RAID60は、「高い耐障害性(RAID6)」と「高いスループット(RAID0)」を、ある程度バランス良く両立したいときに検討されるストレージ構成です。ただし、構成が複雑になる分、“どこまで壊れても大丈夫か”は条件つきになります。ここでは、RAID60の考え方と、誤解されやすいポイントを整理します。
RAID60は、複数のRAID6グループを作り、それらをRAID0(ストライピング)で束ねる構成です。目的は、RAID6が持つ「2台故障に耐える強さ」をベースにしつつ、グループを分けて束ねることで、読み書きの並列性(スループット)を取りやすくすることです。
RAID60ではデータがブロック単位で分散配置されます。RAID6側ではパリティ(復元情報)を2系統持つため、同一RAID6グループ内で最大2台までのディスク故障なら、通常はデータを保ったまま運用継続できます(※実装や状態により挙動は異なります)。
なお、「3台以上壊れても稼働できることがある」という点は、“条件が揃えば起こりうる”という意味であり、RAID60の一般的な保証ではありません。たとえば、3台故障でも「各RAID6グループに分散していて、どのグループも2台故障を超えていない」場合は稼働できる可能性があります。一方で、同一RAID6グループに3台故障が集中すると、そのグループが維持できず、結果として全体のデータ喪失につながる可能性が高くなります。
RAID60の特徴は、「RAID6のグループ分割」と「グループ間ストライピング」です。グループを複数に分けることで、同時に扱えるディスクが増え、ワークロードによってはスループットを上げやすくなります。
容量効率は、同容量ディスクで考えると、RAID6グループごとにディスク2台分がパリティ相当として差し引かれるイメージです。ざっくり言えば、(各グループの本数 − 2)× ディスク容量をグループ分合計したものが、実効容量の目安になります。
性能面は「ディスク本数に比例して必ず伸びる」と断定するのは危険です。コントローラ性能、キャッシュ、筐体帯域、I/Oの種類(ランダム/シーケンシャル、読み中心/書き中心)で結果が変わります。特にRAID6はパリティ計算があるため、書き込みはワークロード次第で伸びにくいことがあります。
RAID60は、RAID5/RAID50よりも耐障害性(2台故障耐性)を重視しつつ、単体のRAID6よりも並列性(スループット)を取りやすい構成です。その代わり、ディスク本数・構成・運用の難易度が上がり、コストも増えやすくなります。
「どれが最適か」は、性能要求(IOPSが欲しいのか、スループットが欲しいのか)と、許容できるコスト、運用体制(監視・交換・復旧の手順)で決まります。
RAID60は、次のように「容量」「継続運用」「一定の性能」を同時に求められるケースで候補になります。
一方で、予算が厳しい、または運用体制(監視・交換・復旧)が回せない環境では、RAID60を選ぶメリットが薄れることもあります。
RAID60は「構築」よりも「運用」を含めて設計するのが重要です。ここでは、一般的な考え方としての手順と注意点を整理します。
RAID60は、まずRAID6グループを複数作り、次にそれらをRAID0で束ねます。RAIDコントローラやストレージ装置の管理画面では、RAIDレベルとして「RAID60」が選べることもあれば、「RAID6を複数作成→その上でストライプ(RAID0)を構成」という手順になることもあります。実際の手順は機器仕様に従ってください。
ディスク本数は、一般的な理解として最低8本(RAID6を2グループ、各4本)からが目安になります。グループを増やす場合は、RAID6グループの単位でディスクが増えるイメージです(例:4本×グループ数)。
選定の基本は、同容量・同等性能です。混在させると遅いディスクや小さい容量に引っ張られ、容量・性能の見積もりが崩れやすくなります。
耐久性の観点では、24時間稼働や高負荷が想定される場合、用途に合うグレード(例:NAS向け/エンタープライズ向けなど)を選ぶのが一般的です。また、RAID60は本数が増えるため、冷却・電源・振動対策の影響も無視できません。性能だけでなく、故障率や保守性(交換しやすさ、調達しやすさ)も含めて考えます。
「ヘッドの移動距離が短くなるような配置」という言い方は、現在の一般的なRAID運用では効果が読みづらく、設計指針としては曖昧です。現実的には、交換しやすい配置、取り違えにくいラベル運用、スロット番号とシリアルの管理のほうが、障害時の事故を減らしやすいです。
パフォーマンス調整は、主に次で決まります。
本文中の「10冊以上」は誤記なので、「10本以上」が自然です。ただし、「10本を超えると伸びが薄れる」といった断定は環境差が大きいため、ここでは避け、ボトルネックが別要因に移ることがある(コントローラや筐体帯域など)という表現に留めるのが安全です。
RAID60では、原則として各RAID6グループで2台までの故障に耐える設計です。障害が発生した場合は、管理画面(RAID管理ソフト/コントローラ)で故障ディスクを特定し、正しい手順で交換します。交換後はリビルド(再構築)が走り、パリティ情報を使ってデータが再生成されます。
注意点は、同一RAID6グループで3台故障が発生すると復旧が難しくなることです。さらに、リビルド中は負荷が上がりやすく、性能低下や追加故障のリスクも上がります。だからこそ、監視(通知)と、交換までの時間を短くする運用、そしてバックアップが重要です。
RAID60は「RAID6グループを複数束ねる」ことで、ワークロードによっては読み書きの並列性を取りやすくなります。一方で、RAID6はパリティ計算が絡むため、書き込み性能は条件次第で伸びにくいことがあります。
本文にある具体的なベンチマーク値(例:560.3MB/s、54MB/s)は、測定環境・条件の情報がない状態で載せると、事実誤認(読者に誤解を与える)になりやすいです。ここでは、“条件により大きく変わる”という前提を置き、数値の断定は避けるのが安全です。
本数を増やすこと自体は並列性に効く場合がありますが、同時にコントローラ、筐体帯域、キャッシュ、ネットワークなど別のボトルネックに当たりやすくなります。実運用に近い負荷でテストし、目的(スループットか、IOPSか、レイテンシか)を明確にして調整するのが現実的です。
RAID60は、構成次第で同時並列I/Oを捌きやすくなる一方、パリティ計算の影響や、リビルド時の負荷上昇など、状況によって性能が大きく揺れることがあります。「常に強力」と言い切るより、“条件が合えば強みが出る”という形にしておくと、読み手の判断がしやすくなります。
実務で効くポイントは、性能だけでなく、運用を含めた設計です。
障害対応で一番効くのは、早く気づけることです。S.M.A.R.T.やコントローラアラート、メール通知、監視ツールなどで異常を検知し、冗長性が落ちた状態を放置しない運用が重要です。
また、RAIDは「ディスク故障への耐性」であり、誤削除・ランサムウェア・論理破損を防ぐものではありません。RAID60に頼り切らず、別媒体や別拠点へのバックアップもセットで考えます。
基本は、(1)故障ディスクの特定、(2)正しいディスクの交換、(3)リビルドの監視、です。取り違え(誤って正常ディスクを抜く)は致命傷になり得るため、スロット番号・シリアル番号・ラベルなどで手順を固めます。
RAID60は条件が合えば複数台故障でも継続できる可能性がありますが、一般論として「3台以上でも回復可能」と断定するのは危険です。復旧の可否は、故障がどのRAID6グループに集中したかで決まります。
特に、同一RAID6グループで3台故障が発生した場合、復旧が難しくなり、バックアップからの復元が必要になる可能性が高まります。だからこそ、バックアップは最後の砦として必ず用意します。
長期運用では、定期点検(ログ・エラー・温度・リビルド履歴)、ファームウェア更新、交換手順の整備、予備ディスク確保が効きます。温度は故障率に影響するため、冷却と埃対策も重要です。
RAID60は、データ量が増え続ける環境で「止めない運用」を支える選択肢のひとつです。一方で、SSDの普及や分散ストレージ、クラウドストレージなど選択肢も増えています。今後も「要件(性能・可用性・コスト・運用)に合うか」で採用が判断される技術として位置づけられます。
新技術の登場でストレージ設計の選択肢は広がっています。RAID60はその中でも「既存のRAID運用の延長線上で、高い耐障害性を取りたい」場面で引き続き検討されるでしょう。
大容量化・高速化の要求が強いほど、RAID構成だけでなく、コントローラ、ネットワーク、バックアップ、運用設計まで含めた最適化が重要になります。RAID60は“構成の名前”ではなく、運用まで含めた設計の一部として扱うのが現実的です。
ディスク故障による停止リスクを下げ、運用継続性を高めることは、ビジネスへの影響を小さくします。ただし、RAIDだけで守れる範囲には限界があるため、バックアップや復旧手順も含めて初めて、ビジネスへの効果が安定します。
データ量が増え続ける限り、冗長性と性能を両立する設計需要は続きます。RAID60もその選択肢として残り続けますが、導入判断は「RAID60が良いか」ではなく、要件と運用体制に合うかで決まるでしょう。
RAID60は、複数のRAID6グループをRAID0で束ねる構成で、RAID6の高い耐障害性(同一グループ内で2台故障まで耐える)を土台にしつつ、グループ分割によってスループットを取りやすくする設計です。
ただし、「何台まで壊れても大丈夫か」は単純ではありません。たしかに、故障がグループに分散すれば複数台故障でも継続できる可能性がありますが、同一RAID6グループに3台故障が集中すると復旧が難しくなります。だからこそ、監視(通知)・交換手順・予備ディスク・バックアップを含めた運用設計が前提になります。
結論として、RAID60は「強い構成」ですが、「任せれば安心」ではありません。性能と可用性の期待値を正しく置き、運用まで含めて採用を判断するのが現実的です。
複数のRAID6グループを作り、それらをRAID0(ストライピング)で束ねた構成です。RAID6の耐障害性をベースに、並列性(スループット)を取りやすくします。
一般的には8本(RAID6を2グループ、各4本)が目安です。実装や製品仕様によって条件が異なるため、最終的には機器の仕様を確認してください。
原則として各RAID6グループは2台故障まで耐える設計です。複数台故障でもグループに分散していれば継続できる可能性がありますが、同一グループに3台故障が集中すると復旧が難しくなる可能性が高いです。
条件が揃えば起こりえますが、一般的な保証ではありません。故障が各RAID6グループに分散していて、どのグループも2台故障を超えていない場合に限り、稼働できる可能性があります。
なりません。誤削除、ランサムウェア、論理破損はRAIDにも反映されます。別系統のバックアップが必要です。
同容量ディスクの場合、各RAID6グループで「(本数−2)×容量」が実効容量の目安になります。RAID60全体では、その合計が概算になります。
一概には言えません。ワークロードやコントローラ性能、筐体帯域などのボトルネック次第で伸び方は変わります。特に書き込みはパリティ計算の影響を受けやすいです。
正常なディスクを誤って抜く取り違えは致命的になり得ます。スロット番号・シリアル・ラベルで確認し、手順に沿って交換してください。独断での初期化や構成変更も避けるべきです。
監視(通知)で冗長性低下を見逃さないこと、交換までの時間を短くする体制、予備ディスクの確保、そしてバックアップを含めた復旧計画です。
大容量データを扱い、止めずに運用したい環境で、RAID6相当の耐障害性と一定のスループットを両立したい用途に向きます。予算や運用体制も含めて判断するのが重要です。