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共通鍵暗号とは? わかりやすく10分で解説

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目次

共通鍵暗号方式とは

共通鍵暗号方式は、暗号化(Encryption)と復号(Decryption)で同じ鍵を使う暗号方式です。「対称鍵暗号方式(Symmetric-key cryptography)」「シンメトリックキー暗号」とも呼ばれます。

現代のインターネットや業務システムでも、共通鍵暗号は中心的に使われています。たとえばHTTPS(TLS)では、通信相手の正当性確認や鍵交換に公開鍵暗号を使い、その後の大量データの暗号化は高速な共通鍵暗号(例:AES)で行うのが一般的です。

共通鍵暗号方式の定義

共通鍵暗号方式は、送信者と受信者が同一の秘密鍵(共通鍵)を共有し、その鍵を用いてデータを暗号化・復号する方式です。鍵が第三者に知られていなければ、暗号文を途中で見られても内容を読み取られにくく、情報の機密性を確保できます。

共通鍵暗号方式の特徴

  • 高速:一般に公開鍵暗号より計算負荷が小さく、通信やストレージの暗号化に向きます。
  • 大容量データに強い:ファイル暗号化、VPN、TLSのデータ保護などで広く使われます。
  • 鍵共有が課題:相手と同じ鍵を持つ必要があるため、鍵を安全に渡す仕組みが重要です。

共通鍵暗号方式で使用する鍵について

共通鍵暗号で使う鍵は、暗号化・復号の両方に直接影響します。鍵が漏えいすると、攻撃者は暗号文を復号できる可能性が高くなります。そのため、鍵は以下の観点で扱う必要があります。

  • 生成:十分な長さとランダム性を持つ鍵を生成する
  • 保管:OSの保護機構、HSM、TPM、鍵管理サービス等を用いて保護する
  • 配布・共有:安全な鍵交換(TLSのハンドシェイク等)や事前配布の運用を設計する
  • 更新・失効:漏えい時の切替、定期ローテーション、アクセス権限の見直しを行う

共通鍵暗号方式の利点と課題

利点

  • 処理が速いため、リアルタイム通信や大容量データ暗号化に向きます。
  • 適切なアルゴリズムと運用(鍵長、モード、実装)で高い実用的安全性が得られます。

課題

  • 鍵の共有・配布:当事者間で同じ鍵を安全に持つ必要があります。
  • 鍵の漏えい耐性:鍵が漏れると過去・現在の通信やデータが一気に危険になります(設計によって影響範囲は変わります)。
  • 参加者が増えるほど管理が難しくなる:多数の相手と安全に鍵を共有する設計が必要です。

共通鍵暗号方式の暗号化と復号

共通鍵暗号方式では、送信者と受信者が同じ鍵を保持していることが前提です。この前提のもとで、暗号化と復号は次の流れで行われます。

共通鍵暗号方式における暗号化のプロセス

  1. 送信者が、平文(元のデータ)と共通鍵を用いて暗号化処理を行う
  2. 暗号文(暗号化されたデータ)を受信者へ送信する

暗号化は、アルゴリズム(例:AES)と鍵、必要に応じてIV/Nonce(初期化ベクトルやナンス)などの値を用いて実行されます。ここでの設計(モードやNonceの扱い)を誤ると、安全性が大きく低下するため注意が必要です。

共通鍵暗号方式における復号のプロセス

  1. 受信者が暗号文を受け取る
  2. 受信者が同じ共通鍵(および必要なパラメータ)を用いて復号し、平文を得る

暗号化と復号に使用する同一鍵の管理方法

共通鍵暗号では、鍵管理がセキュリティの中核です。特に、以下を意識すると実装・運用の事故が減ります。

  • 鍵の保護:平文のままファイルに置かない、アクセス権を絞る、秘密情報として扱う
  • 鍵の分離:用途別に鍵を分け、使い回しを避ける(通信鍵・保存鍵・バックアップ鍵など)
  • ローテーション:期限やイベント(漏えい疑い等)に応じて鍵を更新する
  • 監査:鍵の利用・取得をログに残し、異常検知に活かす

鍵の共有と「信頼性」維持の重要性

共通鍵暗号方式は、鍵を当事者間で共有する必要があるため、鍵交換が弱点になりやすいのは事実です。ただし現代のシステムでは、TLSのように公開鍵暗号や鍵交換プロトコルを組み合わせて安全にセッション鍵(共通鍵)を合意する設計が一般的です。

なお、ここで重要なのは「信憑性」というより、通信相手の真正性(なりすましがないこと)と、鍵が第三者に渡っていないことを担保することです。脆弱性は、鍵交換や実装(設定ミス・乱数不備・鍵の再利用など)で発生しやすいため、方式だけでなく運用・実装品質が重要になります。


共通鍵暗号方式と情報セキュリティ

共通鍵暗号方式の有用性

共通鍵暗号は高速で、大容量データの暗号化に適しています。そのため、TLS通信のデータ保護、VPN、ディスク暗号化、バックアップ暗号化、アプリ内データ保護など、幅広い場面で使われます。

共通鍵暗号方式の情報漏えいリスクと対策

最大のリスクは鍵の漏えいです。鍵が漏れると暗号文の機密性が崩れます。対策としては、鍵のライフサイクル管理(生成・配布・保管・利用・更新・破棄)を制度と技術の両面で整えることが基本です。

  • 鍵を安全な保管領域(HSM/TPM/鍵管理サービス等)で扱う
  • アクセス権限を最小化し、取得・利用のログを残す
  • 用途別に鍵を分け、漏えい時の影響範囲を小さくする
  • 定期更新と、漏えい疑い時の即時切替手順を用意する

共通鍵暗号方式におけるセキュリティレベルの確保

共通鍵暗号の安全性は、主にアルゴリズム選定鍵長運用(Nonce/IVの扱い、鍵の更新、実装品質)で決まります。アルゴリズムが「複雑かどうか」よりも、標準化と検証が進んだ方式を正しく運用することが重要です。

また、サイドチャネル攻撃(消費電力・処理時間・電磁波などから情報を推測する攻撃)への耐性は、実装やハードウェア設計の影響を強く受けます。必要に応じて物理対策や実装対策(一定時間化、マスキング等)を検討します。

安全な鍵の配布と管理

鍵の配布は「安全なチャネル」か「安全な鍵交換」によって行うのが基本です。大規模環境では、鍵を一元管理する仕組み(KMS/HSM、組織内の鍵管理ポリシー)を整備し、配布・更新・失効を統制します。


共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式の比較

共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式は、役割分担して併用されることが多い暗号方式です。違いを整理すると、設計意図が理解しやすくなります。

基本概念の違い

  • 共通鍵暗号方式:暗号化と復号に同じ鍵を使用(鍵共有が必要)
  • 公開鍵暗号方式:暗号化と復号に異なる鍵を使用(公開鍵で暗号化、秘密鍵で復号。鍵共有の性質が異なる)

処理速度の違い

一般に、共通鍵暗号方式は高速で大容量データ向きです。公開鍵暗号方式は計算負荷が高い傾向があり、主に鍵交換や電子署名など「少量データ・高い仕組み上の要件」を担う用途で使われます。

セキュリティの捉え方

「強い/弱い」を単純比較するより、どこがリスクになりやすいかで見るのが現実的です。

  • 共通鍵暗号:鍵共有と鍵漏えいが致命点になりやすい(漏えい時の影響が大きい)
  • 公開鍵暗号:秘密鍵保護が最重要。加えて証明書や検証手続きなど、周辺の仕組みも含めて安全性が決まる

適用シーン

  • 共通鍵暗号方式:TLSのデータ暗号化、VPN、ディスク暗号化、ファイル暗号化など
  • 公開鍵暗号方式:TLSの鍵交換・サーバー認証、電子署名、証明書ベースの認証など

共通鍵暗号方式の今後

共通鍵暗号方式は、今後も「高速に大量データを守る」役割で重要性が続きます。一方で、運用や計算環境の変化(特に量子計算)を踏まえた設計が求められます。

現行の通信システムでの利用

インターネット通信(TLS)では、セッション鍵(共通鍵)でデータを暗号化する構成が一般的です。共通鍵暗号は高速であるため、今後も通信・保存の多くの場面で中核技術として利用され続けます。

IoTデバイスやブロックチェーン周辺での位置づけ

IoTでは、計算資源や電力に制約があるため、共通鍵暗号の高速性・実装効率は大きな利点になります。ブロックチェーンの中核はハッシュや公開鍵署名が中心になりがちですが、ウォレットの暗号化や機密データの保護、通信の保護など「周辺領域」で共通鍵暗号が使われる場面は多くあります。

量子コンピュータによる影響と対策

量子計算の影響は、一般に公開鍵暗号のほうが大きいとされています。一方で共通鍵暗号も無関係ではなく、探索系の量子アルゴリズムにより安全余裕が減る前提で、十分な鍵長を確保するといった対策が検討されます(例:鍵長の引き上げ、アルゴリズム選定の見直し)。

共通鍵暗号技術の将来

今後は、アルゴリズムそのものよりも「正しい使い方(モード・Nonce/IV・鍵管理)」の重要性がさらに高まります。ゼロトラストやクラウド移行が進むほど、鍵管理(KMS/HSM)と運用統制が、共通鍵暗号の実効性を左右するポイントになります。


FAQ(よくある質問)

Q. 共通鍵暗号方式とは何ですか?

A. 暗号化と復号で同じ鍵を使う暗号方式です。対称鍵暗号方式(シンメトリックキー暗号)とも呼ばれます。

Q. 共通鍵暗号方式の最大のメリットは?

A. 一般に処理が高速で、大容量データの暗号化に向く点です。通信やストレージ暗号化で広く使われます。

Q. 共通鍵暗号方式の最大の課題は?

A. 鍵の共有・配布と、漏えいを防ぐ運用です。鍵が漏れると暗号文を復号される可能性が高くなります。

Q. TLS(HTTPS)でも共通鍵暗号は使われますか?

A. 使われます。TLSでは鍵交換や認証に公開鍵暗号を使い、その後の通信データの保護は共通鍵暗号で行うのが一般的です。

Q. 共通鍵暗号は「アルゴリズムが簡単」だから安全なのですか?

A. 「簡単/複雑」より、標準化され検証が進んだ方式を正しく使うことが重要です。鍵長、モード、Nonce/IV、実装品質、鍵管理が安全性を左右します。

Q. 鍵長は長いほど良いのですか?

A. 一般に長いほど総当たり攻撃に強くなりますが、方式・運用・要件に応じて適切な鍵長を選びます。むやみに長くすれば万能というわけではありません。

Q. 鍵を安全に共有する方法は?

A. 現代の通信ではTLSの鍵交換のように公開鍵暗号や鍵交換プロトコルを用いてセッション鍵(共通鍵)を合意する方法が一般的です。組織内ではKMS/HSM等で配布と統制を行います。

Q. 共通鍵暗号と公開鍵暗号はどちらが強いのですか?

A. 単純な優劣ではなく役割が違います。共通鍵暗号は高速なデータ保護、公開鍵暗号は鍵交換や署名・認証に強みがあり、併用されるのが一般的です。

Q. サイドチャネル攻撃とは何ですか?

A. 消費電力や処理時間、電磁波など「計算の痕跡」から鍵などを推測する攻撃です。実装対策やハードウェア対策が重要になります。

Q. 量子コンピュータは共通鍵暗号にも影響しますか?

A. 影響がゼロではありません。一般に公開鍵暗号のほうが影響が大きいとされますが、共通鍵暗号も安全余裕が減る前提で鍵長の見直しなどが検討されます。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム