テレワークの種類は、働く場所で分けると、在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務の三つです。自宅で働くのか、本拠地以外の施設で働くのか、移動中や出先で働くのか。この違いによって、対象業務、労働時間管理、費用負担、端末管理、情報漏えい対策、認証の設計が変わります。
この記事で扱う「種類」は、勤務場所による分類です。VPN方式、リモートデスクトップ方式、クラウドサービス方式などの「テレワーク方式」とは別に考えます。勤務場所を決めないまま接続方式やツールだけを選ぶと、制度と現場の運用がずれます。
在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務の違いを、業務内容、労務管理、セキュリティ、社内ルールに分けて解説します。技術方式の比較は、別記事のテレワーク方式の比較で扱います。
どの勤務形態でも、社外から業務システムやクラウドサービスへアクセスする場面では、利用者と端末をどう確認するかが重要です。ID・パスワードだけに依存せず、多要素認証や端末認証を組み合わせる設計が基本になります。デジタル証明書も、許可された端末かどうかを確認する有力な選択肢です。
テレワークは、ICTを活用し、時間や場所を有効に使う柔軟な働き方です。総務省と厚生労働省の資料では、業務を行う場所に応じて、在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務に分類されています。
在宅勤務は労働者の自宅で業務を行う形態です。サテライトオフィス勤務は、労働者が属するメインのオフィス以外に設けられた施設を利用する形態です。モバイル勤務は、ノートPCやスマートフォンなどを使い、臨機応変に選んだ場所で業務を行う形態です。過去資料や実務文書では「モバイルワーク」という表記も見られます。社内規程、申請書、FAQでは表記を統一しておく方が安全です。
三つの分類は、呼び名の違いにとどまりません。勤務場所が変わると、労働時間の把握、作業環境、通信品質、周囲からの視線、会話漏れ、端末の紛失リスクが変わります。接続元が自宅、共用施設、移動先に広がるほど、利用者認証、端末確認、通信経路、データ保存の条件も変わります。ワーケーションも、ICTを使って業務を行う場合は、サテライトオフィス勤務またはモバイル勤務の一形態として整理できます。制度設計では、こうした勤務場所の差を前提に置きます。
在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務は、働く場所の分類です。一方、VPN方式、リモートデスクトップ方式、仮想デスクトップ(VDI)方式、セキュアコンテナ方式、セキュアブラウザ方式、クラウドサービス方式、スタンドアロン方式は、システム構成や接続方法の分類です。
在宅勤務だからVPN方式、モバイル勤務だからクラウドサービス方式、と固定されるわけではありません。同じ在宅勤務でも、社内ネットワークへ接続する会社もあれば、クラウドサービスだけで業務を完結させる会社もあります。まず勤務場所と業務範囲を定め、その後に端末、認証方式、通信、ログ、データ保存の条件を決めます。認証方式では、多要素認証、端末認証、デジタル証明書などを、扱う情報の重要度に応じて検討します。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 在宅勤務 | 主な勤務場所:自宅 扱いやすい業務:資料作成、設計、分析、申請処理、オンライン会議、問い合わせ対応 注意点:長時間労働、孤立、作業環境の差、家庭内での会話漏れ、家庭用ネットワークの設定、認証条件 |
| サテライトオフィス勤務 | 主な勤務場所:自社専用拠点、グループ拠点、シェアオフィス、コワーキングスペース 扱いやすい業務:集中作業、オンライン会議、移動途中の執務、出社と在宅の中間的な作業 注意点:共用空間での会話漏れ、資料の置き忘れ、画面ののぞき見、共用ネットワークの扱い、端末確認 |
| モバイル勤務 | 主な勤務場所:移動中、顧客先、訪問先、出張先、宿泊先、外出先 扱いやすい業務:短時間の確認、承認、報告、顧客訪問後の記録、移動中の連絡 注意点:端末の紛失・盗難、のぞき見、音漏れ、不審なアクセスポイントへの接続、通信品質の変動、強固な認証 |
在宅勤務は、従業員の自宅で業務を行うテレワークです。通勤時間を減らせるため、資料作成、設計、分析、申請処理、オンライン会議など、PCと通信環境で進められる業務と相性があります。育児や介護との両立、災害時や感染症流行時の業務継続にも関係します。
ただし、自宅なら必ず安全、必ず集中できる、とは言えません。机、椅子、照明、通信回線、生活音、同居家族の有無は人によって違います。オフィスでは会社が管理していた作業環境が、在宅勤務では従業員ごとの差として表れます。
成果物や進捗をオンラインで確認できる業務は、在宅勤務に組み込みやすい領域です。文書作成、データ入力、設計、調査、分析、プログラミング、問い合わせ対応、定例会議などが該当します。オンラインで資料共有やレビューが完結するなら、出社しなくても一定の品質を保てます。
一方、紙資料を大量に参照する作業、特殊機器を使う作業、現物確認、物理的な押印、対面での細かな調整が欠かせない業務は、在宅勤務だけでは扱いにくい場合があります。この場合は、業務を丸ごと在宅化するのではなく、作業単位で切り分けます。
在宅勤務では、勤務開始・終了の記録、休憩、中抜け時間、時間外労働、業務中の連絡方法を決めます。労働時間管理は、勤怠管理システムなどの客観的な記録を使う方法と、自己申告を使う方法があります。どちらを採用する場合でも、申告された時間と実態が大きくずれたときの確認方法まで用意します。
あわせて、社外から接続する利用者と端末をどう確認するかも決めます。自宅は会社が直接管理するネットワークではないため、ID・パスワードだけに頼る設計は弱くなりがちです。多要素認証や端末認証を組み合わせ、必要に応じてデジタル証明書で許可端末を確認する設計が現実的です。
作業環境と健康管理も無視できません。長時間同じ姿勢で作業する、相談機会が減る、仕事と生活の境目が曖昧になる、といった問題が起きます。机や椅子、照明、換気、休憩、メンタルヘルス相談の体制は、継続運用の条件です。
在宅勤務のルールは、テレワークのルール整備とテレワークの勤怠管理で詳しく扱います。
サテライトオフィス勤務は、本社や通常の勤務先とは別の施設で働くテレワークです。自社専用のサテライトオフィスを設ける場合もあれば、シェアオフィスやコワーキングスペースなどの共用型施設を使う場合もあります。
在宅勤務より作業環境を整えやすく、本社へ出社するより移動時間を抑えられる点が特徴です。自宅では集中しにくい従業員や、本社から離れた場所に住む従業員にとって、現実的な選択肢になります。
集中作業、オンライン会議、資料作成、社内調整、移動途中の執務、地方拠点・郊外居住者の勤務に使いやすい形態です。個室や会議室、安定した回線、入退室管理がある施設なら、在宅勤務では進めにくい作業も扱えます。
ただし、自社専用型と共用型では条件が異なります。自社専用型なら会社の管理を及ぼしやすい一方、共用型施設では他社の利用者が近くにいる前提で運用します。画面、音声、印刷物、机上資料、ネットワーク接続の扱いを細かく決めます。
利用を認める施設の条件を定めます。自社が契約した施設だけに限定するのか、従業員が選んだコワーキングスペースも認めるのか。個室利用を必須にするのか、共用席での作業も許可するのか。この線引きが曖昧だと、現場で判断が割れます。
共用型施設では、周囲への会話漏れ、画面ののぞき見、資料の置き忘れ、印刷物の回収忘れが起きます。オンライン会議の内容によっては、共用席での参加を避け、個室または自宅に限定する運用も必要です。フリーWi-Fiや施設提供回線を使う場合は、接続条件もルール化します。共用施設では端末の置き忘れや第三者の接近も起きるため、画面ロック、多要素認証、端末認証を前提にしておくと、万一の事故時の影響を抑えられます。
モバイル勤務は、ノートPC、タブレット、スマートフォンなどを使い、移動中、訪問先、出張先、宿泊先などで業務を行うテレワークです。営業、保守、訪問対応、出張の多い職種では、業務の空白時間を減らす手段になります。
既存資料や社内文書では「モバイルワーク」と呼ばれる場合もあります。この記事では、厚生労働省のガイドライン等で使われている「モバイル勤務」を基本表記とし、検索意図を踏まえて「モバイルワーク」も補助的に扱います。
モバイル勤務は、短時間の確認、承認、報告、顧客訪問後の記録、出張中の連絡、予定確認に使いやすい形態です。スマートフォンや軽量ノートPCで完結する作業ほど、制度に組み込みやすい領域です。
反対に、長時間の資料作成、複数資料を見比べる分析、機密情報を扱うオンライン会議、細かな数値確認を伴う作業は、外出先ではミスや漏えいのリスクが上がります。モバイル勤務は「どこでも長時間働く制度」ではなく、業務を止めないための限定的な選択肢として設計する方が安全です。
モバイル勤務では、利用場所、利用端末、通信手段、扱える情報の範囲を先に決めます。カフェ、駅、電車内、空港、ホテルのロビーなど、不特定多数がいる場所で機密資料を開いてよいか。顧客名や案件名が聞こえるオンライン会議を行ってよいか。判断を従業員任せにすると、事故時の責任範囲が曖昧になります。
端末の紛失・盗難対策も欠かせません。画面ロック、端末暗号化、リモートワイプ、多要素認証、業務データの保存制限、紛失時の連絡手順を決めます。外出先では本人以外が端末に触れる可能性も高いため、利用者認証だけでなく、許可された端末かどうかを確認する視点が必要です。私物端末の利用を認める場合は、BYODでテレワークを行う場合の条件まで照合します。
ワーケーションは、普段のオフィスとは異なる場所で余暇を楽しみつつ仕事を行う形態です。ICTを使って業務を行う場合、公的資料では、モバイル勤務またはサテライトオフィス勤務の一形態として整理できます。
ただし、ワーケーションを制度として認める場合は、通常の在宅勤務よりも勤務場所、労働時間、費用負担、災害時の連絡、情報セキュリティを明確にしておく必要があります。宿泊先、共有スペース、観光地のカフェなどを利用する可能性があるため、モバイル勤務に近いリスクも含みます。
採用するなら、「どこで働いてよいか」「勤務時間をどう記録するか」「移動時間をどう扱うか」「私的時間と労働時間をどう分けるか」を書面化します。単なる福利厚生の延長として扱うと、労務管理が崩れます。
テレワークの種類を制度に落とすには、名称を決めるだけでは足りません。厚生労働省の資料では、テレワーク勤務規程の中に、在宅勤務規程、サテライトオフィス勤務規程、モバイル勤務規程を置く構成例が示されています。規程を必ず三分割するという意味ではありませんが、勤務形態ごとに条件を分けて考える必要はあります。
また、制度として導入する場合は、導入目的、対象業務、対象者の範囲、実施場所、利用頻度、申請手続、費用負担、労働時間管理、通常時と緊急時の連絡方法を、あらかじめ労使で話し合っておく必要があります。勤務場所だけを決めても、運用条件が曖昧なままでは定着しません。
| 対象業務 | 資料作成、承認、会議、顧客対応、報告など、どの業務をどの勤務形態で認めるかを決めます。 |
|---|---|
| 対象者 | 職種、業務内容、本人希望、教育状況、業務上の必要性などを踏まえます。雇用形態だけを理由に機械的に除外しないよう注意します。 |
| 勤務場所 | 自宅、会社が認めたサテライトオフィス、訪問先、出張先など、許可する場所を具体化します。 |
| 申請・承認 | 事前申請、当日申請、緊急時の扱い、利用頻度、開始・終了報告の方法を決めます。 |
| 労働時間管理 | 始業・終業、休憩、中抜け、時間外労働、移動時間の扱いを決めます。 |
| 費用負担 | 通信費、電気料金、機器、備品、サテライトオフィス利用料、交通費の扱いを決めます。 |
| セキュリティ | 端末、利用者認証、端末認証、多要素認証、データ保存、印刷、画面表示、会話、ネットワーク、紛失時の報告手順を決めます。 |
この項目を決めずに「在宅勤務可」「モバイルワーク可」とだけ書くと、管理者も従業員も判断に迷います。ルール整備では、許可することだけでなく、許可しない業務と場所も明記します。
まず、業務を作業単位に分けます。集中して成果物を作る作業なら在宅勤務、一定の設備が必要ならサテライトオフィス勤務、移動中の確認や報告ならモバイル勤務が候補になります。業種や職種だけで一律に対象外とせず、個別の業務を棚卸しして、作業の粒度で見直します。
たとえば営業職でも、顧客訪問後の簡単な報告はモバイル勤務、提案書の作成は在宅勤務またはサテライトオフィス勤務、機密性の高い商談準備は出社勤務、といった分け方が考えられます。
顧客情報、個人情報、設計情報、契約情報を扱う作業は、勤務場所の自由度を下げる判断も必要です。機密情報を扱う会議を共用席で行う、顧客名が見える画面を電車内で開く、重要資料を外出先で印刷する、といった運用は避けるべきです。
情報の機密性が高いほど、場所、端末、認証、画面表示、印刷、会話の制限を強めます。特に社外からのアクセスでは、パスワード漏えいを前提に、多要素認証や端末認証を組み合わせることが重要です。デジタル証明書は、許可端末を確認するための選択肢になります。セキュリティ全体の考え方は、テレワークセキュリティの基本で扱います。
在宅勤務を希望しない従業員もいます。自宅に作業場所がない、家族が在宅している、通信環境が不安定、孤立感が強い、といった事情があるためです。その場合、サテライトオフィス勤務が代替になります。
一方で、全員が同じ頻度でテレワークできるとは限りません。職種や業務によって差が出る場合は、対象業務、優先順位、利用頻度を労使で話し合い、納得感を確保します。テレワークを行う人と出社する人の間で、業務負担が偏らないようにすることも運用上の課題です。
テレワークは、一つの種類だけで制度を作る必要はありません。在宅勤務を基本にしながら、必要に応じてサテライトオフィス勤務を認め、外出が多い職種にはモバイル勤務を限定的に認める、といった組み合わせが現実的です。
組み合わせる場合は、勤務形態ごとに業務範囲を変えます。たとえば、在宅勤務では資料作成と会議参加を認める。サテライトオフィス勤務では個室利用時のみ機密会議を認める。モバイル勤務では閲覧、承認、報告に限定する。このように線引きすれば、利便性とリスク管理の両方を保てます。
導入の順序としては、まず対象業務を棚卸しし、小さく試行します。利用状況、労働時間、コミュニケーション、セキュリティ上の問題を確認したうえで、対象者や業務範囲を広げます。導入プロセスは、テレワーク導入の進め方で詳しく解説します。
テレワークの種類は、働く場所で分けると、在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務の三つです。在宅勤務は自宅での継続作業、サテライトオフィス勤務は本拠地以外の施設での作業、モバイル勤務は移動中や出先での短時間業務に適しています。
この三つは、勤務場所が違うだけではありません。労働時間管理、作業環境、費用負担、情報セキュリティ、端末管理、認証の条件が変わります。制度設計では、まず業務と勤務場所を整理し、その後に接続方式やツールを選びます。
「在宅勤務だけ」「モバイル勤務も自由に可」といった粗い設計では、現場で迷いが出ます。種類ごとに対象業務、勤務場所、申請方法、勤怠管理、費用負担、通常時と緊急時の連絡方法、セキュリティ条件を分けて定めること。さらに、社外アクセスでは多要素認証や端末認証を含めた認証強化を前提にすること。それが、テレワークを安全に続けるための土台です。
A.働く場所で分けると、在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務の三つです。自宅で働くか、本拠地以外の施設で働くか、移動中や出先で働くかによって分類します。
A.労働者の自宅で業務を行うテレワークです。資料作成、設計、分析、申請処理、オンライン会議など、PCと通信環境で進められる業務と相性があります。
A.労働者が属するメインのオフィス以外に設けられた施設で働く形態です。自社専用拠点のほか、シェアオフィスやコワーキングスペースを含む場合があります。
A.ノートPC、タブレット、スマートフォンなどを使い、移動中、訪問先、出張先、宿泊先などで業務を行う形態です。資料によってはモバイルワークと表記されることもあります。
A.実務上は近い意味で使われます。社内規程や申請書では、どちらか一方の表記に統一しておくと、対象範囲や承認条件の誤解を抑えられます。
A.同じではありません。種類は勤務場所による分類で、方式はVPN方式、リモートデスクトップ方式、クラウドサービス方式など、システム構成や接続方法による分類です。
A.在宅勤務だけで足りる会社もあります。ただし、外出先で短時間対応する業務や、自宅環境が整わない従業員がいる場合は、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務も検討対象になります。
A.施設や運用条件によります。作業環境を確保しやすい一方、共用型施設では会話漏れ、画面ののぞき見、資料の置き忘れ、共用ネットワークの扱い、端末の置き忘れに注意が必要です。多要素認証や画面ロックなどの基本対策も前提になります。
A.移動中の確認、承認、報告、顧客訪問後の記録、短時間の連絡などに適しています。長時間の集中作業や機密性の高い会議は、在宅勤務やサテライトオフィス勤務を選ぶ方が安全です。外出先で使う場合は、端末紛失と不正ログインへの備えも必要です。
A.まず業務を作業単位に分け、どの場所なら実施できるかを洗い出します。そのうえで、勤務時間、申請手続、端末、通信、費用負担、認証、セキュリティ条件を決めます。