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UWBとは? わかりやすく10分で解説

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目次

はじめに

近年、無線通信技術は「つなぐ」だけでなく、「測る」「近いことを証明する」といった方向にも進化しています。その中で注目されているのがUWB(Ultra Wideband:超広帯域)です。UWBは高速通信の文脈で語られることもありますが、実務で特に価値が出やすいのは、距離や方向を高精度に推定できるという特性です。

本記事では、UWBの基本概念と仕組みを押さえたうえで、代表的な利用例(スマートフォン、屋内測位、産業用途など)や、他の無線技術との違い、導入時に押さえるべき注意点までを整理します。

UWBとは?

UWBは「Ultra Wideband」の略で、超広帯域の周波数成分を使う無線技術です。一般的には、広い帯域幅(例:500MHz以上、または中心周波数に対して20%以上)を用いる方式を指します。UWBは、短いパルス(非常に短時間の信号)を送受信し、その到達時間差などを利用して相手との距離を推定できる点が大きな特徴です。

加えて、UWBは同じ電力でも信号が広い帯域に分散するため、周囲の無線システムに与える影響(干渉)を小さくしやすい設計になっています。ここが、Wi-FiやBluetoothのような「一定のチャネル帯域を占有する」方式と異なるポイントです。

UWBの歴史

UWBの考え方自体は新しいものではなく、1960年代からレーダーなどの用途で研究が進められてきました。民生領域で注目が広がった背景の一つが、2000年代初頭に米国で利用条件が整備され、超広帯域の電波を低電力で扱える道が開けたことです。

その後、センサーやスマートフォンなどの小型機器で扱えるチップが普及し、現在では「通信」よりも屋内測位・近接検知・アクセス制御といった用途で導入が進んでいます。

超広帯域無線通信の特徴

UWBの特徴は大きく3つに整理できます。

  • 距離推定の精度が高い:電波の到達時間(Time of Flight)を使い、近距離で高精度に距離を測りやすい
  • マルチパスに強い:反射が多い室内でも、信号の時間分解能が高く、到来経路を分離しやすい
  • 低電力で共存しやすい:帯域に分散して送るため、周辺無線との共存設計がしやすい

一方で、UWBは「何でも万能」ではありません。利用できる周波数や送信電力には国・地域ごとの規制があり、アンテナ設計や設置環境によって性能が変わります。また、用途によっては通信速度よりも測距性能が主目的になるため、Wi-Fiのような広域インターネット接続の置き換えには向きません。

UWBの技術

UWBの価値を理解するには、「広い帯域を使うと何が起きるのか」と「それが距離推定にどう効くのか」をセットで押さえる必要があります。ここでは、技術の核となる考え方を、実務で誤解が起きやすい点も含めて整理します。

周波数帯域とは

無線通信の「周波数帯域」とは、電波として利用する周波数の範囲を指します。一般的な無線技術(Wi-FiやBluetooth)は、一定幅のチャネルを使って通信しますが、UWBはその名の通り非常に広い帯域幅を使う点が特徴です。

帯域幅が広いと、時間方向の分解能(どれだけ短い時間差を見分けられるか)が高くなります。これにより、電波が相手に届くまでの時間をより細かく測定でき、結果として距離推定の精度を高めやすくなります。

障害物への耐性

UWBは「障害物に強い」と説明されることがありますが、ここは少し丁寧に理解しておく必要があります。UWBが強みを発揮しやすいのは、壁などを“突き抜ける”という意味よりも、反射が多い室内環境でのマルチパス(反射・回り込み)を見分けやすい点です。

たとえばオフィスや商業施設では、電波が壁や什器で反射して複数経路で届きます。UWBは時間分解能が高いため、これらの経路の差を分離しやすく、測距や近接判定の精度を維持しやすい傾向があります。ただし、実際の性能はアンテナ配置、人体遮蔽、設置高さ、反射環境などの影響を受けるため、机上のスペックだけで判断しないことが重要です。

UWBの通信速度

UWBは用途によっては通信にも使えますが、現場では「高速通信」よりも「測距・測位」を目的に採用されるケースが多い技術です。通信速度は実装規格や設定に依存し、距離・環境・送信電力条件によっても変動します。

そのため「10mで100Mbps以上」といった一律の断定は避け、UWBは“距離推定に強い近距離無線”として位置づける方が、読者が誤解しにくくなります。もし「データ転送速度」を目的に評価する場合は、想定する規格、到達距離、周辺無線との共存条件を含めて比較する必要があります。

UWBの利用例

UWBは「通信」よりも、距離・位置・近接の高精度化によって価値が出やすい技術です。ここでは、実際の製品・サービスに落とし込む際に、どのような形で使われるのかを整理します。

スマートフォン

UWBは一部のスマートフォンに搭載されており、近距離の位置関係をより正確に扱える点が特徴です。たとえばiPhone 11(Pro/Pro Maxを含む)ではUWB対応チップが搭載され、対応アクセサリとの近接検知や位置推定に活用されています。

ここで重要なのは、UWB単体で万能な位置情報が得られるわけではなく、端末側のセンサーやOS機能、対応デバイス(タグ、ビーコン、車載機など)と組み合わせて価値が出る、という点です。

屋内位置情報サービス

UWBが注目される理由の一つが、屋内での位置推定です。GPSは屋内で精度が落ちやすい一方、UWBは近距離での測距に強く、条件が整えばセンチメートル級の精度を狙えるケースがあります。

具体的なユースケースとしては、商業施設や倉庫内でのナビゲーション、資産(機器・台車・工具)の所在管理、作業者の動線分析などが挙げられます。ただし、精度はアンカー配置(基準点の数と位置)、設置高さ、反射環境、端末の持ち方などに影響されるため、PoC(小規模検証)で前提を固めることが現実的です。

産業での利用

産業用途では、UWBは「安全」と「効率」に直結しやすい場面で採用されます。例として、工場や建設現場での作業員・車両の接近検知、設備・部材のトラッキング、立入制御、物流拠点での所在管理などが挙げられます。

自動車分野では、UWBを活用したデジタルキー(近接判定をより厳密にする)などの取り組みも進んでいます。従来方式ではリレー攻撃(遠隔中継)などが課題になりやすく、UWBの測距特性を用いて「本当に近いか」を判断材料にできる点が評価されます。

UWBのメリットとデメリット

UWBは強みが明確な一方、導入時に見落とされやすい制約もあります。ここでは、技術選定の判断材料になるよう、メリットとデメリットを具体化します。

UWBのメリット

  • 高精度な距離推定が可能:近距離での測距・近接判定がしやすく、アクセス制御や測位で強みが出る
  • 室内の反射環境に強い傾向:時間分解能が高く、マルチパス影響を抑えやすい
  • 共存設計がしやすい:広帯域に分散した低電力送信により、周辺無線との共存を前提にしやすい

UWBのデメリット

  • 対応機器がまだ限定される:スマートフォンや車載機などは増えているものの、全端末が標準搭載ではない
  • 規制・周波数条件が地域で異なる:利用できる帯域や送信条件が国・地域で異なり、グローバル展開では要件整理が必要
  • 設置設計の影響が大きい:測位用途ではアンカー配置や環境条件で精度が変わり、設計と検証が不可欠
  • “近いことの証明”は設計が必要:測距できても、認証・権限・ログ設計が弱いと運用上のリスクが残る

UWBと他の無線通信技術との比較

UWBは「何でも高速」というより、「距離・位置・近接の扱いが得意」という性格の技術です。ここではBluetooth、Wi-Fi、NFCと比較し、用途の分け方がイメージできるように整理します。

Bluetoothとの違い

Bluetooth(特にBluetooth Low Energy:BLE)は、短距離通信の代表格で、低消費電力での接続やセンサー連携に強みがあります。一方、UWBは距離推定の精度を重視しやすく、近接判定や測位で価値が出ます。

BluetoothでもRSSI(受信電波強度)やAoA/AoD(到来角)などで位置推定は可能ですが、環境の影響を受けやすい場面があります。UWBは到達時間を扱えるため、条件が合えば距離・位置の推定精度を上げやすい、という整理になります。


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Wi-Fiとの違い

Wi-Fiは、広い範囲でのネットワーク接続(インターネット接続)を主目的とした技術です。UWBは近距離の測距・近接用途に強く、Wi-Fiの置き換えというより補完として理解すると整理しやすくなります。

なお、Wi-FiにもRTT(往復時間)などを利用した測位の考え方がありますが、設計思想や前提が異なります。Wi-Fiは「ネットワーク接続が主、測位は付加価値」、UWBは「測距が主、通信は用途により」というイメージです。


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NFCとの違い

NFC(Near Field Communication)は数cm程度の超近距離で使う通信技術で、決済や入退室など「かざす」操作と相性がよい点が特徴です。距離が極端に短いぶん、ユーザーの意図(かざした)を前提にしやすい設計になっています。

UWBはNFCほどの“接触に近い距離”ではなく、もう少し離れた距離で「近いこと」を扱えます。たとえば、鍵やタグを取り出さずに近接で解錠したい場合などで価値が出ます。一方で、距離が伸びる分だけ、運用設計(誤作動防止、認証、ログ、例外処理)が重要になります。


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UWBの未来

UWBは「測距・測位・近接」という強みが明確なため、スマートデバイスだけでなく、産業・医療・モビリティといった領域で拡大が期待されています。ただし普及の鍵は、チップの搭載数だけでなく、運用設計(認証、権限、ログ、例外対応)まで含めた“使い方の標準化”にあります。

今後の技術的な進化

今後の進化の焦点としては、消費電力のさらなる低減、実装の小型化、測距精度の安定化、複数デバイス同時利用時の運用性向上などが挙げられます。とくに測位用途では、設置・運用の手間を下げつつ精度を維持できるかが、導入のしやすさに直結します。

新しいアプリケーションの可能性

スマートホームでは、端末の位置関係に応じた家電操作(「どの部屋にいるか」「どの機器に近いか」)や、紛失防止タグの精度向上などが考えられます。医療・介護の現場では、機器や患者の所在把握、接近アラートなど、運用と安全性に直結する使い方が期待されます。

一方で、位置や近接は個人情報や行動情報と結びつきやすいため、導入時はセキュリティだけでなく、利用目的の明確化、ログの扱い、保管期間、権限分離といったガバナンスの設計も重要になります。

まとめ

本記事では、UWBの基本概念から技術的な特徴、利用例、他技術との比較、今後の展望までを整理しました。UWBは、広い帯域幅を活かして距離・近接の扱いを高精度化しやすい点が大きな魅力です。

一方で、周波数条件や対応機器、設置環境に左右される面もあり、導入ではPoCを含めた前提整理が欠かせません。UWBを「高速通信の新方式」として捉えるよりも、「近距離で“どれだけ近いか”を扱える技術」として理解すると、適用領域を判断しやすくなります。

Q.UWBは何の略ですか?

UWBはUltra Widebandの略で、超広帯域の周波数成分を使う無線技術です。

Q.UWBは高速通信のための技術ですか?

通信にも使えますが、実務では距離推定や近接判定の高精度化を目的に採用されることが多いです。

Q.UWBはなぜ距離を正確に測れるのですか?

信号の到達時間差などを利用し、近距離での距離推定を行いやすい設計だからです。

Q.UWBは屋内測位でどれくらいの精度が出ますか?

条件が整えばセンチメートル級を狙える場合がありますが、設置や環境によって精度は変動します。

Q.UWBは壁などの障害物に強いのですか?

“突き抜ける”よりも、反射が多い環境で経路差を分離しやすい点が強みです。

Q.UWBはどんな製品で使われていますか?

スマートフォンの近接機能、デジタルキー、タグによる所在管理、工場や倉庫のトラッキングなどで使われます。

Q.UWBはBluetoothと何が違いますか?

Bluetoothは低消費電力の接続に強く、UWBは距離推定や近接判定の精度を高めやすい点が特徴です。

Q.UWBはWi-Fiの代わりになりますか?

Wi-Fiはネットワーク接続が主目的で、UWBは近距離の測距・近接用途が主なため、置き換えより補完として捉えるのが一般的です。

Q.UWB導入で注意すべき点は何ですか?

対応端末の範囲、地域ごとの規制条件、設置設計、認証やログなど運用設計を含めて検討することが重要です。

Q.UWBはセキュリティ面で有利ですか?

距離推定を根拠に“近いこと”を判断材料にしやすい一方、認証や権限設計が弱いと運用上のリスクは残ります。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム