データを安全に保ちながら、読み書きの性能も落としたくない――そんな要求が強いシステムでは、ストレージ構成(RAIDレベル)の選び方が安定運用に直結します。本記事では、代表的な構成のひとつであるRAID10について、仕組み・向き不向き・他方式との違い・運用上の注意点までを、判断の材料になるようにまとめます。
RAID10(RAID 1+0)は、RAID1(ミラーリング)とRAID0(ストライピング)を組み合わせた方式です。性能と耐障害性のバランスがよく、データベースサーバや仮想化基盤など、高いI/O性能と一定の冗長性を同時に求める場面で採用されます。
RAID1は、同じデータを複数台のディスクに同時に書き込んで複製する方式です。片方のディスクが故障しても、もう片方に同じ内容が残るため、単体故障に強くなります。一方RAID0は、データをブロック単位で複数ディスクに分散して書き込む方式で、並列アクセスによって読み書きを高速化できますが、冗長性(故障耐性)はありません。
RAID10は、RAID1で冗長性を確保したうえで、その複数のミラーセットに対してRAID0のストライピングを行い、耐障害性とパフォーマンスの両方を狙います。
一般に「RAID10」と呼ぶ場合は、RAID1+0(ミラーの上にストライプ)を指します。混同されやすい構成として、RAID0+1(ストライプの上にミラー)があります。両者は見た目が似ていますが、故障時の挙動と耐障害性が異なる点がポイントです。
RAID1+0(RAID10)は、複数のミラーセット(ペア)を作ってから、その上にストライピングを行います。このため、「ミラーの片側が壊れる」故障であれば、故障が別ペアに分散している限り、複数台故障でも稼働を継続できる可能性があります(ただし、同一ペアの両ディスクが故障すると停止します)。
一方RAID0+1は、先にストライピング(RAID0)で束ねたグループを作り、そのグループ全体をミラーします。ストライピング側でディスク故障が起きると、そのグループ全体が「故障扱い」になり、残るのはもう片方のグループのみです。結果として、次の1台故障で停止しやすい(耐障害性が下がりやすい)構成になります。
なお、性能差はワークロードや実装(RAIDコントローラ/ソフトウェアRAID、キャッシュ、ストライプサイズ)で変わるため、「RAID0+1のほうが常に速い」とは言い切れません。設計上の要点は、耐障害性と復旧運用のしやすさの面で、一般にRAID10(1+0)が選ばれやすいという点です。
RAID10の役割は、ランダムI/Oに強い性能とミラーによる冗長性を両立し、サービス継続性を高めることです。特に、更新(書き込み)が多いシステムでは、パリティ計算が必要なRAID5/6に比べ、RAID10は書き込み時の負荷(いわゆる書き込みペナルティ)が読みやすく、性能を確保しやすい傾向があります。
ただし、RAID10は「故障に強い=データ損失が起きない」ではありません。RAIDはあくまで可用性(止まりにくさ)を高める仕組みであり、誤操作・ランサムウェア・論理破損・災害などには別途バックアップ設計が必要です。この前提を押さえたうえで、RAID10は重要データの基盤で価値を発揮します。
RAID10は「複数ディスクをまとめて1つのボリュームとして見せる」点では他RAIDと同様ですが、ミラー(複製)とストライプ(分散)が組み合わさることで、故障時の挙動・容量効率・復旧運用の考え方が変わります。
RAID10は、基本的に最低4台のディスクで構成されます。まず2台ずつでRAID1のミラーセット(ペア)を作り、次にそのミラーセット群に対してRAID0のストライピングを行います。
この構造により、通常運用時は複数ディスクへの並列アクセスで性能が出やすく、かつディスク故障時はミラーの片側で処理を継続できます。容量効率は概ね50%(4台中2台分が実効容量)になるのが一般的です。
RAID10では、書き込みは基本的にミラーセットの両方に書き込むため、単純化すると「書き込みは2回発生」します。一方で読み取りは、ミラーの左右どちらからでも取得できるため、コントローラやOSがうまく最適化できると、読み取り性能が伸びやすくなります。
また、ストライピングによってデータブロックが複数ディスクに分散されるため、同時に複数のI/Oが走るようなワークロード(DB、仮想化、ログ大量書き込みなど)で性能が出やすいのが特徴です。逆に、単発の大容量連続書き込みが支配的な用途では、構成やキャッシュ設計の影響が大きく、RAIDレベルだけで優劣は決まりません。
RAID10の運用設計で意識したいのは、故障後の復旧(リビルド)中が最もリスクが高いという点です。ディスクが1本故障した状態では冗長性が下がり、さらにリビルド中はI/O負荷が増え、性能低下や追加故障のリスクが上がります。監視と交換、そして復旧手順の整備が、実務上の「RAID10の強さ」を左右します。
また、RAID10はディスク本数が増えるほど、性能面では有利に働くことがありますが、同時に障害要因(故障確率の母数)も増えます。ホットスペアの有無、同一ロット集中の回避、監視閾値、交換SLAなど、運用条件とセットで評価することが重要です。
運用の基本は、障害検知を早く、交換を早く、復旧手順を安全にです。故障ディスクの交換を遅らせると、残りディスクに負荷が集中し、二次障害の確率が上がります。交換後はリビルドが走るため、ピーク時間帯を避ける・QoSを設定する・キャッシュ設定を確認するなど、サービス影響を抑える工夫も検討対象になります。
また、RAIDコントローラ/HBA、ファームウェア、ドライバ、OS側のソフトウェアRAIDなど、実装によって管理方法や注意点が変わります。運用手順書では「何を見て異常と判断するか」「どの順で作業するか」「作業後に何を確認するか」を明文化しておくと、トラブル時の判断ミスを減らせます。
RAIDは「何を優先するか」で選択が変わります。RAID10は性能と冗長性のバランス型ですが、容量効率は高くありません。ここではよく比較されるRAID5/6、RAID0/1との違いを確認します。
RAID5はパリティ(復元用情報)を分散配置し、1台故障まで耐えられる方式です。容量効率が良く、ディスク本数が増えるほど有効容量を確保しやすい一方で、書き込み時にパリティ計算と更新が発生するため、ワークロードによっては書き込み性能が伸びにくくなります。
RAID10は容量効率が概ね50%になりますが、パリティ計算がないため、更新が多い用途で性能を確保しやすい傾向があります。要するに、容量効率を優先するならRAID5、更新性能と運用の分かりやすさを優先するならRAID10が検討候補になりやすい、という見方です。

RAID6はRAID5の拡張で、パリティを2系統持つことで2台同時故障まで耐えられる方式です。大容量ディスクが一般的になった現在では、リビルドに時間がかかるケースも多く、2台故障耐性を評価してRAID6を選ぶことがあります。
一方で、RAID6は書き込み時のパリティ更新がさらに増えるため、ワークロードによっては性能の見積もりが難しくなります。更新が多く性能を落としにくい構成を優先するならRAID10、容量効率と2台故障耐性を優先するならRAID6、という比較が基本線になります。

RAID1(ミラーリング)は単体故障に強い一方で、ディスク本数に対して実効容量が増えにくく、性能も実装依存になりやすい方式です。小規模で「まずは止めたくない」を重視する用途で選ばれます。
RAID0(ストライピング)は性能重視ですが冗長性がありません。1台でも故障すればボリューム全体が失われるため、重要データの本番用途には不向きです(テンポラリ領域やキャッシュ用途など、使いどころはあります)。
RAID10は、RAID1の冗長性を前提にRAID0で性能を伸ばすため、「性能も止めにくさも、どちらも必要」という要件に合いやすい構成です。


RAID10は、ランダムI/Oや更新が多い環境でメリットが出やすく、代表例としてはデータベースサーバ、仮想化基盤、トランザクション処理が多い業務アプリケーションなどが挙げられます。読み取りと書き込みが同時に発生し、応答遅延がサービス品質に直結する場面では、RAID10の設計が合いやすいことがあります。
一方で、容量効率が50%前後になる点は設計上の制約です。必要容量が大きく、I/O要件がそこまで厳しくない用途では、RAID5/6や別のアーキテクチャ(ストレージ階層化、キャッシュ活用、バックアップ設計の強化など)が適する場合もあります。RAID10は「万能」ではなく、要件に対してコストを払う価値があるかで判断するのが現実的です。
RAID10の強みは、ミラーリングによる冗長性を持ちながら、ストライピングによってI/Oを並列化できる点です。ミラーセットがあるため、片側ディスクの故障時でもサービス継続が可能になりやすく、交換とリビルドを適切に行えば、停止リスクを抑えられます。
また、読み取りはミラーの左右から分散して行えるため、実装次第では読み取り性能が伸びることがあります。書き込みは原理的にミラーへ二重書き込みになりますが、パリティ方式と比べると見積もりがしやすく、更新が多いワークロードで性能設計が立てやすい点が評価されます。
弱点は、容量効率が高くないことです。RAID10はミラーによって同じデータを複製するため、実効容量は搭載容量の半分程度になります。容量単価の面では不利になりやすく、必要容量が大きいとハードウェアコストが膨らみます。
さらに、ディスク本数が増えるほど構成要素も増えるため、調達・保守・交換運用の工数が増えます。RAID10は「導入して終わり」ではなく、監視・交換・復旧を含めた運用設計まで含めてコスト評価することが重要です。
RAID10は最低4台から構成するのが一般的で、小規模環境では導入の敷居が上がります。また、ディスク故障後のリビルド中はI/O負荷が増え、性能低下が出たり、追加故障が起きると停止に至る可能性があります。
もう一点、誤解されやすいのが「RAID10なら復旧できる=データは安全」という認識です。RAID10で守れるのは主にディスク故障であり、誤削除、アプリケーションによる誤更新、論理破損、ランサムウェア、災害などは別問題です。RAID10を採用していても、バックアップや世代管理、権限制御といった対策は必要です。
課題になりやすいのは、コストと運用の複雑さです。コスト面では、必要容量と性能要件を切り分け、重要データだけをRAID10に載せ、ログやアーカイブは別ストレージへ分離するなど、データ配置で最適化できる場合があります。
運用面では、監視・交換・復旧の標準手順を整え、障害時の判断を属人化させないことが有効です。ホットスペアの採用、予防交換の考え方、同一ロット集中の回避、リビルド時の負荷制御など、実装と運用をセットで設計することで、RAID10のメリットを引き出しやすくなります。
RAID10はディスク故障に強い一方、復旧時の作業ミスが事故につながることもあります。トラブル時ほど「触りすぎない」ことが重要で、判断基準と手順を持っておくことが安全性を高めます。
基本原則は、障害発生時に不用意な操作をしないことです。具体的には、次のような行為は慎重に扱う必要があります。
まずはコントローラ/管理ツールの状態表示とログ、SMART、アラート履歴を確認し、「本当に故障なのか」「一時的な通信断なのか」「どのディスクが対象なのか」を確定させてから作業します。
RAID10は、同一ミラーペアの両ディスクが失われると停止・データ損失につながります。したがって、故障ディスクを検知したら、可能な限り早く交換し、冗長性が下がっている時間を短くすることが重要です。
予防策としては、定期バックアップ、監視(SMART・エラー率・リビルド失敗)、予防交換、そしてリビルド時の負荷管理が挙げられます。RAIDはバックアップの代替ではないため、バックアップは必須要件として扱うのが安全です。
RAID10でよくある悩みは、コストと容量効率です。対策としては、より大容量のディスクを採用する、重要データと非重要データでストレージ階層を分ける、キャッシュやログ配置を最適化するなどが現実的です。
また、パフォーマンス問題が出た場合は、RAIDレベルだけでなく、ストライプサイズ、キュー深度、キャッシュ設定、I/Oパターン(ランダム/シーケンシャル、読み取り/書き込み比率)を確認し、ボトルネックを特定することが必要です。
運用の実務では、次の観点が効きます。
RAID10は「選ぶだけ」で安全になる仕組みではなく、監視と復旧運用まで含めて設計したときに、安定性のメリットが出やすい構成です。
一般的には最低4台が必要です。2台ずつでミラーを作り、そのミラーセットに対してストライピングします。
概ね搭載容量の50%程度です。同じデータをミラーに複製するため、容量効率は高くありません。
同じではありません。RAID10(1+0)はミラーの上にストライプを作り、RAID0+1はストライプの上にミラーを作るため、故障時の耐性が異なります。
ミラーペアの片側故障であれば、故障が別ペアに分散する限り複数台でも耐えられる場合があります。ただし同一ペアの両方が故障すると停止します。
更新が多いデータベース、仮想化基盤、業務アプリなど、ランダムI/Oが多く性能と可用性を両立したい用途に向きます。
不要ではありません。RAID10が守れるのは主にディスク故障であり、誤削除やランサムウェア、論理破損には別途バックアップが必要です。
不用意な初期化やリビルド、構成変更、接続順の入れ替えは避けてください。まず状態確認とログの特定を行うのが基本です。
失われたデータを再構築するために追加I/Oが発生し、通常処理と競合するためです。負荷制御や時間帯の工夫で影響を抑えられます。
使えます。SSDでもミラーとストライプの考え方は同じで、性能や耐障害性の要件に応じて採用されます。
重要データのみRAID10に置き、ログやアーカイブは別ストレージに分離するなど、データ配置の最適化が有効です。