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UTMとは? わかりやすく10分で解説

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目次

1. UTM(Unified Threat Management)とは

インターネット世界には、ウイルスやハッキングという形で現れる多種多様な脅威が存在します。企業のITシステムをそういった脅威から守るための一手となるのがUTM(Unified Threat Management)です。UTMは一体化脅威管理とも訳され、複数のセキュリティ機能を一つに集約させたソリューションを指します。

1.1 UTMの定義

UTMは、ネットワークシステムの脅威に対抗するための複数のセキュリティ機能を一つのデバイスやソフトウェアに統合したものです。具体的には、ファイアウォール・侵入検知・防御システム(IDS/IPS)・VPN(仮想プライベートネットワーク)・ウイルス対策・スパム対策・Webフィルタリングといった機能を兼ね備えています。

1.2 UTMの特徴

UTMの主な特徴は、その多機能性一元管理の便利さにあります。従来、これらのセキュリティ機能は各々別の機器やソフトウェアが担当することがほとんどでしたが、UTMの登場により一つのシステムでこれら全てを実現可能となり、管理の手間やコストを大幅に削減できる利点が生まれました。また、複数のセキュリティ機能が一体化されることで、脅威に対して速やかに対策ができます。

1.3 UTMの歴史と発展

UTMが登場したのは2000年代初頭で、当初は小規模なビジネスに向けたセキュリティソリューションとして生まれました。当時と比べてIT環境の脅威はより複雑かつ巧妙化し、インターネットの急速な普及に伴い、従来のセキュリティ対策だけでは対応しきれなくなってきた中、UTMはその多機能性と一元管理の便利さから急速に普及しました。特に、ITリソースに限りのある中小企業からの評価は高く、現在では多くの企業で活用されています。

2. UTMの主な機能

UTM(Unified Threat Management)とは、複数のセキュリティ機能を一つのデバイスに集約することで、効率的かつ効果的なサイバーセキュリティ対策を提供する手法の一つです。UTMの主な機能は以下の五つです。

2.1 ファイアウォール機能

ファイアウォール機能は、インターネットとの接続口であるネットワークの境界点で、不正アクセスやウイルスの侵入を防止します。特定のIPアドレスやポート番号からの通信を許可したり、禁止したりすることで、ネットワークを保護します。この機能は、ネットワークのセキュリティ実装の基本となります。

2.2 イントラネット保護機能

イントラネット保護機能は、組織の内部ネットワークをセキュリティの観点から保護します。イントラネット保護の主な目的は、内部からの脅威に対抗することです。例えば、内部の利用者が誤ってセキュリティを侵害する行為をしてしまう可能性など、意図しない内部からの脅威に対応します。

2.3 ウイルス対策機能

ウイルス対策機能は、UTMのデバイスが可疑なファイル、プログラム、または他の形式のデータを検査し、 脅威となるウイルスを検出するための特徴です。ウイルス対策ソフトウェアと同等の機能を提供し、新たなウイルスを逐次追加することで常に新しい脅威からユーザーを保護します。

2.4 スパム対策機能

スパム対策機能は、UTMがスパムやその他の不要なメールを自動的にフィルタリングする機能です。スパム対策を行うことで、利用者が不必要なメールを開くことなく、セキュリティ上の脅威から保護されます。また、メールボックスをスパムで埋め尽くされることによる効率低下の防止も可能です。

2.5 Webコンテンツフィルタリング機能

Webコンテンツフィルタリング機能は、UTMが特定のWebサイトやページをブロックするための機能です。この機能により、不適切なコンテンツや危険なWebサイトを閲覧することを防止し、さらにはユーザーが偶然にでも悪質なWebサイトにアクセスしてシステム全体が脅かされる状況を未然に防ぎます。

3. UTMの利点とその効果

UTMの一番の特色とも言える利点を3つ紹介します。それは、効率的なセキュリティ管理、コスト削減効果、および高度な脅威対策です。

3.1 効率的なセキュリティ管理

UTMが提供するのは、一元化されたセキュリティ管理です。これは複数のセキュリティ製品を個別に導入、管理することなく、UTM一つで全てをカバーできるという意味です。UTMはファイアウォール・侵入検出と防御システム(IDS/IPS)・ウイルス対策・VPNなど複数のセキュリティ機能を一つのプラットフォームで提供し、これによりシステムの設定・定期的な更新・脆弱性のスキャンなどすべてのセキュリティ管理作業を効率的に行うことが可能となります。

3.2 コスト削減効果

UTMは複数のセキュリティ機能を一つのプラットフォームに統合することで、企業はそれぞれのセキュリティ製品を別々に購入・更新・維持するというコストを大幅に抑えられます。さらにはシステムの管理・運用コストも削減可能です。同時に、効率的なセキュリティ管理により未然に防ぐことができたセキュリティインシデントによる潜在的な経済的損失も考慮すると、そのコスト削減効果は一層大きくなります。

3.3 高度な脅威対策

UTMは定期的な脆弱性スキャン機能やリアルタイムでの侵入検出・防御システム(IDS/IPS)などを有し、これにより未知の脅威や進化するサイバー攻撃からも企業のネットワークを守ることが可能です。また、ファイアウォールやウイルス対策機能といった基礎的なセキュリティ機能に加えて、さらに進化した脅威対策機能を統合的に提供するUTM製品も存在します。したがって、単一のセキュリティ製品では対応できなかった複雑なサイバー攻撃も、UTMを使用することで全面的に対策できます。

4. UTMのデメリットと注意点

UTMは一台の機器でさまざまな機能を持つため多くの利点がありますが、一方で注意すべきデメリットも存在します。ここでは特に重要な3つのデメリットについて詳しく見ていきましょう。

4.1 パフォーマンスの問題

ひとつめのデメリットとして、パフォーマンスの問題が挙げられます。UTMは多くのセキュリティ機能を統合しているため、その全ての機能が同時に動作すると、システムに大きな負荷をかける可能性があります。これにより、全体の通信速度が遅くなったり、システムが安定しなくなったりする恐れもあります。また、高度なUTM機能を使用するためには、それに見合う高スペックな機器が必要となり、パフォーマンスの問題という形で逆にコストがかさむ場合もあります。

4.2 ベンダーロックインのリスク

二つ目のデメリットとして重要なのが、ベンダーロックインのリスクです。ベンダーロックインとは、一つのベンダーの製品やサービスに強く依存してしまうことを指し、その結果、他の製品やサービスに切り替えることが困難となり、ビジネス上の自由度が低下する可能性があることを意味します。 UTMにおいては、特定のベンダーの製品に依存することで、他のベンダーの提供する新たな機能や技術を活用する機会を逸する恐れがあります。

4.3 正確な設定と操作が要求される

さらに、UTMの導入・運用には、適切な設定と操作が求められることもデメリットの一つです。UTMでは多種多様なセキュリティ機能を一元管理するため、それぞれの機能の設定や管理に対する理解と知識が必要となります。間違った設定や操作を行うと、意図していないセキュリティホールを生じさせる可能性もあるため、この点は特に注意が必要です。

以上が、UTM導入にあたり注意すべきデメリットです。利便性が高い一方で、それぞれのデメリットを理解した上での適切な運用管理が、安全かつ効率的なセキュリティ対策に重要といえます。

5. UTM導入に向いている企業の特徴

企業がUTM (Unified Threat Management)のシステムを導入しようと考えた場合、企業の規模、ITリソースの状況、そしてセキュリティ対策の重要性が議論に上がります。これらの視点から、UTMが特に適していると考えられる企業やビジネスの特性を見てみましょう。

5.1 小規模から中規模のビジネス

一般的に、UTMは小規模から中規模のビジネスに最も適しています。なぜなら、UTMは様々なセキュリティ機能を一つのパッケージに統合することで、管理の効率性を最大化しながらも、導入と運用のコストを抑えることができるためです。特に、IT部門が少人数であったり、ITスキルを持ったスタッフが限られていたりする小規模〜中規模のビジネスほど、効率的なリソース管理が必要となります。

5.2 ITリソースが限られている企業

次に、ITリソースが限られている企業もまた、UTMの導入に適していると言えます。限られた人数や時間の中で最大限の結果を出すためには、複数のセキュリティシステムの導入・管理・更新を個々に行うよりも、一つのシステムで全てをカバーした方が効果的です。具体的には、UTMを導入すれば複数のセキュリティ製品をそれぞれ別々に管理・操作する手間を減らし、ITスタッフの作業負荷を軽減できます。

5.3 セキュリティ対策が重要な事業を運営する企業

そして最後に、セキュリティ対策が重要とされる事業を運営する企業は、UTMの導入を強く検討するべきです。例えば、個人情報を扱う企業や、オンラインでサービスを提供している企業などは、セキュリティ対策が業務成功の鍵を握るといえるでしょう。そういった事業者にとって、UTMは統合された脅威対策を提供することで、セキュリティリスクを最小限に抑え、事業の安定的な運営を支えることが可能です。

以上が、UTM導入に特に適していると考えられる企業の特徴です。しかし、これらの特性だけでなく、企業のビジネス環境・IT環境・経済状況なども総合的に考慮し、UTM導入を検討するべきでしょう。

6. UTMの選び方と導入のポイント

UTMを選ぶ際は、数々の視点から見ることが重要です。具体的には、必要な機能の確認・コストの把握・ベンダーとの信頼関係・導入後のサポート体制を考慮する必要があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

6.1 必要な機能の確認

UTMの選択の一つめのステップは、自身の組織が必要な機能を確認することです。 ファイアウォール・イントラネットの保護・ウイルス対策・スパム対策・Webコンテンツのフィルタリングなど、UTMは多機能な製品が一般的です。しかし、すべての機能が必要であるわけではないかもしれません。具体的な対策が必要な脅威・今後想定されるリスク・組織のIT環境に応じて、必要な機能をチェックリスト化しましょう。

6.2 コストの把握

コストは、UTM選択の重要な視点の一つです。 UTMの導入は一定の費用がかかることを前提に考える必要があります。その際、購入費用だけでなく、ランニングコストも考慮することが重要です。例えば、ライセンス更新費用、運用に必要な人件費、メンテナンス費用など、長期的な視野でコストを見積もってください。

6.3 ベンダーとの信頼関係

ベンダー選びもUTM導入の大切なポイントです。 長期的なパートナーシップを見越して、信頼できるベンダーの選択が求められます。ベンダーが提供するサービスの質、迅速な対応力、そして経営体制の健全性など、信頼関係を築くための要素を見極めて選びましょう。

6.4 導入後のサポート体制

UTMの導入後のサポート体制も、着実に動作し続けるために重要な要素です。 導入時のトレーニングプログラム、機器の障害発生時の対応、ソフトウェアのアップデート追加機能の提供など、適切なサポートが行われるかを事前に確認しましょう。忙しい現場で運用を続ける中での手厚いサポートが、UTMを最大限に活用するためのカギを握ります。

7. UTMの市場と主要なベンダー

近年、企業のITインフラストラクチャは、急速に複雑化・高度化しています。その結果、セキュリティ管理の重要性が増す一方で、各種脅威からの保護をするための管理作業はより複雑になっています。それに伴う労力とコストの増加を抑えるために、多機能統合型のセキュリティソリューションであるUTMが、注目されてきています。

7.1 UTM市場の現状と動向

現在のUTM市場は拡大を続けています。多くの企業がUTMの導入を検討し始め、導入企業数も年々増加しています。特にクラウドサービスの普及に伴い、それに対応したUTMが求められています。

また、UTMの市場は進化し続けており、より先進的な機能や新たな脅威への対応力を求められています。このような動きを反映して、UTMベンダー各社も進化し続けており、今後ますます競争が激化することが予想されます。

7.2 主要なUTMベンダーの一覧と特徴

主要なUTMのベンダーとして、FortinetCheck PointSophosなどがあります。

Fortinetは世界中で使用されており、その多機能性と高いセキュリティ性能により、特に大企業を中心に広く利用されています。

一方、Check Pointは、使いやすさを重視し、設定が容易であることから、中小企業におすすめのベンダーです。

Sophosは幅広い種類のUTMを提供しており、また特に個別の機能への対応力が高いことで知られています。

これらのベンダーの中から、自社のビジネスやIT環境に最も適したUTMを選ぶことが肝要です。

8. まとめ

この記事を通じて、UTM (Unified Threat Management) とは一体何なのか、その重要性と実用性を説明してきました。さらに、UTMの主な機能、利点、デメリット、選び方や導入のポイントについても紹介しました。

UTMは、わずか一つのデバイスで企業のネットワークを様々な脅威から保護するための統合的なセキュリティソリューションです。そのため、効率的なセキュリティ管理や高度な脅威対策が可能となり、さらにはコスト削減にも寄与します。

しかし、パフォーマンスの問題やベンダーロックインのリスク、正確な設定と操作が要求されるといったデメリットも存在します。これらの点は、UTMの選択と導入を進める際には注意が必要です。

その上で、UTMの導入を考える時には、自身のビジネスの規模やリソース、セキュリティ対策の必要性を鑑みて、必要な機能やコスト、信頼のおけるベンダーを選びましょう。そして、導入後のサポート体制も必ず確認しておいてください。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム