テレワークの普及により、リモートアクセスは多くの企業で日常的に使われるようになりました。一方で、社外から社内システムへつながる経路を用意する以上、導入と運用ではセキュリティ対策が欠かせません。リモートアクセスは「便利さ」と引き換えに、侵入口が増えやすいことを前提に設計する必要があります。
実際、2022年6月に実施した「企業ネットワーク及び関連システムに関する調査」の結果からも、企業がテレワーク(リモートアクセス)環境を導入する際にセキュリティ対策を重視していることが確認できました。
この記事では、リモートアクセスで想定すべきリスクを「何が起きるか」ではなく「なぜ起きるか」まで整理したうえで、対策の考え方と実務上のポイント(体制・認証と端末統制・監視と対応)を解説します。読み終えるころには、自社の環境に照らして「どこが弱点になりやすいか」「何から決めて、どこまで運用で回すべきか」を判断できる状態を目指します。
この章では、リモートアクセスが便利である一方、なぜリスクが増えやすいのかを整理し、代表的なリスクを「起点(入口)」と「影響(被害の広がり方)」の両面から具体化します。
リモートアクセスとは、遠隔地からインターネットなどを介して自社のコンピューターやシステムにアクセスすることを指します。自宅から社内パソコンへ接続して操作するリモートデスクトップも、リモートアクセスの一種です。
従来、社内ネットワークへの接続はオフィス内の端末が中心でしたが、リモートアクセスでは社外ネットワークや端末を経由して社内へ到達する経路が生まれます。その結果、攻撃者から見ると「狙える入口」が増えやすく、また異常が起きても気づきにくい状況が生じます。代表的なリスクは次のとおりです。

リモートアクセスは、インターネット越しに社内へ到達する経路を作るため、外部からの不正侵入リスクが高まりやすくなります。侵入の入口は「認証情報(ID・パスワード等)の奪取」だけではありません。例えば、次のような起点が現実的に起こり得ます。
重要なのは、侵入の多くが「1回で終わる攻撃」ではなく、侵入後に権限を広げたり、別の端末へ移動したりして被害が拡大する点です。リモートアクセスの対策は「入口を固める」だけでなく、「侵入された前提での検知と封じ込め」まで含めて考える必要があります。
リモートアクセスでは、正規ユーザーを装う「なりすまし」が重要なリスクになります。なりすましは、ID・パスワードが漏えいした場合だけでなく、以下のような状況でも発生し得ます。
このため、本人確認(認証)の強化に加えて、アクセスできる範囲を最小化する権限設計、そして「そのアクセスが普段と比べて不自然ではないか」を検知できる仕組みが重要になります。
通信経路が社外ネットワークを通る以上、通信内容の盗聴や改ざんのリスクも想定が必要です。一般的にはVPNやTLSなどで通信を暗号化しますが、「暗号化しているから安心」で終わりではありません。例えば、以下のような点が運用上の弱点になりやすいポイントです。
「通信を守る」だけでなく、「端末と認証を守る」「異常を検知する」まで揃えて初めて、実務上の対策として成立しやすくなります。
リモートアクセスは、社外のネットワーク環境や端末条件が多様になりやすいため、マルウェア対策が手薄にならないよう注意が必要です。感染端末が社内へ接続すると、攻撃者は社内システムへ移動(横展開)し、データの窃取・改ざん・破壊や、ランサムウェアの展開といった被害に発展する可能性があります。
特に、接続後に「社内と同じ扱い」で広い範囲へ到達できる設計になっている場合、被害は短時間で拡大し得ます。リモートアクセスの設計では、接続後の到達範囲(ネットワーク分離やアプリ単位の制御)も含めて考えることが重要です。
この章では、リモートアクセスの対策を「体制」「ネットワークと認証(端末統制を含む)」「監視と対応」の3点セットで整理します。単発の機器導入ではなく、継続運用で安全性を保てる形に落とし込むことがポイントです。

セキュリティ対策は「技術的」「物理的」「人的」の3つが欠かせません。技術的対策はソフトウェアやハードウェアによる対策、物理的対策は端末の盗難・紛失を防ぐための施錠管理などの対策、人的対策は従業員のミスや不正に備えるための教育やルール整備です。
リモートアクセスは、IT部門だけで完結しません。経営層・IT部門・利用部門が同じ前提で動けるよう、次のような事項を「決めて、周知して、守らせる」体制が重要です。
運用ルールは、厳しければ安全になるとは限りません。現場が守れないルールは形骸化し、結果として「抜け道」が常態化します。現実的なルールに落とし込み、定期的に棚卸しする仕組み(教育・監査・改善)まで含めて設計しましょう。
リモートアクセスを安全に利用するためには、セキュアなネットワーク環境の整備が欠かせません。特に、アクセス権の管理と本人確認(認証)の強化、そして接続端末の統制は、実務上の優先度が高いポイントです。
テレワークの拡大により、VPNが注目される場面は増えました。VPNは通信を暗号化し、社内へ安全に到達するための「通り道」を作る手段として有効です。ただし、VPN装置を導入しただけで不正侵入を防げるわけではありません。
リモートアクセスで特に警戒すべきは不正侵入であり、不正侵入は情報漏えいや業務停止などの深刻な被害の足がかりになります。VPNを入口として使う場合でも、次の観点をセットで満たす必要があります。
不正侵入を防ぐためには、ユーザー認証の強化に加えて、接続する端末(デバイス)を管理し、条件を満たす端末だけが接続できるようにすることが有効です。リモートアクセスは経路が多様化しやすいため、「誰が接続するか」だけでなく「どの端末が接続するか」も含めて統制する考え方が重要になります。
例えば、端末統制では次のような条件を扱います。
端末統制は、単に「端末を登録する」だけではありません。登録・失効(端末入れ替え、紛失、退職)を確実に回し、常に最新状態を保つ運用があって初めて、統制として機能します。
多要素認証は、パスワードだけに依存しない本人確認の方法として広く利用されています。デバイス情報や生体情報などを組み合わせることで、なりすましに対する耐性を高めやすくなります。
一方で、多要素認証を導入しても、フィッシングや端末乗っ取り、過剰な権限付与、ログ未監視といった弱点が残ると、被害は発生し得ます。多要素認証は「入口の強化」として有効ですが、次の設計を併せて行うことで、実務上の強度が上がります。
これらの仕組みを一から構築するには時間と手間がかかりますが、その負担を軽減するためのソリューションも存在します。例えば、安心・安全・快適なネットワーク環境の構築を支援するネットワークソリューションとして「NetAttest EPS」があります。電子証明書を使用したネットワーク認証により、接続端末の正当性確認を行い、不正な端末の接続を排除する考え方に役立ちます。リモートアクセス環境においても、認証と端末統制を組み合わせた設計を検討する際の選択肢になります。
リモートアクセスの運用を開始する際は、インシデント発生時の対応手順も事前に整備しておきましょう。いざというときに対応が後手に回らないよう、初動対応、連絡フロー、権限停止などの手順をまとめ、従業員へ周知することが重要です。
アクセスログを取得し、異常な挙動がないかを監視するなど、インシデントを早期に発見できる仕組みも必要です。未然防止と同じくらい、「起きたときに被害を広げない」設計が重要になります。
ログ運用では、次のような観点が抜けやすいポイントです。
「監視のための監視」にならないよう、検知したい事象(不正ログインの兆候、未登録端末の接続、異常なアクセス先など)を先に定義し、そのために必要なログと保管・分析の流れを設計することが実務上は重要です。
初動対応は、方針だけでは回りません。例えば「不審なアクセスがあれば遮断する」と決めても、実際に遮断できる手段(アカウント停止、セッション無効化、端末の証明書失効、通信遮断など)が整っていないと、対応は遅れます。
想定しておくべきは、次のような現場の現実です。
リモートアクセスは、便利であるほど業務依存が強くなります。だからこそ、止める手段・判断基準・復旧手順を事前に定義し、演習(机上でもよい)で現実性を確認しておくことが効果的です。

働き方が大きく変わった昨今、リモートアクセスの機会は増えていますが、セキュリティリスクの存在を忘れないことが重要です。不正侵入やなりすまし、盗聴、マルウェア感染といったリスクに対し、体制づくり、認証と端末統制、ログ監視と対応手順をセットで整備しましょう。
NetAttest EPSは、電子証明書を使用したネットワーク認証に必要な機能が充実したネットワークソリューションです。企業のライフラインとなったネットワークを安全に利用するためにも、リモートアクセスの入口と運用を見直していきましょう。
リモートアクセスとは、遠隔地からインターネットなどを介して自社のコンピューターやシステムにアクセスすることです。
社外から社内へ到達する接続経路が増え、攻撃者が狙える入口が増えやすくなるため、リスクを前提に設計と運用を行う必要があるからです。
不正アクセス、なりすまし、盗聴やセッションの乗っ取り、マルウェア感染を起点とした被害拡大などが代表的なリスクです。
自宅などから社内パソコンへ接続して操作するリモートデスクトップも、リモートアクセスの一種です。
VPNは通信を暗号化して安全な経路を作るのに役立ちますが、導入だけで不正侵入を防げるわけではなく、認証強化やアクセス制御、端末統制などが必要です。
本人確認の強化に加え、到達できる範囲を最小化するアクセス制御と、条件を満たす端末だけを許可する端末統制を組み合わせて設計することが重要です。
多要素認証とは、パスワードだけに依存せず、デバイス情報や生体情報など複数の要素を組み合わせて本人確認を強化する認証方式です。
社外からの接続では端末の状態が多様になりやすいため、誰が接続するかだけでなく、どの端末が接続するかまで条件として統制する必要があるからです。
初動対応、連絡フロー、アカウント停止などの遮断手順、復旧までの手順をまとめ、担当者と利用者に周知しておくことが重要です。
体制づくり、認証と端末統制、ログ監視と対応手順をセットで整備し、継続運用で安全性を保てる形にすることが重要です。
