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MOMとは? わかりやすく10分で解説

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目次

製造業では、原材料価格やエネルギーコストの変動、人手不足、多品種少量生産の常態化などにより、「現場を回す難しさ」が増しています。こうした環境で求められるのは、勘や経験だけに頼らず、現場の状況を正しく把握しながら、品質と生産性を両立させる運用です。その実現を支える考え方として注目されているのがMOM(Manufacturing Operations Management:製造オペレーション管理)です。

本記事では、MOMが何を対象に、どんな目的で導入されるのかを整理したうえで、代表的な機能、導入メリット・デメリット、MESなど他システムとの関係までを解説します。読み終えるころには、MOMが自社の課題に対して「どこに効くのか」「導入時に何を準備すべきか」を判断できるようになります。

はじめに

製造業界では、効率化や生産性向上に向けた取り組みが加速しています。その中で、現場のオペレーションを横断的に管理し、改善につなげる枠組みとして位置づけられるのがMOM(Manufacturing Operations Management)です。本章では、MOMの重要性と、現代の製造業に与える影響を整理します。

MOMの重要性

製造業は、設備投資・技術革新・市場環境の変化に影響を受けながら、常に改善を求められる業界です。たとえば、需要変動による生産計画の組み替え、短納期への対応、熟練者不足への対処など、「現場の段取り」を頻繁に見直す必要が生じます。こうした場面で、現場の実態が見えにくいままだと、調整は属人的になり、ムダや品質のばらつきが増えやすくなります。

MOMは、人・設備・資材・工程といった製造リソースを、現場の実績データと結びつけて管理し、改善の材料を提供する考え方です。品質を維持しながら生産効率を高めることを目的とし、特に多品種少量生産のように変化が多い現場では、「どこで滞留しているか」「なぜ不良が増えたか」を早期に捉えるための基盤になりやすい点が特徴です。

この記事では、MOMの基本概念、代表的な機能、導入のメリット・デメリット、関連システムとの関係性を順に整理します。製造現場の改善に関心がある方や、DXの文脈でMOMを検討している方が、導入可否や進め方を具体的に考えられる状態を目指します。

MOMの基本

MOMを検討する際は、「何をどこまで管理する概念なのか」を明確にすることが重要です。製造業ではERPやMESなど複数の仕組みが併存するため、MOMの対象範囲を曖昧にすると、導入目的や期待効果がぼやけてしまいます。本章では、MOMの定義と目的、製造業における役割を整理します。

製造オペレーション管理とは

MOM(Manufacturing Operations Management)は、製造現場で日々行われるオペレーション(実行・監視・調整・改善)を対象に、全体を一貫して管理するための考え方およびシステム群を指します。ここでいう「オペレーション」は、単に「作業を実行する」ことだけではなく、進捗・品質・資材・設備稼働などの状態を把握し、必要な判断を現場で回すことまで含みます。

実務上は、生産計画に基づく作業指示、工程の進捗管理、品質検査結果の集約、設備の稼働状況の監視、在庫の過不足の把握など、製造に直結する複数領域を横断的に扱うことが多く、「現場の実態」をデータで捉えて改善につなげる点に重心があります。

MOMの主な目的

MOMの目的は、製造プロセスを効率化しつつ、品質や納期を安定化させることです。一般的に期待される狙いは、次のように整理できます。

  • 生産性の向上:ムダ時間や手戻りを減らし、設備・人員をより有効に使う
  • 品質の安定:異常やばらつきを早期に把握し、原因と対策を回せる状態をつくる
  • 納期遵守:進捗の遅れを早めに検知し、段取りや負荷の調整につなげる
  • 改善の継続:実績データを根拠に、現場の改善活動を継続しやすくする

なお、「コスト削減」や「納期短縮」は重要な成果になり得ますが、MOMはまず現場の実態を正確に捉える仕組みであり、導入直後から自動的に成果が出るものではありません。現場の運用設計とデータ活用をセットで考えることが前提になります。

製造業におけるMOMの役割

製造業におけるMOMの役割は、「現場の実行」をデータで可視化し、判断と改善を回すサイクルを支えることです。たとえば、工程遅延が発生した場合に、感覚的な議論に終始せず、「どの工程で」「どの設備・品目で」「どの条件が影響したのか」を追える状態をつくることで、対策の精度が上がります。

また、複数工場や複数ラインを持つ企業では、現場ごとに運用が分断されやすく、指標や用語の揺れが改善活動の妨げになることがあります。MOMの枠組みを整えることで、現場の状態を同じ尺度で見られるようになり、横展開や標準化が進めやすくなります。

MOMの主な機能

MOMは、製造オペレーションを支える複数の機能で構成されます。ここでは代表的な機能を取り上げ、「それが現場で何に効くのか」を具体的に整理します。なお、実際の製品・サービスにより機能範囲や呼称は異なるため、導入検討時は自社の業務範囲と照らし合わせて確認することが重要です。

作業スケジューリング

作業スケジューリングは、生産計画をもとに、設備能力、段取り、作業者の割当、優先順位などを考慮して、作業順序やタイミングを最適化する機能です。目的は、待ち時間や段取り替えのロスを減らし、ボトルネック工程の負荷を平準化することにあります。

たとえば多品種少量生産では、段取り替えが頻発し、順序の組み方で生産性が大きく変わります。スケジューリングを「見える化」し、条件変更の影響を把握できる状態をつくることが、現場の判断スピードを上げます。

生産資源の配分と監視

資材、設備、人員などの生産資源をどの工程に配分し、どの程度使えているかを監視する機能です。設備稼働率、停止要因、作業者の負荷、資材の欠品リスクなどを把握できると、遅延の予兆を早めに捉えられます。

重要なのは「稼働率が高い=良い」と単純化しないことです。稼働率が高すぎる状態は、突発停止や品質問題が起きたときの余力がない状態でもあります。監視データは、単なる評価ではなく、現場の調整と判断に使える形で整備する必要があります。

品質管理

品質管理機能では、検査結果、不良内容、測定値、工程条件などを収集し、品質のばらつきや異常を早期に検知します。ここで重視されるのは、最終検査だけでなく「工程内」で品質を管理する視点です。

たとえば、特定ラインで不良率が上昇した場合、設備状態や材料ロット、作業条件の変化を追えると、原因切り分けが速くなります。品質検査の自動化や異常検知は有効ですが、検査項目の定義、判定基準、対応フローが曖昧だと、現場の負荷だけが増えるため注意が必要です。

データ収集と分析

MOMでは、生産実績(数量、時間、停止、良否など)や設備データ、作業実績などをリアルタイムに収集し、分析に活用します。データは「集めれば価値が出る」ものではなく、判断に必要な粒度とタイミングで整備されていることが重要です。

たとえば、日次の集計では見えなかった微細な停止要因が、リアルタイム収集で初めて可視化されることがあります。一方で、現場入力が複雑になると定着しないため、入力の省力化(自動取得や入力項目の絞り込み)と、活用先(会議体、改善活動)の設計をセットで進める必要があります。

製品追跡と生産体系管理

製品追跡(トレーサビリティ)は、製品がどの工程を通り、どの条件で作られたかを追跡できる状態をつくる機能です。品質問題発生時に影響範囲を特定しやすくなり、回収や出荷停止の判断精度が上がります。

また、生産体系管理は、工程構成、ライン編成、設備配置などの情報を管理し、工程変更や改善の履歴を追えるようにする考え方です。工程の見直しが頻繁な現場ほど、「現状がどうなっているか」を共通認識化する効果が大きくなります。

MOMと他システムとの関係

製造業では、ERP、MES、PLM、SCMなど、複数のシステムが役割分担しながら運用されます。MOMを検討する際は、「どのシステムが何を担当し、MOMがどの部分を統合・補完するのか」を整理することが不可欠です。

MOMとMESの違い

MES(Manufacturing Execution System)は、製造現場の実行をリアルタイムで管理・監視する仕組みです。作業指示、進捗、実績、設備稼働など、現場の「いま起きていること」を扱う領域に強みがあります。

一方、MOMはMESを含むより広い概念として語られることが多く、品質管理、在庫管理、改善活動の基盤など、製造オペレーション全体を横断的に捉えます。ただし、現実にはベンダーや製品によって「MOM=MESに近い範囲」を指すこともあるため、導入検討時は用語だけで判断せず、機能範囲を具体的に確認することが重要です。

MOMの進化とDX

IoTやAIの導入により、MOMは「状況を記録する仕組み」から、「状況を予測し、最適化を支援する仕組み」へと発展しています。たとえば、設備データの常時取得、異常兆候の検知、品質と工程条件の関係分析などは、改善活動のスピードと精度を高めます。

一方で、DXの文脈では「ツール導入」が目的化しやすい点に注意が必要です。MOMは、現場の意思決定や改善が回る設計があって初めて効果を発揮します。データを取得するだけで終わらせず、現場の会議体や改善プロセスに組み込み、継続的に運用できる形にすることが重要です。

MOMの導入メリット

MOMを導入する背景には、現場の見える化と改善の加速により、品質・納期・コストのバランスを取りやすくする狙いがあります。ここでは代表的なメリットを、現場で起きやすい変化と合わせて整理します。

製造リードタイムの短縮

MOMにより、計画と実績の差分や工程内の滞留を把握しやすくなります。遅れの兆候を早期に捉え、段取り変更や負荷調整を行えるようになると、製造から出荷までのリードタイム短縮につながります。

ただし、リードタイム短縮はスケジューリングだけで実現するものではありません。段取り替え、品質不良による手戻り、欠品、設備停止など、現場課題を分解し、データに基づいて手当てすることが前提です。

生産性の向上

設備稼働や停止要因、作業実績を可視化できると、「どこにムダがあるか」を議論しやすくなります。改善の当たりどころが明確になり、無駄な作業時間の削減、段取り改善、設備保全の最適化などにつながります。

生産性向上の鍵は、指標の設計です。稼働率やOEEなどの指標を使う場合も、現場が改善につなげられる粒度でデータを扱えるようにすることが重要です。

製品品質の維持・向上

品質データと工程条件を結びつけて管理できると、品質低下の兆候を早めに捉えられます。結果として、不良の大量発生や出荷後トラブルのリスクを下げやすくなります。

品質管理では、検査の自動化だけでなく、異常時の対応フロー(誰が、どの基準で、どの工程を止めるか)までを含めて運用を設計することが重要です。

MOMの導入デメリットと対策

MOMは多くの効果が期待できる一方で、導入・運用には課題もあります。これらを事前に把握し、対策を講じておくことで、導入後の形骸化や現場負担の増大を防ぎやすくなります。

データ収集の工数

MOMの運用には、実績データの入力やマスタ整備などの作業が発生します。現場入力を前提にすると、入力負担が増え、データ品質もばらつきやすくなります。

対策としては、IoTなどによる自動取得を検討しつつ、すべてを一度に取りに行かないことが重要です。まずは「遅延」「不良」「停止」など、改善効果が出やすい領域からデータ項目を定義し、段階的に範囲を広げる進め方が現実的です。

システムの適切な運用方法

MOMは高度なシステムであり、導入しただけでは活用が定着しません。運用ルールが曖昧なままだと、入力が形骸化し、結果として「現場が忙しくなるだけ」で終わってしまう可能性があります。

対策としては、現場の意思決定に直結する使い方を先に定めることが重要です。たとえば、「日次で進捗と停止要因を確認する」「不良が閾値を超えたら原因分析を開始する」など、活用シーンと責任分界を明確にしたうえで、教育と改善活動に組み込みます。

初期投資のコスト

MOM導入には、システム費用だけでなく、データ連携、マスタ整備、運用設計、教育などのコストが伴います。特に、既存システムとの連携や現場の運用変更が必要になる場合、想定以上の工数がかかることがあります。

対策としては、導入目的とスコープを明確にし、段階導入で成果を積み上げる方法が有効です。また、クラウド型を含む提供形態の選択肢を比較し、費用と運用負担のバランスを確認したうえで判断することが重要です。

まとめ

本記事では、MOM(Manufacturing Operations Management)の基本概念、主な機能、導入メリット・デメリット、他システムとの関係を整理しました。MOMは、製造現場の状態をデータで捉え、判断と改善を回すための基盤となる考え方です。

IoTやAIの進展により、MOMはDXの中核として語られる機会が増えていますが、効果を出すためには「何を改善したいのか」「どのデータを、どの運用で回すのか」を具体化することが欠かせません。導入検討では、メリットだけでなく運用負担やデータ整備の課題も見据え、段階的にスコープを定めながら進めることが重要です。

Q.MOMとは何の略で、何をする考え方ですか?

MOMはManufacturing Operations Managementの略で、製造現場のオペレーションを横断的に管理し、改善につなげる考え方です。

Q.MOMとMESは同じものですか?

同じではありません。MESは現場実行の管理に強く、MOMは品質や改善なども含めた製造オペレーション全体を扱う概念として語られます。

Q.MOM導入でまず期待される効果は何ですか?

現場の進捗・停止・不良などが可視化され、遅延や品質悪化の兆候を早期に捉えやすくなることです。

Q.MOMは多品種少量生産の現場に向いていますか?

向いています。段取り替えや変動が多い現場ほど、状況の可視化と調整判断の材料として効果が出やすくなります。

Q.MOMで扱う代表的な機能は何ですか?

作業スケジューリング、資源配分と監視、品質管理、データ収集と分析、トレーサビリティなどです。

Q.導入時に現場負担が増えることはありますか?

あります。入力やマスタ整備の負担が増える場合があるため、自動取得や段階導入で負担を抑える設計が重要です。

Q.MOM導入が形骸化する主な原因は何ですか?

取得したデータの活用先が決まらず、運用ルールが曖昧なまま入力だけが増えることです。

Q.MOMはDXにどう関係しますか?

現場データを継続的に集めて判断と改善に回す基盤となるため、製造業DXの中心要素になり得ます。

Q.初期投資のコストはどこで増えやすいですか?

システム費用だけでなく、連携開発、マスタ整備、運用設計、教育などの工数で増えやすいです。

Q.MOM導入を成功させる進め方のコツは何ですか?

改善目的とスコープを明確にし、効果が出やすい領域から段階的に導入して定着させることです。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム