューティングと修復、および定期的なiSCSIの維持管理が含まれます。
パフォーマンスモニタリングにより、iSCSIの性能を定期的に確認し、必要に応じて最適化ができます。また、障害が発生した場合には適切なトラブルシューティングを行い、障害の解消と再発防止に努めます。
さらには、適切な維持管理を行うことにより、iSCSIネットワークの長期的な安定性と性能を確保することが可能となります。これらの項目は、iSCSIネットワークの運用において重要な役割を果たしています。
iSCSIのセキュリティ対策
iSCSIのセキュリティ対策は、ネットワーク上のデータを保護しながらiSCSIのパフォーマンスを維持することを目指します。具体的には、認証、暗号化、およびネットワークセキュリティのベストプラクティスの適用が基本的な対策です。
認証により不正なアクセスを防ぎ、暗号化によりデータを保護します。また、ファイアウォールの適用やネットワークのセグメンテーションなどのネットワークセキュリティのベストプラクティスにより、セキュリティレベルをさらに高めることが可能です。
これらのセキュリティ対策は、iSCSIネットワークが提供する価値を維持しつつ、データの盗難や改ざんから保護する重要な役割を果たします。これらの対策を適切に適用し、iSCSIネットワークの安全性を確保しましょう。
iSCSIの今後
ネットワークストレージ・ソリューションの分野におけるiSCSIの重要性について過去数年間で多くの議論が交わされてきました。その結果として物理的な線での接続だけではなく、ネットワーク経由の接続も可能になり、組織のデータストレージへのアクセスが非常に柔軟になりました。
しかし、この技術はまだその可能性を全面的に発揮していません。iSCSIのの成長トレンド・応用技術としての役割・インフラの中での発展とその未来展望について以下で詳しく解説します。
市場トレンド
iSCSIの市場は、データセンターの移行、クラウド技術の普及により、成長を続けています。テクニカルな面もさることながら、経済的な面でもiSCSIは非常に有利です。
その理由の一つとして、既存のイーサネットネットワーク上で作動するため、特殊なハードウェアを導入するコストが必要ないという点が挙げられます。明らかにコストパフォーマンスの観点から、iSCSIは他のストレージ接続技術に対する優位性を持っています。
しかし、その市場の成長率は一定ではありません。iSCSIの需要は絶え間ないデータの増加とともに増大すると予測されています。後述のインフラストラクチャの変革と絡めて、更に詳細を確認しておきましょう。
iSCSIの応用
iSCSIの利点はその柔軟性にあり、多種多様な応用技術としての可能性を持っています。一つは、ファイルサーバーの共有ストレージの提供です。ネットワーク上の全てのユーザーがアクセスできる一元的な場所でファイルを管理することが可能になります。
しかし、iSCSIの本領発揮は、離れた場所にあるデータセンター間のレプリケーションにあります。多大なデータを転送する費用と時間を削減することが可能になるため、災害復旧やデータバックアップの対策に非常に適しています。
iSCSIは、これらの応用例のように、エンタープライズの多様なニーズに応えることができる強力なツールです。
iSCSIの可能性
前述のように、iSCSIはその費用対効果から見ても、既存のネットワークインフラストラクチャに統合される可能性を秘めています。特に、データを一元管理することで組織のデータ利用効率を高めることが可能になります。
iSCSIにより、データセンターやクラウド環境でのデータの流通が容易となり、一方でセキュリティーの問題も考慮する必要があります。iSCSIではデータの暗号化が可能であり、これによりデータのセキュリティーを確保することが可能です。
そのため、iSCSIはデータの流通とセキュリティーを両立することが可能なネットワークストレージ技術として、今後のインフラストラクチャの発展に欠かせない存在となるでしょう。
iSCSIの将来
iSCSI誕生から20年近くが経過した現在でも、その存在感は依然として根強いものがあります。しかし、その展望はiSCSI自体の技術的な進化だけではありません。データセンターのクラウド化、エッジコンピューティングの普及など、ITインフラストラクチャ全体の変革も影響します。
適切に管理され、効率的に活用されることで、iSCSIは企業のデータ運用をさらに強化します。また、AIやビッグデータ分析など、新たなテクノロジーの発展に伴い、データ転送の需要は増大し続けます。
結論として、iSCSIはITインフラストラクチャの未来の重要な要素であり、その発展と進化は続いていくでしょう。
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