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フォールトアボイダンスとは? 事例や目的を分かりやすく解説

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フォールトアボイダンスとは?意味・考え方・進め方を分かりやすく解説

フォールトアボイダンスは、障害の原因になりそうなものを、設計・開発・運用の段階でできるだけ持ち込まず、起きにくくする考え方です。問題が起きてから直すのではなく、起きる前に減らすことに重きを置きます。

  • 何を目指す考え方か:障害の原因を早い段階で減らす
  • 近い考え方との違い:止まりにくくする設計とは役割が少し違う
  • どこから始めるか:設計、テスト、変更の扱い、監視の見直し

ITシステムは社会の多くの場面で使われており、生活や会社の仕事は、サービスが止まりにくいことに強く依存しています。その一方で、障害やエラーの影響も大きくなっており、短時間の停止でも売上の減少、信用低下、仕事が止まること、安全上のリスクにつながることがあります。

こうした状況では「障害が起きたら復旧する」だけでなく、そもそも障害が起きにくい状態をつくることが重要です。その考え方の一つが「フォールトアボイダンス(Fault Avoidance)」です。この記事では、意味、近い考え方との違い、注目される背景、事例、進め方、利点と注意点までを、なるべく現場の言葉で見ていきます。

「フォールトアボイダンス」を分かりやすく解説

「フォールトアボイダンス(Fault Avoidance)」は、直訳すれば「フォールトの回避」です。ITの文脈では、設計・開発・運用の各段階で、障害の原因になり得る要素(フォールト)をできるだけ持ち込まず、起きにくくするための取り組みを指します。要点は「未然に防ぐ」ことにあります。

用語整理:フォールト/エラー/フェイル

フォールトアボイダンスを理解するうえで、似た言葉の違いを押さえると混乱が減ります。

  • フォールト(Fault):不具合の原因になり得る欠陥や条件(設計ミス、設定ミス、老朽化、手順不備など)
  • エラー(Error):処理の誤りや誤った状態(例:計算結果の異常、権限判定の誤り)
  • フェイル(Failure):サービスとしての失敗(例:応答不能、決済できない、データが壊れる)

フォールトアボイダンスは、フォールトを減らす/作らないことで、結果としてエラーやフェイルを減らすアプローチです。

フォールトトレランスとの違い

よく並べて語られるのが「フォールトトレランス(Fault Tolerance)」です。両者は目指す方向が近く見えますが、重きを置く場所が異なります。

考え方重きを置く点主な手段
フォールトアボイダンス障害の原因を減らし、起きる確率を下げる設計の見直し、変更の管理、先回りの保守、テスト
フォールトトレランス障害が起きても止まりにくくする冗長化、フェイルオーバー、回復しやすい設計

実際の現場では、どちらか一方だけで安定稼働を実現するのは難しいため、原因を減らすこと起きたときに耐えることを組み合わせるのが一般的です。

例:航空機エンジンで考えると

航空機を例にすると、フォールトアボイダンスは、部品選定、設計レビュー、製造工程での品質確認、定期点検といった「故障が起きにくい状態を作る」活動に当たります。一方、フォールトトレランスは、複数エンジンによる冗長性や、故障時でも安全に運航を継続できる設計に当たります。両者が補い合うことで、安全性が成り立っています。

「フォールトアボイダンス」が注目されている背景

フォールトアボイダンスが注目されるのは、単に障害が増えたからではありません。ひとつの障害が広い範囲に響きやすくなっていることが大きな理由です。

止まったときの影響が大きくなった

オンラインサービス、リモートワーク、クラウド利用、API連携などが当たり前になり、ひとつの不具合が取引、社内の仕事、顧客対応に波及しやすくなりました。特に、外向けのサービスでは数分の停止でもSNSで話題になり、信用低下につながることがあります。

システム運用・監視のイメージ画像

構成が複雑になり、「起きてから直す」だけでは遅れやすい

マイクロサービス、コンテナ、IaC、複数クラウド、SaaS連携などによって、障害の要因は増え、切り分けも難しくなっています。障害が起きてから原因を追うだけでは復旧が遅れやすく、影響も広がりがちです。だからこそ、起きる前につぶすこと起きにくい作りにすることの重要性が増しています。

運用のルールや記録が問われる場面がある

業種や契約条件によっては、セキュリティ対策だけでなく、運用体制、変更の扱い方、後から確認できる記録の残し方も問われます。障害が引き金となって情報漏えい、誤送信、改ざん、停止が起きることもあるため、起きる前に減らすための品質管理と運用が重要になります。

「フォールトアボイダンス」が関係する事例

ここでは、フォールトアボイダンスが「不十分だった例」と「機能した例」を、同じ観点で見比べます。ポイントは、事故の大小ではなく、原因になり得るものをどこでつぶせたかです。

不十分だった場合の例

A社:生産ラインの停止(単一障害点と先回りの保守不足)

A社では、生産ライン制御に関わる重要システムが突然停止しました。原因は一見小さな部品の故障でしたが、その部品が単一障害点(SPOF)になっており、停止がライン全体に波及しました。フォールトアボイダンスの観点では、部品寿命を前提にした交換計画や、劣化の兆しを見る仕組みが不足していたと言えます。

B社:営業停止(DB障害を前もってつかめなかった)

B社のCRMはデータベース障害で利用できなくなり、営業活動が一時停止しました。ここでの問題は「障害が起きた」ことだけではなく、異常の兆し(遅延、接続枯渇、ディスク逼迫など)を前もって捉えられていなかった点です。監視項目、アラート設計、容量の見積もり、変更の影響確認が整っていれば、停止前に手当てできた可能性があります。

適切に導入されていた場合の例

C社:計画保全で予期しない停止を抑えた

C社では、重要部品の交換スケジュールと点検手順を定め、メンテナンスを続けていました。結果として、突発停止が起きにくくなり、生産効率を安定させることができました。これは典型的なフォールトアボイダンスです。

D社:負荷試験で弱点を先に見つけた

D社では、性能計測やストレステストを定期的に行い、ボトルネックや設定の弱点を洗い出していました。障害になる前に問題点を把握できるため、突発対応が減り、運用品質が上がります。とくに利用者増や機能追加が多い環境では効果が出やすい取り組みです。

「フォールトアボイダンス」をどう進めるか

フォールトアボイダンスは、場当たり的な対応だけでは続きません。日々の工程に入れることで、はじめて同じ水準で回せるようになります。ここでは、現場で効果が出やすい4つの切り口を紹介します。

1. 設計・要件の段階で壊れやすい箇所を減らす

最初に効くのは設計です。後から運用で補おうとするほど、かかる手間は大きくなります。

  • 単一障害点(SPOF)を洗い出す:重要な経路の依存関係を図にして確認する
  • 容量を見積もる:ピーク時の前提、伸び率、限界点を明示する
  • 例外時の動きを決める:タイムアウト、リトライ、バックオフ、レート制限を設計に含める
  • 外部サービスへの依存を整理する:APIやSaaSが止まったときの挙動を決める

2. テストを後ろの工程だけに置かない

テストは、やるかやらないかではなく、どこまで自動で回すか何を見続けるかが肝心です。

  • ユニット/結合/E2Eの役割分担をはっきりさせる
  • 静的解析・Lint・依存関係チェックをCIに組み込み、早い段階で欠陥を見つける
  • 負荷試験・耐久試験で「落ちる前の兆し」を見る
  • テストデータと手順をそろえることで、担当者ごとの差を減らす

3. 変更の扱いを整え、「人が作る原因」を減らす

障害は変更に付随して起きることが少なくありません。だからこそ、変更の扱いを整えることは重要です。

  • 変更申請・レビュー・承認の基準を軽くてもよいのでそろえる
  • 段階リリースで影響を小さくする
  • ロールバック手順を作り、実際に試しておく
  • IaCや構成管理で設定の差を追えるようにする

4. 兆候を早くつかむ

障害は突然見えても、実際にはその前に兆しが出ていることが少なくありません。兆しを拾える仕組みがあれば、止まる前に手当てできます。

  • メトリクス:CPU、メモリ、ディスク、遅延、キュー長、エラー率などを見る
  • ログ:あとから追いやすい形で残し、検索しやすくする
  • トレース:依存関係が多い環境では、どこで遅れているかを追いやすくする
  • 先回りの保守:パッチ適用、証明書更新、サポート期限の管理を計画に入れる

なお、冗長化やフェイルオーバーは主にフォールトトレランスの領域ですが、SPOFをなくす目的で設計に取り込むことは、結果として停止に至る原因を減らす働きもします。現場では両方を組み合わせて考えるのが自然です。

「フォールトアボイダンス」の狙いと利点

フォールトアボイダンスの狙いは、単に「障害を減らす」ことではありません。障害を起こしにくい状態を、日々の仕事の中で作ることにあります。

安定運用・品質向上のイメージ画像

止まる時間を減らし、使う側の負担も下げる

障害が減るほど、利用者はサービスを支障なく使いやすくなります。停止や遅延が減れば、カゴ落ちや問い合わせも減り、結果として事業成果にもつながります。

セキュリティ事故のきっかけを減らす

障害時は運用が乱れやすく、設定ミスやその場しのぎの対応が重なることで、弱い状態になりがちです。フォールトアボイダンスで運用を整えることは、脆弱性の放置や、証明書失効、パッチ未適用などの種を減らすことにもつながります。

かかる費用を抑えやすくなる

先に手を打つ取り組みは、一見するとコストに見えます。ただ、重大障害が起きたときの損失や復旧の手間を考えると、長い目では効果が出やすい領域です。特に、同じ種類の障害が繰り返されている場合は、投じた手間が結果に結びつきやすくなります。

運用部門が火消しだけで終わりにくくなる

障害対応が常態化すると、改善に手が回りません。フォールトアボイダンスで突発対応が減れば、運用部門は改善、ルールの見直し、セキュリティ強化などに時間を使いやすくなります。

「フォールトアボイダンス」で負担になりやすい点

フォールトアボイダンスは万能ではありません。導入時に何が負担になりやすいのかを理解しておくと、過度な期待を避けやすくなります。

コスト・負荷を示すイメージ画像

時間と手間がかかる

想定できる原因を洗い出し、工程に組み込むには一定の手間がかかります。特に最初は、ルール作りや見える化のための整備が負担になりがちです。

知見が不足すると形だけになりやすい

監視項目やテスト観点が適切でないと、ノイズの多いアラートや、意味の薄いテストだけが増えてしまいます。結果として「やっているのに止まる」状態になり、現場の信頼を失います。

最初は投資が大きく見えやすい

ツール導入や人材育成、工程整備は短期的にはコストとして見えます。そこで重要なのは、全社で一気にやるのではなく、止まったときの影響が大きい領域から段階的に進めることです。

部門をまたぐ調整が必要になる

フォールトアボイダンスは、開発だけ、運用だけで完結しません。変更の扱い、レビュー、どこまで誰が持つか、CS対応など、部門をまたぐ合意が必要になる場面があります。

「障害ゼロ」を目標にしない

現実のシステムでは、未知の要因や外部依存により障害が起きることがあります。大切なのは「ゼロにする」ことではなく、起きにくくし、起きても被害を抑え、学んで次に起きる確率を下げることです。

「フォールトアボイダンス」のまとめ

フォールトアボイダンスは、設計・開発・運用の各工程で障害の原因を持ち込みにくくし、障害が起きる確率を下げる考え方です。一方、フォールトトレランスは、障害が起きてもシステムが止まりにくい作りにする考え方です。現場では両者を組み合わせることで、サービスの止まりにくさと信頼を、無理のないコストで高めていきます。

また、フォールトアボイダンスを機能させるには、テストだけでなく、変更の扱い、先回りの保守、監視、見直しの積み重ねも欠かせません。まずは停止の影響が大きいシステムから、監視、テスト、変更手順の土台を整え、段階的に広げていくのが無理のない進め方です。

FAQ

Q.フォールトアボイダンスとは何ですか?

障害の原因になりそうな要素を、設計・開発・運用の段階で減らし、起きにくい状態を作る取り組みです。

Q.フォールトトレランスとの違いは何ですか?

フォールトアボイダンスは障害を起こしにくくする考え方で、フォールトトレランスは障害が起きても止まりにくくする考え方です。

Q.フォールト/エラー/フェイルはどう違いますか?

フォールトは原因になり得る欠陥や条件、エラーは誤った状態、フェイルはサービスとして表に出た失敗です。フォールトを減らすほど、フェイルも起きにくくなります。

Q.フォールトアボイダンスは「障害ゼロ」を目指すものですか?

障害ゼロを保証するものではありません。主眼は、障害を起こしにくい状態を作ることです。

Q.まず何から始めると効果が出やすいですか?

停止の影響が大きいシステムを選び、監視とログ整備、変更手順の見直し、基本的な自動テストの整備から始めると効果が出やすいです。

Q.障害の多くは何が原因で起きますか?

変更に付随して起きるケースは少なくありません。レビュー、段階リリース、ロールバック手順など、変更の扱いが重要になります。

Q.監視と観測(Observability)はなぜ重要ですか?

障害の兆候を早い段階で捉え、停止に至る前に手当てしやすくなるためです。メトリクス、ログ、トレースを組み合わせると、状況を立体的に見やすくなります。

Q.冗長化はフォールトアボイダンスに含まれますか?

冗長化は主にフォールトトレランスの手段です。ただし、単一障害点をなくす目的で設計に取り込むことは、現場でもよく行われます。

Q.コストが心配です。どう進めるべきですか?

全社で一度に進めるのではなく、影響の大きい領域から段階的に進めます。効果を見る指標を決めておくと、投資判断もしやすくなります。

Q.フォールトアボイダンスの効果はどう測れますか?

障害件数だけでなく、停止時間、重大障害の再発率、変更失敗率、アラートの有効性、復旧時間などを続けて追うのが有効です。

記事を書いた人

ソリトンシステムズ・マーケティングチーム