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PLCとは? わかりやすく10分で解説

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目次

はじめに

PLCとは?

PLC(Programmable Logic Controller)とは、日本語に直訳すると「プログラム可能な制御装置」となり、主に製造ラインやエレベーターなどの稼働設備を自動的に制御するための装置を指します。その内部には専用のコンピュータが搭載されており、専門のプログラミングによりさまざまな操作を自動化してくれます。

PLCは高い信頼性を持つように設計されており、現場でのトラブルを最小限に抑えることができるのが特徴です。PLCは堅牢な筐体に格納され、過酷な環境影響からも守られているためです。また、安定した動作を保証するための二重化機能や安全装置も搭載されています。

さらにPLCは、安らかの問題が発生した場合にも迅速な解決に役立つ機能を多く有しています。例えば、プログラムのデバッグ機能やトラブルシューティング機能、持続的な改良を可能にするプログラムの更新機能などです。これらの機能により、効率的で安全な製造環境を維持します。

PLCの歴史

PLCの設計は、リレーシーケンス制御が導入された時代から始まりました。この制御方法は、初めてエレクトロニクスが製造ラインに導入され、自動化が求められるようになった時代のものです。しかし、リレーシーケンス制御は設備の規模が大きくなると配線が複雑化し、トラブルが起こり易くなるという問題がありました。

その後、1960年代に入ってコンピュータ技術が進歩すると、それを活用した新たな制御装置、PLCが登場しました。それ以来、PLCはその高い汎用性と信頼性から多くの現場で採用され、製造現場の効率化や安全性の確保に大きく貢献しています。

PLCは、その導入初期から現在まで、業界のニーズに応じて進化し続けてきました。最初のシステムは単純なものでしたが、現在では非常に高度なプログラミングを行うことができ、大規模な製造システムの全体的な制御を可能にしています。

PLCに関連する用語

PLCを理解するためには、いくつかの重要な用語を知る必要があります。例えば、「ラダー方式」「ステップラダー方式」「フローチャート方式」「SFC方式」などのプログラミング言語、そして「シーケンス制御」や「リレーシーケンス制御」などの制御方式などです。

「ラダー方式」や「ステップラダー方式」は、元々電機工事士や電気エンジニアの中で広く使われていた電気回路図を模すようなプログラミング方法で、非プログラマーでも理解しやすい形式となっています。「フローチャート方式」「SFC方式」は、より直感的で可視化されたプログラミング方法で、複雑なロジックも視覚的に理解しやすくなっています。

一方、「シーケンス制御」はシステムを一連のステップに分割し、それぞれのステップが終了したら次のステップに移るという自動制御の方式で、「リレーシーケンス制御」はその一種で、電磁リレーをスイッチとして利用したものです。

PLCとシーケンサの違い

PLCとシーケンサを比較すると、PLCの大きな特徴はそのプログラム可能性であり、製造環境の変化に対応するために、独自のプログラミングを行うことが可能です。一方、シーケンサは主に固定の順序で動作する設定で、それらの順序は基本的には変更できません。

また、PLCは省スペースで設計され、大量の情報を保存し扱うことができます。このため、製造環境のデータをリアルタイムで収集し分析することが可能です。一方、シーケンサは単一のタスクに専念する設計がなされており、その分野での性能は非常に高いものの、PLCほどの包括性はありません。

したがって、PLCとシーケンサの選択は、その使用目的や設備の規模などによって異なり、一概にどちらが優れているとは言えません。逆に両者は互いに補完しあう存在であり、適切に選択・使用することで、各種業界の製造現場で生産性や安全性を高めることが可能です。

PLCの種類

PLC (Programmable Logic Controller) は、その内部構造により主に小型ブロック式ビルディングブロック式の2つの型に分類されます。両者の特徴を理解することで、適切な種類を選択し、効果的に適用することが可能となります。

小型ブロック式PLC

小型ブロック式PLCは、その名称が示す通り、小規模な制御を主に行うためのタイプで、各機能が一体化された形を取っています。これにより、空間的制約がある場所での利用や、比較的小規模な設備に対する制御に効果を発揮します。

また、一体化されているため、設定の変更やメンテナンスも容易で、初めてのユーザでも扱いやすいのが特徴です。しかし、拡張性はビルディングブロック式に比べて劣るため、この点を踏まえて選択が求められます。

尚、小型ブロック式PLCの注意点として、拡張性が非常に限られているため、将来的に設備が大きく変更される可能性がある場合は、初めからビルディングブロック式を選択した方がよいでしょう。

ビルディングブロック式PLC

ビルディングブロック式PLCは、各ユニット(CPUユニット、I/Oユニット等)が独立しており、これによって大規模な設備またはシステムの制御に優れた拡張性を発揮します。

各機能を個別のユニットとして搭載しているため、その場での組み替えや追加などが容易にでき、動的にシステムを組むことが可能です。これにより、大規模な設備を制御したり、複雑なシーケンス制御を要したりする場合に有利です。

しかし、その拡張性から派生する複雑さゆえに、扱う上で専門的な知識や技術が必要となるため、この点も選択の際には配慮が必要です。

各PLCの使用場面と適性

小型ブロック式PLCは、製造ラインの小規模な制御や、建築物内のエレベーター、エスカレーターなどの制御に適しています。

一方、ビルディングブロック式PLCは自動車や電気機器の大規模な製造ライン、プラントなどの制御を含め、広範で複雑なタスクを効率よくこなすことが可能です。また、柔軟に設備を追加や変更することが頻繁にある場合も、その拡張性を活かしてクイックに対応できます。

したがって、使用する設備の規模や運用の機動性、拡張性の要否などを考慮し、適切なタイプのPLCを選択することが重要です。

PLCの選び方

PLCを選ぶ際に注意したい点は、具体的な使用用途設備の規模、そして今後の拡張の予定などを明確にしておくことです。後々の手間やコストを削減するためでもあります。

具体的には必要な入出力点数ソフトウェアの互換性動作環境(温度、湿度、振動、ノイズなど)、保守体制(修理や保守についてのサポートが充実しているかどうか)、価格なども考慮すると良いでしょう。

また深く理解し使いこなすためには、使用するPLCのマニュアルを読むことも欠かせません。そのため、マニュアルの分かりやすさも選び方の一つと言えるでしょう。

PLCの制御方法とプログラミング

PLC制御とは、生産設備や建築設備などの稼動を制御するためにPLC装置をプログラムすることで行われます。これには主にラダー方式、ステップラダー方式、フローチャート方式、そしてSFC方式という4つの制御方法があります。それぞれの制御方法には特徴と利用場面があり、目的に応じて適切に選択します。

また、PLC制御は各種のセンサーやアクチュエータの信号などを制御することで生産設備を制御します。そのため、良好なプログラミング技術が求められます。それでは次に、それぞれの制御方法を詳しく見ていきましょう。

ラダー方式

ラダー方式とは、電機制御の基本的な理論をそのまま応用した概念であり、初心者にも理解しやすい方法の一つです。この方式では、制御装置に入出力をラダー状の回路図としてプログラムすることにより制御します。

ラダー方式はその名前の通り、ラダーや階段のように見えます。これにより、入力信号が出力信号にどのように影響を与えるかを直感的に理解することができます。非常に視覚的で直感的な方式であるため、初めてPLC制御を学ぶ人には特に有用です。

また、ラダー方式では一度に複数の条件や操作をプログラムすることができます。しかし短期間で大規模な制御を行うためには、別の方式を検討する方が良い場合もあります。

ステップラダー方式

ステップラダー方式はラダー方式に1つまたは複数の条件分岐(ステップ)を追加した方式です。これにより、より複雑な制御をあらわすことができます。

ステップラダー方式では、ステップによる条件分岐を表現できるため、細やかな制御が要求される場合にも適しています。また、プログラムの見通しや可読性も高いため、複数のエンジニアが協力してプロジェクトを進める際にも有用です。

しかし、この方式では多くのステップが必要になると、プログラムが複雑化し、管理が難しくなることもあります。したがって、制御が単純である場合や必要なステップが少ない場合は、ラダー方式を使用する方が適しているかもしれません。

フローチャート方式

フローチャート方式は、プログラムの流れを視覚的に表現するための方式で、一連の操作や判断をフローチャートであらわします。プログラムの進行に応じてさまざまなタスクを組み合わせることができます。

フローチャート方式は、プログラムの流れが直感的に理解できるため、複雑な制御を行う場合や初学者にとって理解しやすい方式の一つです。また、各操作が明確に区別されているため、効果的なデバッグが可能です。

ただし、フローチャート方式は複雑なプログラムを作成する場合、大規模なフローチャートが必要となります。したがって、この方式は比較的小規模かつ単純な制御に適しています。

SFC方式

SFC(シーケンシャル・ファンクション・チャート)方式は、制御の順序を視覚的に表現するための方式です。ステップラダー方式と同じく、条件分岐やループなどの機能を提供します。

SFC方式は、プロセスの流れが視覚的に表現されているため、比較的複雑な制御を短時間でプログラムできます。また、規模が大きくなりがちな制御においても適用可能です。

また、SFC方式では各ステップが別々の関数ブロックとして扱われ、これによりプログラムの保守性や再利用性が大幅に向上します。ただし、他の方式と比べて学習曲線が急なため、初心者には不向きかもしれません。

PLCの導入メリット

PLC (Programmable Logic Controller)の導入には多くのメリットがあります。主なものとして、制御盤の小型化、簡単な回路設計、生産効率の向上、そしてコスト削減があります。これらのメリットを詳しく見ていきましょう。

これらの特長はPLCが工場や設備での制御システムを手間なく効率的に運用するための基本的な要素です。これらにより、設備の信頼性が向上し、長期的な生産性向上につながっています。

それでは、具体的にPLCがどのようにこれらのメリットをもたらすのか解説していきます。

制御盤の小型化

PLCを導入する一つ目のメリットは制御盤の小型化です。従来のリレーシーケンス制御では、物理的なリレーを配線で接続するため、大きな制御盤が必要でした。しかし、PLCによる制御では、物理的な配線の代わりにプログラムを用いるため、制御盤は劇的に小型化が可能です。

制御盤の小型化により、設置スペースが限られた場所でも容易に設置できます。加えて、移設や改装の際の負担も軽減します。

さらに、PLCは耐環境性に優れているため、各種設備の制御盤として広範な環境下で利用することが可能です。

簡単な回路設計

PLCの導入による次のメリットは簡単な回路設計を可能にすることです。PLCでは複雑なシーケンス操作もプログラミングにより実現でき、回路設計の手間と時間を大幅に短縮します。

加えて、デジタル技術の進化により、PLCのプログラミングは直感的で視覚的なインターフェースが可能になり、学習コストの軽減とともに信頼性の向上に寄与します。

シーケンス制御の変更や追加もプログラムの修正だけで行えます。これにより設計変更の手間とコストを大幅に縮小することが可能です。

生産効率の向上

PLCの導入で強調すべき次のメリットは生産効率の向上です。プログラミングにより独自の制御ロジックを実装できるため、生産ラインの自動化と最適化を実現します。

また、PLCはリアルタイム性に優れ、遅延なく制御を行うことが出来ます。これは、生産ラインに必要なタイミングや連携を正確に制御するため、大幅な生産効率の向上を可能にします。

PLCにはネットワーキング機能もあり、設備間の連携や生産情報の集約が可能です。これにより、設備の運用状況をリアルタイムで把握し、適切な判断を行うことができます。

コスト削減

最後にPLCの導入メリットとしてコスト削減が挙げられます。PLCの高度な制御機能により設備の故障発生率を低減し、修理やメンテナンスコストを削減します。

また、上述の制御盤の小型化や生産効率の向上等により、設備の初期投資と運用コストを抑えます。これは一方で、高品質な製品生産を実現し、顧客満足度を高めます。

さらに、システムの低電力化により、電力コストの削減にも寄与します。これら全てが、総合的なコスト削減へとつながります。

PLCの構成要素

PLCは、高度な制御を行うために、特定のハードウェアコンポーネントが含まれています。その主な要素は入出力ユニット(I/Oユニット)、CPUユニット、メモリユニット、電源ユニットとなります。これらの各部品の機能について解説します。

入出力ユニット(I/Oユニット)

入出力ユニット(I/Oユニット)は、機械またはプロセスからの入力信号を受け取り、それをプロセッサに送るためのデバイスです。これは、PLCが外部環境と「通信」するための手段となります。 このI/Oユニットは、アナログ入力・アナログ出力・デジタル入力・デジタル出力の4種類に分けられます。アナログ入力は、センサーなどから得られる連続した値を読み込むもので、デジタル入力はスイッチなどからの2つの状態(ON/OFF)を扱います。それぞれの出力も同等の機能を有します。 また、これらのユニットは、必要な数だけ追加可能で、その柔軟性がPLCの大きな特長となっています。

CPUユニット

CPUユニットはPLCの心臓部とも言える部分です。これは、制御プログラムを読み込み、それに基づいて全体の動作を制御します。CPUユニットは、元になるアーキテクチャやプロセッサの性能によって性能が異なり、その選択はシステム要件によって決まります。 CPUユニットは、入力ユニットからのデータを受け取り、その情報に基づいて出力ユニットに指示を送ります。このCPUユニットの能力が高いほど、PLCは高速化し、複雑な処理を遂行する能力も向上します。 CPUは、通常の使用だけでなく、診断やエラー検出の機能も提供します。これにより、システムメンテナンスが容易です。

メモリユニット

メモリユニットは、PLCの制御プログラムやデータを保存するための部分です。このユニットは、PLCの機能を確実に支え、それをリアルタイムで行うために必要とされる部品となります。 メモリユニットの容量は、制御すべき機械の複雑さや必要なデータの量など、アプリケーションの要件によって決まります。確定値を保存するためのデータメモリと、プログラムを保存するプログラムメモリの二種類が存在します。 また、一部のPLCでは、安全性向上のために、バッテリーバックアップ機能を備えたメモリユニットも存在します。これにより、電源が落ちてもプログラムやデータが失われないようになっています。

電源ユニット

PLCのすべての機能を供給するためには、電気エネルギーが必要となります。そのため、PLCには必ず電源ユニットが組み込まれます。 電源ユニットは、外部からAC電源を受け取り、それをPLCの動作に必要なDC電源に変換します。通常、CPUユニットや入出力ユニットなど、PLCの各ユニットに電力を供給します。 電源ユニットの規模や性能は、全体のシステムの規模や必要な電力により異なります。そのため、電源ユニットの選定は非常に重要となります。また、電源ユニットはPLCが安全に稼働するためにも重要です。

PLCの今後

PLCの応用事例、効果的な活用方法、技術動向、未来予測、そして注目のトピックについて詳しく見ていきます。

PLCの応用事例

PLCは極めて多様な領域で活用されています。その範囲は、工場の製造ラインからエレベーター、エスカレーター、自動ドアなどの機械設備まで及びます。

たとえば、自動車製造工程では、PLCは組立ラインの各ステーションを制御し、生産効率を最大化します。また、電子機器の製造でもPLCは欠かせない要素で、信頼性と精度の高い生産を実現しています。

このように、PLCは我々の生活の中で無数の機械や設備の操作を裏で支えています。

PLCを効果的に活用するための注意点

PLCを最大限に活用するには、その特性と能力を理解し、適切なプログラミング技術を用いることが重要です。

また、システムの安全性、信頼性、生産性を確保するためには、適切な設備メンテナンスとPLCのプログラム更新を定期的に行うことが必要です。これにより、機械設備の故障率を低減させるとともに、生産コストを削減することが可能となります。

さらに、PLCの持つ制御盤の小型化、簡易な回路設計、効率的な動作変更などの機能を最大限に活用することで、業務効率の大幅な改善が期待できます。

PLCの技術動向と未来

PLCの技術は急速に進化しており、その活用範囲も広がりつつあります。

例えば、ワイヤレス通信技術やクラウドベースのデータ分析の進歩により、リモートからのPLC操作や設備の監視、故障予測などが可能となると予測されています。

より強力で効率的なPLCの登場により、制御技術はさらなる革新を遂げることでしょう。

PLC業界で注目されているトピック

PLC業界で話題となっている一つは、AI(人工知能)の導入です。

AIを活用することで、PLCは以前では考えられなかった先進的な特性を持ち、より高度な操作を可能にします。具体的には、パターン認識や機械学習技術を用いて、機械が動作パターンを自動で最適化したり、予測モデルを作成したりして将来の故障を事前に防ぐなどの新たな可能性を秘めています。

また、PLCの運用は異なる産業においても共通点が多く、既存の知識や経験を別の応用分野に生かすことが容易になっています。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム