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PDCAとは? わかりやすく10分で解説

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目次

はじめに

PDCAとは組織やプロジェクトの進行方向を継続的に改善するための管理術の一つです。組織全体のパフォーマンスを最適化する手段として、多くのビジネスで利用されています。

PDCAという頭字語は「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Act(改善)」の四つのステップを意味します。この四つのステップは一連のサイクルを形成し、このサイクルを繰り返すことで業務改善を図ります。

このPDCAサイクルは業務やプロジェクトの進行状況を継続的に確認し、達成目標に対する適応性を確保することを可能にします。そのため、このフレームワークは組織の運用において非常に重要なツールとなり得ます。

PDCAとは?

PDCAは一連の問題解決サイクルを表す、組織やプロジェクト管理のフレームワークであり、ビジネス改善に不可欠なツールです。これは、組織やプロジェクトが目標を達成するために必要な活動を明確に理解し、管理するための方法です。

PDCAは、「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Act(改善)」の四つの段階から成り立っています。通常、このサイクルは業務やプロジェクトの開始から終了までをカバーします。

また、PDCAサイクルは継続的改善の原則に基づいており、組織が現状を理解し、将来的な改善点を明らかにすることを可能にします。

PDCAの要素

PDCAは以下の4つの要素で構成されています。それぞれのステップが連続的に繰り返され、持続的な改善を促進します。

「Plan(計画)」フェーズでは、目標を設定し、これを達成するための策略や手段を計画します。具体的な作業手順を定義し、必要なリソースを特定します。

次に「Do(実行)」フェーズでは、計画された作業を実行します。「Check(評価)」フェーズで結果を評価し、目標に対する進度を確認した後、「Act(改善)」フェーズで必要な改善措置を実施します。

PDCAの歴史

PDCAの概念は1950年代にアメリカの統計学者ウィリアム・エドワーズ・デミングによって提唱されたものです。後に彼の名を冠した「デミングサイクル」とも呼ばれるこのフレームワークは、品質管理の分野で導入され、その効果が認められました。

その後、日本ではデミング氏の考え方が企業経営に応用され、特にトヨタの生産システムをはじめとする多くの業務改善活動でPDCAサイクルが活用されました。

これらの成功事例により、PDCAは世界中の組織における経営改善の主要な手法として普及し、現在でも多くの企業で用いられています。

PDCAと管理

PDCAは業績管理の一環としても非常に効果的です。目標を常に見直し、計画を適切に調整し、実行結果を評価することで、組織の業績を持続的に改善することが可能になります。

PDCAサイクルを適用することで、達成目標と現状の間のギャップを定期的に確認して修正し、それによって随時改善措置を講じることができます。

このように、PDCAは業績管理の重要なフレームワークであり、組織全体の継続的な改善を達成するためのツールとなり得ます。

PDCAステップの解説

PDCAサイクルは、業務を改善する上で最も基本的な四つのステップを繰り返すことで、組織の製品やサービスを定期的に改善し続ける方法です。以下では、各ステップの具体的な方法を詳しく解説します。

Plan(計画)の方法

プランニングはPDCAサイクルの第一ステップで、その目的は「何」を「どう」改善するかを決定することです。まず、業務の現状を客観的に把握し、それらを基に改善すべきポイントを明確にします。その上で具体的な目標を設定し、その目標を達成するための詳細な行動計画を立てます。

プランニングは業務改善の基盤となる部分であるため、非常に重要です。計画が不十分だと難易度が高過ぎたり、逆に低過ぎたりしてしまい、結果として業務改善がうまく進まない可能性があります。

したがって、Planのステップでは、リアルで現実的な計画を立てることが求められます。計画は可視化し、計画の進捗を確認しやすい形にすることも重要です。

Do(実行)の進め方

Doのステップでは、Planのステップで立てた計画を具体的に行動に移します。このステップでは、スケジュール通りにタスクをこなし、その結果をデータなどで記録します。

期限内に作業が進まない場合や予期しない問題が発生した場合など、計画通りに進まないケースもあります。そのため、創意工夫を凝らしながら作業を進めることが求められます。

また、チーム全員が適切に情報共有できるようになっていることも重要です。そのため、計画や作業の進捗状況、困ったことなどをリアルタイムで共有できる体制を整えることが推奨されます。

Check(評価)の重要性

次に、Checkのステップでは、Doのフェーズで得られたデータを使って業務改善の効果を評価します。達成した結果や実行の過程を元に、計画が適切だったのか、目標が適切だったのかを見直します。

Checkのステップでは、客観的かつ論理的な視点が求められます。主観や先入観に左右されずにデータを冷静に見つめることが求められます。それは、有益なフィードバックを得るうえで重要となる要素です。

また、フィードバックを迅速に行うことも大切です。それにより、次のActionのステップに時間的な余裕を持たせることができます。

Action(改善)の実践方法

最後にActionのステップです。ここでは、Checkのステップで得られた洞察をもとに、業務に対する具体的な改善策を策定し、それを実行します。このステップにおいては、フィードバックを土台に既存のプロセスの改善に取り組むことになります。

改善策が見つからない場合は、その原因を追求し、再度Planからスタートすることもあります。そのため、改善のプロセスは柔軟な思考が求められるため、創意工夫が欠かせません。

そして、Actionの結果を再度評価することで、PDCAサイクルは再び始まります。この繰り返しを組織全体で行うことで業務改善が継続的に行われます。

PDCAの回し方

PDCAサイクルを効果的に回すためのポイントについて詳しく見てみましょう。

目標の数値化と期間設定

PDCAを回す上で第一に重要なのが目標の数値化と期間設定です。意味のある改善をするためには、目的を具体的な数値で設定することが厳然たる要件です。数値目標は目標の達成度を明確にするだけでなく、進捗管理やエビデンスとしても役立ちます。

また、期間を設定することで計画の達成可能性や優先順位を視覚的に把握できます。期間設定はタスクがいつまでに完了するべきかを明示するため、期間を設定しない目標よりも具体性があります。

このように、目標を数値化し、期間を設定することで効率的なPDCAサイクルの運用が可能となります。

進捗の定期的なチェック

次に重要なのが、進捗の定期的なチェックです。進捗を定期的にチェックすることで、時期的な遅れや問題の早期発見が可能となり、早期対応や再計画が可能となります。

進捗のチェックは、業務の進行に対してリアルタイムなフィードバックを提供し、問題があった場合に即座に修正や対策を講じることが可能となります。

また、定期的に進捗をチェックすることで目標の視界を常に保ち、常にゴールに対する意識を維持します。

現実的な計画立案

現実的な計画立案は、PDCAサイクルを上手く回すための必要不可欠なステップです。現実的な計画とは、資源や時間、能力等の制約を考慮に入れた計画のことを指します。

現実的な計画立案は、達成可能な目標設定と結びつきます。達成不可能な目標は現場の士気を下げ、業務のパフォーマンスにネガティブな影響を与える可能性があります。

現実的な目標設定により、計画的なタスクの遂行が可能となり、PDCAサイクルのスムーズな回転を約束します。

持続的な改善と繰り返し

最後に、PDCAサイクルを回し続ける上で必要なのが持続的な改善とその繰り返しです。PDCAサイクルは、一度で終わりのものではなく、終わりなき繰り返しのプロセスです。

持続的に改善を行い、その結果をサイクルにフィードバックすることで、学習と改善が継続的に進んでいきます。これによりパフォーマンスの向上を実現できます。

このように、PDCAサイクルを効果的に回すためには目標の数値化と期間設定、進捗の定期的なチェック、現実的な計画立案、そして持続的な改善と繰り返しが必要となります。

PDCAのメリット・デメリット

PDCAサイクルは、組織の効率と生産性を強化するための強力なフレームワークです。しかし、それはメリットだけでなく、パフォーマンスに影響を与える可能性のあるいくつかのデメリットも持っています。以下に、PDCAの主なメリットとデメリットについて解説します。

メリット1
継続的な改善

PDCAの最大の利点のひとつは、その継続性です。PDCAサイクルは、常に改善と成長を求める組織にとって、絶えず進化する環境に対応する手段を提供します。計画、実行、検証、修正または改善の4つのステップは、周期的に組織全体を通じて繰り返され、よりよい成果を続けて得ることができます。

継続的改善はPDCAサイクルの基本的な原則で、その効果は長期にわたります。新しいプロジェクトの開始、新製品の開発、品質改善、客観的な目標の設定など、組織のあらゆる側面に適用可能です。

また、改善活動を定期的に行うことで、組織の競争力を向上させ、ビジネスパフォーマンスを最大化することができます。

メリット2
タスクの明確化

PDCAサイクルは、どのように行動すべきかを明確に示すツールとして機能し、チームの誤解を減らします。PDCAの使用により、プロジェクトの目的、目標、依存関係、リソースの割り当てなど、各タスクがより明確になります。

明確な目標や方法を持つことで、全員が到達目標に向かって一致団結できます。これは組織の生産性と効率を向上させ、エラーや不必要な作業を削減します。

また、期間と数値が明確に設定されているので、進捗状況の可視化も容易です。これにより、早期に問題をキャッチし、適切な改善策を講じることが可能になります。

デメリット1
形骸化のリスク

サイクルが形骸化するリスクがPDCAの適用上のデメリットの一つです。業務手順としてPDCAを単なる形式的なものとして扱うと、その真の価値が十分に発揮されません。計画の分析、課題の評価、そして改善の実行はすべて精密かつ深い思考が必要な作業です。

単にサイクルを回すだけでなく、それぞれのステップの内容をしっかりと理解し、必要に応じて調整することが重要です。それには組織全体の継続的なコミットメントと関与が不可欠です。

形骸化を避けるためには、定期的にサイクルを見直し、問題がある場合はその根本原因を探し出すことが大切です。

デメリット2
イノベーションが生まれにくい

PDCAサイクルは効率性と改善に重点を置いているため、新しい考え方や斬新なアイデアを生み出す場にはなりません。それは、既存の枠組み内でシステムを最適化することを指しているため、革新や創造性を阻害する可能性があります。

また、PDCAは量化可能な改善に着目しているため、定量的に測定できない課題や価値を見過ごすことがあります。これにより、ビジョンや戦略、組織風土などの重要な要素が見落とされがちです。

イノベーションを生み出すためには、既存のルールを疑問視し、挑戦的なアイデアを実現するような自由な発想が求められます。重要なのは、PDCAサイクルを適宜柔軟に適用し、それらをイノベーティブな視点と組み合わせることです。

PDCA実践のためのポイント

PDCAサイクルを最大限効果的に活用するためには、いくつかの重要なポイントを理解し、実践することが必要です。以下にその主要な要素を説明します。

「見える化」の重要性

「見える化」はPDCAサイクルの効果的な進行を保証するには不可欠です。タスク、期限、責任者を明確にし、可視化することでサイクルの進行状況を確認しやすくします。これにより計画の途中で迷子になることが少なくなります。

可視化された情報が全員に正確に伝わることでコミュニケーションの誤解が減り、進行の効率が上がります。また、予定通りに進んでいない場合でも早期に対処することが可能になるのです。

ホワイトボードや付箋、プロジェクト管理ツールなどを活用して'見える化'を実践しましょう。これにより、全体像を把握しやすくなり、詳細な進行状況と期待される結果を常にチェックできます。

「習慣化」について

「習慣化」はPDCAサイクルの継続的な運用に重要です。一度計画を立てただけでなく、その計画を実行し、結果を見て改善を施すことが習慣となることが求められます。

定期的なサイクル実施は、自身の進捗を評価し、効率よく次のステップへと進むことを可能にします。評価と改善を常に行いつつ、それを日々の業務の一部に組み込むことが大切です。

業務の一日の終わりや、週の始めなどにPDCAサイクルのステップを行う時間を設ける、など'習慣化'を具体的に行う方法は多々あります。これがPDCAサイクル全体をスムーズに回し、結果的に業務効率を向上させる力となります。

チーム全体で取り組むPDCA

PDCAサイクルは一人だけでなく、チーム全体で行うべきです。チーム全員がPDCAの一部に参加することで、その効果は大きく増します。

チームとしてPDCAサイクルを回す場合、キーポイントは全員が同じ目標に向かって働き、その過程と結果をワンチームとして共有することです。

これにより、個々の能力や視点を生かした多角的な進行と評価が可能になります。また、チームで一緒に計画を立て、実行に移し、評価を共有することでコミュニケーションの質も向上します

定常的なフィードバック

PDCAサイクルは定期的な評価とフィードバックに基づいています。フィードバックは、PDCAサイクルを“継続的な改善サイクル”にするための重要な鍵となります。

進行状況の定期的な確認と目標達成へのコミットメントを確認するためには、定期的なフィードバックが不可欠です。また、計画の見直しや改善策の素案へのコメントなども、このフィードバックの中で行います。

これにより、PDCAサイクルは、ただの“計画→実行→評価→改善”のサイクルにとどまらず、より具体的で効果的な改善を促進する継続的なサイクルへと変化します。

PDCAと他の手法との比較

PDCAは業務改善のフレームワークとして広く用いられています。しかし、PDCAだけでなく他の手法も同じ目的で利用されます。その中でも、DMAIC、SMART、OODAループ、そしてMBWAは特に注目に値します。これらの手法とPDCAとの間にはどのような類似性と相違点があるのでしょうか。

PDCAとDMAIC

まずは、PDCAとDMAICの比較です。DMAICは、シックス・シグマの一部として用いられる手法で、「Define(定義)」、「Measure(測定)」、「Analyze(分析)」、「Improve(改善)」、「Control(管理)」の頭文字を取ります。

DMAICの手法はPDCAと大変よく似ており、何れも問題解決の進行に従った業務改善手法で、定義・測定・分析・改善・管理のプロセスを経る点で一致します。ただし、DMAICはシックス・シグマに組み込まれており、その目的は業務プロセスのバリエーションを減らすことに焦点を当てている点がPDCAと異なります。

PDCAとSMART

PDCAとSMARTの比較を見ていきましょう。SMARTは、「Specific(具体的)」、「Measurable(測定可能)」、「Achievable(達成可能)」、「Relevant(関連性)」、「Time-bound(期限付き)」の頭文字を取る目標設定手法です。

SMARTの手法は、PDCAと深く関連しています。特に「PLAN」の段階においては、SMARTは目標設定の方法として有用です。 ただし、SMARTはあくまで目標設定のフレームワークであり、それを達成するための「DO」「CHECK」「ACT」のプロセスについては掘り下げません。これがPDCAとの最も大きな違いと言えます。

PDCAとOODAループ

PDCAとOODAループとの比較も重要です。OODAループは、「Observe(観察)」、「Orient(方向づけ)」、「Decide(決定)」、「Act(実行)」の頭文字をとる手法です。

PDCAとOODAループは同様にアクションのサイクルの一部として動作しますが、視点が異なります。 OODAループでは、すばやい状況判断と反応が求められ、戦場やスポーツなど、瞬時の決断が必要な状況で利用されます。一方、PDCAは比較的時間を掛けて業務改善を行うプロセスに焦点を当てています。

PDCAとMBWA

最後に、PDCAとMBWAの比較を見てみましょう。MBWAは、「Management By Walking Around(歩き回る経営)」の略で、リーダー自身が積極的に現場に足を運び、直接関わることでリーダーシップを発揮する手法です。

MBWAはPDCAとは異なり、マネジメントスタイルの一つであり、あくまでも人間関係に焦点を当てています。しかし、MBWAを実施する上でPDCAが重要な枠組みとなります。リーダーが現場に足を運び(PlanとDo)、そこで見つけた問題を評価する(Check)、そして改善策を実施して再度評価する(Act)という流れは、PDCAのそれと完全に一致しています。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム