業務も生活もオンラインが前提になった今、サイバー攻撃は「特別な企業だけの話」ではなくなりました。メール1通、添付ファイル1つ、いつものログイン操作――そのどこかに、攻撃の入口が混ざっていることがあります。中でもトロイの木馬は、ユーザー自身に「安全そうだ」と思わせて実行させる点が厄介で、被害のきっかけが見えにくい攻撃として知られています。
本記事では、トロイの木馬の基本(定義・由来)から、代表的な種類、感染から遠隔操作に至る流れ、実例、そして日常的に実践できる対策までを整理します。読み終える頃には、怪しい挙動を「何が起きている可能性があるか」と結びつけ、自分や組織で取るべき対策を判断できるようになります。
現代社会では情報化が急速に進み、生活や業務はインターネットと深く結びついています。その一方で、サイバー攻撃という脅威も拡大し、個人・企業を問わず被害が増えています。
サイバー攻撃とは、インターネットなどのネットワークを介して、他人のコンピューターやシステムに不正にアクセスしたり、情報を盗んだり、システムを停止・破壊したりする行為の総称です。個人情報の漏えい、企業の機密情報流出、金銭被害、業務停止など、影響範囲は広く、復旧に時間とコストがかかるケースも少なくありません。
なかでもトロイの木馬は、侵入方法や攻撃目的が多岐にわたり、「気づかないうちに内部に入り込み、別の攻撃の踏み台になる」こともあるため注意が必要です。被害を防ぐには、仕組みと手口を理解したうえで、日常の行動と運用を整えることが欠かせません。
本記事ではトロイの木馬をわかりやすく整理し、具体的な防ぎ方まで提案します。サイバー攻撃から自分や組織を守るための基礎知識として役立ててください。

トロイの木馬は、一見すると正常なソフトウェアやファイルに見せかけながら、内部に悪意あるプログラムを潜ませるマルウェアの一種です。ユーザーが「便利そう」「安全そう」と思って自ら実行してしまう点が特徴で、感染のきっかけが利用者側の操作にあることも多くあります。
マルウェアとは、ユーザーの意図に反して不正な動作を行う悪意あるソフトウェアの総称です。トロイの木馬はその中でも、ファイル名やアイコン、説明文などを装ってユーザーを欺き、実行させることで侵入します。
トロイの木馬自体は「侵入後に何をするか」が種類によって異なります。情報窃取、遠隔操作、別のマルウェアの呼び込み、暗号化による身代金要求など、目的が幅広いため、単体で完結するというより攻撃の入口・土台として使われることもあります。
名称は、古代ギリシャの伝承「トロイ戦争」に由来します。木馬の内部に兵士を隠し、敵に「贈り物」として受け入れさせて城内に侵入した逸話になぞらえ、「無害に見せかけて内部に入り込む」性質を表しています。
コンピュータの世界でも、古くから同様の概念は存在し、現在はメール、Web、クラウド、モバイルなど環境の変化に合わせて手口が巧妙化しています。重要なのは「昔からある=単純」という理解ではなく、いまの利用環境に合わせて攻撃が進化している点です。
トロイの木馬は「侵入後の目的」によっていくつかの型に分けられます。ここでは代表的なタイプを取り上げ、何が危険なのかを整理します。
バックドア型トロイの木馬は、感染端末に外部から侵入できる“裏口”を作り、攻撃者が遠隔操作できる状態にします。これにより、追加のマルウェアを導入したり、内部ネットワークへ横展開したり、情報を持ち出したりと、被害が連鎖しやすくなります。
ダウンローダ型トロイの木馬は、感染した端末上で別のマルウェアをダウンロード・実行します。最初は軽量なプログラムとして潜み、検知を逃れたあとに本命の攻撃(ランサムウェアなど)を展開する流れが典型です。
インフォスチーラ型トロイの木馬は、パスワード、ID、クレジットカード情報、ブラウザに保存された認証情報、業務データなどを盗み出す目的で設計されます。盗まれた情報は不正ログインや金銭被害だけでなく、なりすまし・追加侵入の足がかりにもなります。
ランサムウェア型トロイの木馬は、ファイルやシステムを暗号化して利用不能にし、復号の対価として金銭を要求します。近年のランサムウェアは、暗号化だけでなく、情報を盗んで公開をちらつかせる「二重恐喝」につながるケースもあるため、被害の性質がより深刻化しています。
バンキングトロイの木馬は、オンラインバンキングや決済を狙い、偽のログイン画面表示や通信の盗聴などで認証情報を奪います。見た目が本物に近いほど気づきにくく、端末側が感染している場合は、正規サイトにアクセスしていても被害が起きることがあります。
トロイの木馬が厄介なのは、「侵入させる段階」と「侵入後の行動」が分業化され、気づきにくい形で進行する点にあります。ここでは、感染から実行、遠隔操作に至る流れを整理します。
トロイの木馬は、無害なプログラムやデータに見せかけて侵入します。よくある経路は次の通りです。
「添付ファイルを開かない」「不明なダウンロードは避ける」といった基本対策は、この“見せかけ”を突破口にされやすいからです。
ユーザーがファイルを開いたり、インストールを実行したりすると、トロイの木馬が動作を開始します。多くの場合、ユーザーに気づかれないようバックグラウンドで動作し、次のような行為につながります。
なお、原稿中の「文法を削除し」という表現は文脈上不自然なため、上記のように「設定変更・情報窃取・追加導入」など実際に起きやすい挙動に置き換えています。
感染後、攻撃者は外部の指令サーバー(C2など)を通じて端末を操作します。バックドア型であれば遠隔実行や内部探索、ランサムウェア型であれば暗号化と要求画面表示など、目的に応じて動きます。
被害は端末単体に留まらず、社内ネットワークでの横展開、共有フォルダの暗号化、認証情報の悪用による他システム侵入などにつながる可能性があります。だからこそ、感染させない対策と、万一侵入されても広げない対策の両方が重要です。
トロイの木馬は実際にさまざまな形で悪用されてきました。ここでは代表例として、ZeuS・CryptoWall・Emotetを取り上げ、どのような特徴があったのかを整理します。
ZeuSはオンラインバンキングを標的にしたバンキングトロイの代表例として知られています。感染後、認証情報を盗み取って不正送金に結びつけたり、ボットネットの一部として悪用されたりしました。
CryptoWallはランサムウェアの代表例として知られ、感染端末内のファイルを暗号化し、復号のために金銭を要求する手口で被害を拡大しました。原稿中の「感染症の留め金」という表現は不自然なため、以下のように整理します。
一度感染すると、業務文書や写真など幅広いファイルが暗号化され、復旧が困難になります。さらに、感染端末だけでなく共有フォルダやバックアップ領域に被害が波及するケースもあるため、事前の設計が重要です。
Emotetは、当初はバンキングマルウェアとして知られましたが、その後は他のマルウェアを呼び込む基盤として悪用されるようになりました。メールのやり取りを盗み見て“それらしい返信”を装うなど、感染の入口が巧妙で、組織内で一気に広がりやすい点が大きな特徴です。
トロイの木馬は「うっかり実行」が起点になることが多い一方で、運用を整えておけば被害確率と被害規模を下げられます。ここでは個人・組織のどちらでも実践しやすい対策を、理由とセットで整理します。
セキュリティソフトは新しい脅威に対応するため更新されます。同様に、OSやブラウザ、アプリの更新は脆弱性の修正を含むため重要です。「更新を後回しにしない」ことが、攻撃の入口を減らす基本になります。
ソフトウェアや資料は、公式サイトや信頼できる配布元から入手し、出所が不明なインストーラーや“便利ツール”は避けましょう。業務では、配布経路(社内ポータル、承認済みストアなど)を決めておくと、現場の判断がぶれにくくなります。
見慣れない送信元や違和感のある文面は特に注意が必要です。添付ファイルやリンクは、送信元の正当性を別経路で確認できるまで開かない運用が有効です。組織の場合、訓練や周知だけでなく、「報告しやすい窓口」を用意して、疑わしいメールが放置されない流れを作ることも重要です。
ランサムウェア被害では、バックアップの有無と品質が復旧可否を分けます。重要なのは「取っているつもり」ではなく、復元できることです。バックアップの世代管理や、バックアップ領域が同時に暗号化されない構成(分離・権限設計)も検討しましょう。
原稿の骨子を保ったまま、対策として重要度が高い要素を補足します。
これらを日頃から意識し、習慣として回すことが、トロイの木馬への最も現実的な防衛になります。
トロイの木馬は、ユーザーに実行させる“見せかけ”を入口にし、情報窃取や遠隔操作、ランサムウェア展開などにつながる可能性があります。重要なのは、日々の防衛意識と、万一侵入されても被害を最小化する設計の両方です。
基本としては、OS・セキュリティソフトの更新、信頼できる配布元の利用、メールの扱いの徹底、バックアップの実施が柱になります。さらに、MFAや権限管理などを組み合わせることで、攻撃の成立条件を減らし、被害の広がりを抑えられます。
サイバー攻撃は手口が変化し続けますが、対策の考え方は「侵入させない」「侵入されても広げない」「復旧できる」の3点に集約できます。日々の運用として回せる形に落とし込み、継続して実践していきましょう。
無害なファイルやソフトに見せかけて実行させ、内部で不正な動作をするマルウェアです。
トロイの木馬は正規ソフトを装って実行させる点が特徴で、自己増殖を前提としない場合があります。
メール添付やリンク、改ざんサイト、非公式のインストーラー、ファイル共有などです。
遠隔操作の入口を作り、追加侵入や情報窃取、横展開の踏み台にされるため危険です。
外部から別のマルウェアを呼び込み、端末内部から攻撃を拡大させます。
ID・パスワード、カード情報、保存された認証情報、業務データなどを盗みます。
ファイルが暗号化されて利用できなくなり、復旧の対価として金銭を要求されます。
端末が重い、見覚えのない通信や警告、認証情報の不正利用などが兆候になり得ます。
OSとセキュリティソフトの更新、怪しい添付やリンクを開かない運用、バックアップです。
多要素認証を導入し、不正ログインが成立しにくい状態を作ることです。